イソフラボンが、近年、健康に良い成分として注目を集めている。化粧品売り場でも見かけるようになったが、美容にもよいというわけだろうか。

摂取源は、みそ、豆腐、油揚げ、納豆など日本人にはなじみ深い食品だ。化学構造は、女性ホルモンであるエストロゲンに似ている。本来、体内のエストロゲンが結合すべき物質にくっついて、その働きを邪魔したり、逆に強めたりする作用があると考えられている。

食べ物から摂ったイソフラボンは、乳がんの原因となるエストロゲンの働きを抑えるのではないかという見方がある。また、がん増殖抑制につながる抗酸化作用や、血管の申請をはばむ作用なども報告されている。

欧米に比べ、アジアには、大豆製品をよく食べる国が多い。このため、アジアに少なく欧米に多い乳がんの予防効果がイソフラボンにあるのではないかという仮説が成り立つ。

われわれは、日本人の40歳から59歳の女性約2万人を10年間追跡して、イソフラボンの摂取量と乳がんリスクとの関連を検討した。大豆製品からイソフラボン摂取量を合計、4グループに分けた。

イソフラボン摂取量が最小のグループに比べ、最大のグループで乳がんリスクが半減した。閉経後の女性だけを対象とした場合に、より顕著だった。最小グループに比べ、最大グループで約70%リスクが抑えられていた。閉経後の女性の乳がんは、日本人には特に少ない。大豆製品を多く食べるからなのかもしれない。

イソフラボンの摂取で、乳がんを予防できる可能性はある。しかし、サプリメントに対し大きな期待を抱くのは早計だ。イソフラボンには、エストロゲン作用としてプラスとマイナス2つの側面がある。どのようなホルモン環境の女性で、どの程度摂取すると良いのかがわからない。現段階では、日本のよき伝統食であるさまざまな大豆製品を、よりおいしく楽しく味わうのにとどめておきたい。
(国立がんセンター予防研究部長 津金 昌一郎)
2005.8.28 日経新聞