今回、一部の地域で、ホウレンソウや牛乳などから、国の暫定規制値を超える放射性ヨウ素と放射性セシウムが検出された。
原子力発電所から漏れ出て大気中に飛散した放射性物質が、風に運ばれ、ホウレンソウの表面に付着したり、牛が食べる牧草が汚染されたりしたのが主な原因だ。
放射性物質が付着した食べ物や水を摂取すると、体の中から放射線を浴びる「内部被曝」の原因になる。政府の原子力安全委員会の指針では、牛乳や野菜(根菜、イモ類を除く)、飲料水などについて、摂取制限の指標値を設けている。今回の暫定規制値も、この指標値が基になっている。
牛乳・乳製品は1キロ・グラム当たり放射性ヨウ素なら300ベクレル、放射性セシウムは200ベクレル、野菜は1キロ・グラム当たり放射性ヨウ素が2000ベクレル、放射性セシウムは500ベクレルだ。
政府は暫定規制値を超えた農産物と同じ県単位の産地、種類の農産物について、各県に対し、出荷制限を指示したが、枝野官房長官は「食べてもすぐに健康に(影響を)及ぼすものではないが、(放射性物質の流出が)中長期的にわたって継続した場合の万が一に備えて、今から規制措置をかけておく」と説明した。
食品の安全に詳しい唐木英明・東大名誉教授は「現状では口にしても問題ないレベルだが、仮に流通させても買い控える消費者も多いと思われ、流通経費の損害などを考えると、やむを得ない措置と言えるだろう。今後は、早く事故を終息させることや、正しい情報公開で風評被害を抑えること、農家への補償をきちんと行うことが重要だ」と話す。
また、福島県飯舘村の水道水からは、摂取制限の指標値(1キロ・グラムあたり300ベクレル)の約3倍の放射性ヨウ素が検出された。専門家は、大気中の放射性ヨウ素が、貯水池や水源となる川に直接降り注いだのではないかと見ている。
厚生労働省は、同村に対し、飲用を控えるよう要請した。入浴や手洗いといった飲用以外に用いるのは問題ないとしている。
飲食物の摂取制限の指標値は、それぞれの品目ごとに1年間摂取し続けたと仮定し、放射性物質がどの程度、臓器に取り込まれ、放射線を出して健康に影響を与えるかを大人、子どもそれぞれについて計算した結果に基づき、さらに厳しく設定したものだ。厚労省によると、数回摂取した程度では健康への影響はなく、代わりの飲料水が確保できるまでの短期間であれば、飲用しても問題ないとしている。