ナスは夏野菜の代表的なものの一つ。艶(つや)のある紫色の皮は食欲をそそる。ところで、ナスは栄養価の低い食品とされてきた。事実、ナスの93%は水分で、カリウム以外の栄養素はあまり含まれていない。しかし、近年紫色を示す成分ナスニンが注目されるようになった。

これはアントシアニン系の色素で、ポリフェノールの一種である。そしてがんや動脈硬化、老化などを促す活性酸素を消去する働きがある。試験管内や動物実験の結果だが、ナスにはがん細胞の発生や増殖、転移を抑える働きが強いことが分ってきた。

この働きは加熱しても変わらず、量としては、ナス約70グラム(大1個)とればよいという。他にナスには、ナスニン以外にポリフェノールの一種、クロロゲン酸と苦味成分アルカロイドが含まれ、ともに、がん予防効果が期待されている。

暑さとともに食欲が落ち、栄養不足が起こり、夏バテが起こりやすい。ナスは栄養素がほとんど含まれていないので、それを補うために、他の野菜や肉、魚介などと一緒にとって栄養のバランスをとる必要がある。

ナスは、淡白なので、和風、洋風、中国風などどの料理にもよく合う。油と相性がよいので、てんぷらやフライ、カレーなどにしてとると、食欲不振によるエネルギー不足を補うことができる。

なお、見た目をよくしたり、舌ざわりをよくするために、皮をむく人がいるが、皮の中にはがんを予防するナスニンが豊富に含まれているので、皮つきのまま料理をした方が賢明である。

(新宿医院院長  新居 裕久)


2007.8.18 日本経済新聞