食糧危機にもっと関心を



  日本の食料自給率が低下の一致をたどっている。1956年当時は73%だったのが2006年には39%まで低下し、 先進国の中で最低水準にあるという。一方、米国、フランスの03年の食料自給率はなんと120%を超している。

  日本は、経済が発展し、食品はもっぱら輸入に頼って飽食の時代に突入し、メタボリックシンドロームをいかに防ぐかに国は力を入れている。
しかし、深刻に考えなければならない大きな問題がある。それは食糧危機だ。地球温暖化による干ばつや洪水などによる自然災害が増加している。一方、発展途上国の人口の増加と生活水準の向上やとうもろこしなどのバイオ燃料用農作物の需要増大などによって、世界的に穀物の消費が増えている。

  戦中、戦後を生きてきた人々にとっては、食糧難の厳しいつらさは今でも忘れられないが、それを経験していない現代人は無関心である。米国の食料自給率が高いのは、国土が広大で農業は大規模、機械を使用して大量生産しているからだ。フランスは大きな国ではないが、ヨーロッパの伝統的農業国それに加えて食いしん坊、食なくては生きられない民族。食べる楽しみのために生きていることなどが自給率を上げているのかもしれない。

  一方、日本はどちらかというと食に無関心な側面がある。食より仕事を優先しがちで、食べることで健康を維持するという考え方も足りない。食糧危機がくれば国の繁栄などありえない。近い将来、食料争奪が予想されるなかで、食料に関心を持ち、自給率の向上に挑むべきだ。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2007.12.15記事提供:日経新聞