きのこは世界中に膨大な種類が存在するという。日本でも食用となるものは、そのうち130−150種類くらいのようだ。それぞれ味や香り、歯ざわりが異なり、多くの人々から好まれている。

きのこを栄養の面からみるとカリウム、ビタミンB1、B2、プロビタミンD、食物繊維が比較的多く含まれているが、近年、注目されているのが、がんに対する働きだ。日本ではすでにレスチン(かわらたけ)、レンチナン(しいたけ)、シゾフィラン(すえひろたけ)の成分が医薬品として認められている。

ところが私どもが日常的に摂っている美味しいきのこの中にも、がん予防の効果を期待できるもののあることが分かってきた。

国立がんセンターが中心になって行った研究によると、ぶなしめじ、なめこを週1日以上摂っている人は、これらをほとんど食べない人に比べ胃がんの発生率が44%低減し、これらのきのこが、胃がんを予防している可能性が示唆された。ここで摂られたきのこの量は1日20グラム位である。

さらに、他の研究によると、しいたけ、えのきたけ、なめこ、きくらげには血中総コレステロール値を下げる働きがあるとされている。

これから寒さに向かって汁物や鍋物が歓迎されるが、きのこはこれらの料理によく合う。そして、きのこに不足しているたんぱく質、脂肪、炭水化物が肉や豆腐、ごはんなどによって補われるので、栄養のバランスがとれ、健康的である。
(新宿医院院長  新居 裕久)

 2006.9.30 日本経済新聞