ごぼうを食べるのは日本と韓国など。もとはというと千数百年前、中国から、ごぼうの種子が熱のある風邪などに効果があるといわれて渡来した薬草だが、その根がきんぴらや天ぷら、煮物、鍋物などになくてはならない野菜の1つになってしまった。

ごぼうは、歯ざわりがよく、うまみと香りがよいので、多くの人に好まれる。栄養の面からみると、食物繊維の含有量は野菜の中でもトップクラス、100グラム中に5.7グラム(にんじんは同2.7グラム)も含まれ、日本人に不足しがちの食物繊維の大きな供給源である。しかし他の栄養素はそれほど多くない。

食物繊維は炭水化物の一種(多糖類)で、ごぼうには消化吸収されにくい不溶性のリグニンと水溶性のイヌリンが多く含まれ、腸の蠕動運動を活発にして便秘を防ぐ。また、血中総コレステロール値を下げる働きがあるようだ。

さらにイヌリンは腎機能を高め、利尿効果があるとされ、また血糖値の上昇を抑えるという。その他、フラクトオリゴ糖が含まれ、善玉菌であるビフィズス菌などの栄養源になって、これを増殖させ、整腸作用を促す。

同様の働きは食物繊維にもある。ごぼうの皮の近くには、抗酸化作用のあるポリフェノールの一種クロロゲン酸が多く含まれ、がんなどの生活習慣病を予防するという。それと香り成分もここに集中する。そこで料理する時には、皮はできるだけ薄くこそげとり、また水にさらすと出てくる茶褐色成分はクロロゲン酸なので、なるべくアク抜きをしない方が、おいしくむしろ香りが保たれる。

(新宿医院院長  新居 裕久)

2007.2.10 日本経済新聞