「肌のうるおい」をうたうコラーゲン飲料が女性の間でヒットしている。コラーゲンはたんぱく質の一種で、ヒトの体内にあるたんぱく質の30%を占める。コラーゲンを食べるとどんな効果があるのだろうか。
「モデルの仕事柄、肌のことは気になる。コラーゲン豊富な食べ物は積極的にとっている。肌がぷるぷるになるというのは魅力。コラーゲン鍋の店によく行く」と話すのは三十路に入ったA子さんだ。
コラーゲンを最も多く含む食材はフカヒレで、なんと100グラム中70−80グラムを占める。牛筋や豚足料理、煮こごりなどにも多い。これらに含まれるゼラチンはコラーゲンが熱で変化したものだ。
だが、コラーゲンは決して肌だけのためのものではない。最大の機能は細胞のつなぎ役なのだ。細胞と細胞の間に橋のようなものを渡して、細胞の足場となる。骨でいえば鉄骨役。周囲にカルシウムがくっつくことで、頑丈な骨や組織ができる。筋肉、血管など体内のあらゆるところに存在するが、特に多いのが骨やけん、軟骨、皮膚(真皮層)、肝臓・腎臓などだ。
コラーゲンは体内で常に分解・合成されている。加齢と共に新陳代謝が衰えると、古くなったコラーゲンは強度を確保しようと橋をどんどん架ける。その結果、例えば肌なら水分が締め出されて表皮が陥没し、しわやたるみになる。このため不足するコラーゲンを食品で補う必要が出てくる。もっとも食べたコラーゲンが、そのまま体内に蓄積されるわけではない。アミノ酸に分解されて小腸から吸収され、血液で各部位に運ばれ、そこでコラーゲンに再合成されるのだ。
ただコラーゲンを多く含む食品には鶏皮や手羽先など高カロリーのものもある。そんな時に役立つのがコラーゲン入りの飲料やパウダー状の健康食品だ。大手食品メーカーが各社参入しており、パウダーはコーヒー、牛乳、みそ汁など普段の食べ物に溶かして摂取すればいいという。
コラーゲンの分子は、アミノ酸がらせん状につながった3本の鎖が組み合わさってできている。1本の鎖につながるアミノ酸は約千個。つまり鎖3本分で総数が約3千にもなる大きな分子だ。ゼラチンは熱変性より3本の鎖だけほどけたもの。飲料や健康食品に使われるコラーゲンは、ゼラチンよりさらに分子が小さい。豚皮や魚皮などから抽出されたゼラチンを酵素などで細かく分断するからだ。
日本ハム中央研究所の高畑久主任研究員は「アミノ酸数で30−100個のものが主流になった」と話す。低分子だと体内での分解が早まり、吸収後の効果も期待できる。
最近ではアミノ酸3個の「コラーゲン・トリペプチド」が登場した。開発したゼライス(仙台市)の酒井康夫中央研究所長は「アミノ酸単体よりもむしろコラーゲン・トリペプチドの方が小腸での吸収が早い」と話す。
では吸収すれば合成も進むのか。藤本大三郎東京農工大学名誉教授は「アミノ酸が2、3個つながったものの中で、配列は不明だが、コラーゲンを合成する線維芽細胞や骨芽細胞を活性化するものがあることがわかってきた」と、最近の学術的研究の動向を説明する。
コラーゲンは長らく劣った栄養素と見なされ、実証研究も少なかったが、ここに来てコラーゲンメーカーでも研究を進めている。ニッピ(東京都足立区)の小山洋一バイオマトリックス研究所部長は「経口摂取で毛髪を太くする、つめの疾患を改善するなどの効果がある」と話す。
機能性食品コンサルタントの関本邦敏さんは「人がコラーゲンを食べた時の体内メカニズムの解明はまだこれから」と言うが、食品メーカーは効果について自信を持つ。
「肌の弾力性の向上、しわの数の減少といった試験評価を得ている。リピーター率が高いのが消費者に指示されている証拠」(ロッテ健康産業)
では、コラーゲンの1日の摂取量の目安はどれくらいなのか。一般に5−10グラムといわれるが、生理メカニズムに基づく明確な根拠はない。ただし、食べ過ぎによる副作用は報告されず、国立健康・栄養研究所の石見佳子さんも「すでに食べられている栄養素なので、安全性をそんなに案じる必要はない」と言う。もっともコラーゲンに含まれる必須アミノ酸はわずかなので、たんぱく質を全部コラーゲンで摂取するのは問題だろう。
こんな食材にコラーゲンは多く含まれる |
10グラムのコラーゲンを摂取するには? |
・フカヒレ |
約13グラム |
・牛すね肉、牛テール |
牛筋約31グラム |
・ミミガー(豚の耳)、豚足 |
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・鶏皮、軟骨、手羽先 |
鶏皮の軟骨約63グラム
手羽先約170グラム(約7〜10本) |
・魚のアラ、皮付き魚(ウナギ、アナゴ、カレイ、サンマ、サバなど) |
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・煮こごり |
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