保存料、合成着色料、酸化防止剤……。おにぎりやパンなど食品のパッケージを見ると様々な食品添加物が記されている。どんな作用を持つのか分からないものも多いが、添加物を正しく知ってうまく付き合うことが大切だ。
国が使用を認めている食品添加物は約820種。その作用は@食品の品質を維持するA栄養の補てんB味・食感などを向上させるC食品を成形・加工しやすくする――など様々だ。ビタミンやミネラルは加工中に減ってしまう栄養分を補うために添加されるほか、豆腐のにがりは成形のために加える。
安全な摂取量は通常、動物実験などを踏まえて決められている。動物が一生、毎日食べても有害な影響がみられない最大摂取量(体重1キログラム当たり)を定め、その100分の1量を人が一生食べ続けても安全な量とする。これを超えない範囲で使用基準などが決まる。
コンビニエンスストアやスーパーなどで扱う食品にはいろいろな添加物が含まれているが、日本人が1日に摂取する添加物の総量は5−10グラムという。コンビニの人気商品であるおにぎりも、例えばツナとマヨネーズの具にはアミノ酸やグリシン、増粘剤などが入っているが、「合わせても0.2グラムに満たない」(ローソン)という。
総量が少ないとはいえ、最新の研究で危険性が明らかになり禁止されたものもある。厚生労働省は2004年、発がんの危険性があるとして天然の色素、アカネ色素の使用を禁止した。
表示確認は年2回
使用が認められている添加物でも有害性を裏付けるような新データが得られれば、国の食品安全委員会で専門家がリスク評価を実施。使用の可否を検討する。
どんな添加物を使っているかを知るすべはパッケージの表示確認。原材料の次に添加物が分量の多い順に載っている。亜硝酸ナトリウムやビタミンCなど物質名のほか、甘味料や着色料、保存料など用途別の表記も並ぶ。
表示は各都道府県の保健所が抜き打ち検査を実施して確認しているが、1年に2回。実質的には企業の自主性に任されている格好だ。
店頭では「合成着色料や保存料は一切使っておりません」と書かれた製品を見かける。添加物を嫌う消費者を意識したものだ。売り手側は製造工程の衛生管理や加熱条件の改善に努め、鮮度を保てるようになった製品については合成着色料などの使用をやめているという。
こうした取り組みで使用をやめた例もあるが、「ほかの添加物で補っている例もある」と添加物メーカーなどで構成する日本食品添加物協会の佐仲登・常務理事は説明する。例えば、PH調整剤は保存料の代わりに使われている。酸の一種でこれを加えれば菌が繁殖しにくくなり、食品の傷みを抑えられる。
売り手側は販売戦略上、「無添加」「未使用」とうたった製品を好むが、同協会は添加物は危険という誤解を招くとして、そうした表記を避けるよう申し入れている。食品会社なども誤解を避けるため、しょうゆやみそなどの業界団体で「無添加」表記を避けるようにしている。
輸入品の認可拡大
海外で使われていて日本で認められていない添加物は約400種といわれる。こうした添加物は海外製品の輸入が増えるにつれて認められる傾向にあるという。
欧州産などのチーズに使われているナタマイシンはカビを防ぐために2005年に認められた初の抗生物質。食品安全委員会が科学的にリスク評価をしてチーズの表面に使った場合に限り認めた。
新たな問題も浮上している。昨年夏、清涼飲料に含まれるアスコルビン酸と安息香酸が製品内で反応して発がん性のあるベンゼンが発生していたことが分かり、製品が回収された。「複数の食品添加物を使用した際のリスクは明らかになっていない」と日本消費者連盟の水原博子事務局長は指摘する。
食品安全委員会の下部組織、添加物専門調査会の座長を務める日本バイオアッセイ研究センターの福島昭治所長は「今後、リスク評価に取り組む必要がある」という。
多種多様な製品が流通する今日、添加物と無関係な食生活を送るのは難しい。国内での科学的評価はこれからという新タイプも増えている。よりよい製品を選ぶために添加物の特徴と使われ方に注意したい
(松田省吾)
用途名 |
役割 |
代表的物質 |
甘味料 |
食品に甘みを与える |
キシリトールなど |
着色料 |
着色し、色を整える |
クチナシ黄色素など |
保存料 |
カビや細菌を抑え、保存性を高める |
ソルビン酸など |
増粘剤、
安定剤、
ゲル化剤 |
滑らかさや粘り気を与え、安全性を増す |
ペクチンなど |
酸化防止剤 |
油脂などの酸化を防ぐ |
ミックスビタミンEなど |
発色剤 |
ハムなどの色や風味の改善 |
亜硝酸ナトリウムなど |
漂白剤 |
白くきれいにする |
亜硫酸ナトリウムなど |
防カビ剤 |
カビの発生防止 |
ジフェニールなど |
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