食物繊維やミネラル分豊富
歯応えあり、噛む効用も
切り干し大根やカンピョウといった植物性の乾物は、若い世代にはあまりなじみがないようだ。しかし、実はうまみがたっぷりで健康に欠かせないミネラル分も豊富。和食だけではなくイタリアンなどにも合って保存性が高い、優秀な食材だ。その魅力と活用のポイントをまとめた。
植物性の乾物は、野菜やキノコ類を干して水分を飛ばしたもの。栄養分が凝縮し、現代人が不足しがちなカルシウム、食物繊維などが豊富だ。例えば切り干し大根の場合、骨の健康に欠かせないカルシウム、円滑な代謝に必要なマグネシウムを、ともに生の大根の20倍近くも含んでいる。また、干しシイタケは100グラム中41グラムと40%以上が食物繊維。大きめのシイタケなら、約6個で成人男女の1日の摂取目標量(17から20グラム)をクリアできる計算だ。
歯応えが強いため、噛(か)みこなす回数が自然に増えるというメリットもある。「しっかり噛む」ことによって得られる、様々な健康効果も明らかになっている。
ダイエットを例にとっても2つの効果が確認されている。まず第一に、よく噛むと脳内で満腹中枢を刺激するヒスタミン量が増えるため、食べ過ぎを防ぐ。2番目に、今年発表された日本女性454人を対象にした研究で、硬さや弾力があるものをよく食べている人ほど、ウエストが細いという結果も出た。
脳の血流も増える。日本歯科大学生命歯学部の小林義典教授は「歯応えのある食べ物をかむほど脳の血流量が上がり脳が活性化する」と話す。
意外と知られていない植物性の乾物の一面が、うまみと甘みを豊富に含むこと。試しに、一度、切り干し大根をそのまま口に含んでみてほしい。何回も噛むうちに甘みが出てきて噛み締めるほどに、濃縮された野菜本来のうまみが溶け出してくるのがわかる。「切り干し大根やカンピョウなら、そのままでも食べられるので、さっと洗って、スルメ感覚でお酒のおつまみとして食べても楽しい」と、乾物料理のレパートリーも多い、野菜料理研究科のカノウユミコさんはアドバイスする。
調理の際、こうした乾物が持つうまみを最大限に生かすにはどうしたらいいのか。まず大切なのは戻し方。「たっぷりの水に20−30分つけて戻す」とする料理本もあるが、これではせっかくのうまみを捨ててしまう。少なめの水に浸し、その戻し汁ごと料理に使うようにしたい。細めの切り干し大根なら水に浸さず、ザルに入れてサッと水で洗って湿らせるだけでいい。水分が少しずつ中に浸透して、十分軟らかくなる。
味付けのポイントは、甘みを加えすぎないこと。「もともと甘みが強い食材なので、煮しめのように砂糖やミリンを加えるのではなく、ショウガや唐辛子といった薬味やスパイス、酸味などを効かせるとメリハリが出て奥行きのある味に仕上がる」とカノウさん。「乾物は和の煮物に」という既成概念にとらわれず、ミネストローネやギョーザなど、様々な料理に気軽に活用してみよう。
生野菜と違って常備できるのがうれしいが、味や香りの劣化を防ぐには、封を開けたら冷凍庫で保管するのがいい。長期保存は避け、湿気で味が落ちる前に使い切るのがおすすめだ。
自然なおいしさを堪能するには、日光に当てて自然乾燥させ、漂白剤や膨張剤といった添加物を加えずに、昔ながらの方法で作られた商品を選びたい。購入の際に表示を見て、原材料を確認しよう。
(日経ヘルス編集部)
栄養分の比較(100グラムあたり)
カルシウム マグネシウム 亜鉛 食物繊維
生シイタケ 3mg 14mg 0.4mg 3.5g
干しシイタケ 10 110 2.3 41
皮付き大根 24 10 0.2 1.4
切り干し大根 540 170 2.1 20.7
(注)五訂増補日本食品標準成分表より
乾物食品の生かし方
切り干し大根
細めの切り干し大根ならザルに入れて水をかけるだけで戻る。戻してドレッシングをかけるだけでサラダに
干しシイタケ
水で戻し、ショウガとしょうゆを加えた戻し汁で煮含めてからバターで焼くとコクのあるステーキに
カンピョウ
夕顔の果実をひも状にして干したもの。ベーコンのような食感とうまみを生かして、いため物やかき揚げにも
カンピョウの照り焼き丼 材料(2人分)
カンピョウ…1/2袋 小麦粉…適量 ゴマ油…大さじ1〜2 ご飯…丼2杯分
A しょうゆ…大さじ1 酒…大さじ1 ショウガ…小さじ1/2
B しょうゆ…1.5 カンピョウの戻し汁…1/2カップ
作り方
1.カンピョウを7〜8分ゆでて水気を切り、5cmの長さに切る
2.1をAに浸して味を付け、バットに並べ、茶こしを使って両面に小麦粉を振る
2.フライパンにゴマ油を熱し、2に両面をこんがり焼き、Bを加え、とろみが付いたら火を止める
4.丼にご飯を盛り、3を煮汁ごとのせる。あればミツバやクレソンを添える
(注)レシピ・写真は「カノウユミコの野菜がおいしい!一生ものレシピ」
(日経BP社刊より)