近年、がんは増加の一途をたどり、その死亡率は3人に1人くらいの割合だといわれ、大きな理由は、日本人が長寿になったからだという。事実、人口構成が一定であるとして算出した年齢調整死亡率でみると、日本の過去50年のがん死亡率は、男性で1.4倍位の上昇、女性では、やや減少傾向にあるという意外な結果がでている。
がんは男女ともに40歳をこえたころから増加しはじめる。ある年齢までにがんになる確立を厚生労働省研究班の調査(1996年)でみると、男女とも55歳になるまでは20人に1人くらい。だが、75歳までには男性で4人に1人くらい、女性は6人に1人くらい、85歳まではには男性でほぼ半数、女性で4人に1人くらい。こうみると老化現象の1つともいえる宿命的な病気とさえ思える。
ところで、がんになる原因だが、96年に米国ハーバード大学の研究チームがまとめた調査によると、主な原因は、たばこと食事で、それぞれ30%をしめ、合わせると60%にもなる。この両者を注意すれば、がんの予防が期待できる。
厚生労働省では、現状で推奨できるがん予防法は、食事としては、栄養のバランスをとること。そして塩蔵食品や食塩の摂取はできるだけ抑える。熱い飲食物や保存加工肉の摂取は控えめにして、野菜、果物はしっかりとることだ。たばこをすわない、飲酒は適度にという点も大切。定期的な運動を続け、太り過ぎない、やせすぎないようにすることも予防の1つだ。
つまり、当然な習慣を着実に実行することが、がん予防の近道といえる。
(新宿医院院長 新居 裕久)