元気で長生きできる食事は。
おかず、しっかり食べよう
全体の半分は動物性たんぱく質に/野菜、果物350グラム
●摂取カロリー年々低下
メタボリックシンドローム対策やダイエット志向の高まりで、日本人のエネルギー摂取量は年々低下し、06年にはついに終戦直後を下回ってしまった。「このままでは長寿社会どころか平均寿命は短くなっていく」。栄養学者からはそんな懸念の声が出ている。
人類の平均寿命が50歳を超える国が現れたのは20世紀に入ってからだ。肉や牛乳などの動物性たんぱく質を多く取るようになったニュージーランドやオーストラリア、欧米の先進国が先陣を切った。この時期の日本は栄養状態が悪く、まだ30代後半。半世紀遅れの1947年で、ようやく50歳を超えた。80年代に入ると、植物性たんぱく質と動物性たんぱく質の摂取量がほぼ同じになり、これに歩調を合わせるように、世界最高レベルの長寿国になった。
桜美林大大学院の柴田博教授(老年学)は「動物性たんぱく質と脂肪の摂取増が結核や脳血管死を減少させた。しかも80年代には脂肪の摂取量が頭打ちになり欧米のように虚血性心疾患の増加も防ぐことができた。理想的な栄養バランスが日本の長寿をつくりあげた」と分析する。
●20代女性が押し下げ
しかし、80年代以降、日本人の栄養状態は年々劣化し始めた。厚生労働省の07年の国民健康・栄養調査によると、エネルギー摂取量は70年代前半の約2200キロカロリーをピークに06年は1891キロカロリーに減り、終戦直後の46年の1903キロカロリーよりも少なくなった。また、たんぱく質摂取量は95年の82グラムから70グラム、脂質も60グラムから54グラムに減少した。
柴田教授は「特に(ダイエットなどに取り組む)若い女性とその子供が低栄養状態で全体の平均を下げている。粗食が健康的との誤解が広がり、食のバランスを壊してしまった。将来は骨粗しょう症などが頻発し平均寿命も低下しかねない」と指摘する。同調査によると、20代女性のエネルギー摂取量は約1700キロカロリーで、必要量よりも300キロカロリー不足している。
●ご飯の量で調整を
それでは、長寿につながる食生活に向けて、どんな工夫をすればいいのか。柴田教授に聞いた。
人間の体は9種類の必須アミノ酸を含む20種類のアミノ酸でできている。この構成に近いアミノ酸を取れるように食べ物全体の50-60%は動物性たんぱく質をとった方がいいとされる。必須アミノ酸がすべてそろった食品を100点としてアミノ酸のバランスをみる「アミノ酸スコア」では「卵、牛乳、肉、魚」が100点で、大豆80点、米60点、小麦40点となる。
1日に必要な食品の基本として「(1)卵1個(2)牛乳200CC(3)肉、魚それぞれ同量(70-90グラム)(4)豆腐3分の1丁(5)野菜・果物350グラム(6)油脂15CC」をあげる。このおかずの量を変えることなく、各人の体の大きさや運動量でご飯の量を調整してほしいという。
また、高齢になると、肉などのおかずの量を減らした方がいいと考える人は多いが、これも誤りだという。基本のおかずはしっかりとった上で、基礎代謝の減少分だけ、ご飯の量を減らせばよい。70代では1日約110キロカロリー(お茶わん1杯弱)を減らす程度になるという。
(小川節子)
◇抗酸化効果でアーモンドに注目
ビタミン類やポリフェノール類、香辛料などに多く含まれ、人間の老化を防ぐ抗酸化物質。米国農務省が管轄する「ジーン・メイヤー人間栄養学加齢研究センター」のジェフリー・B・ブラムバーグ所長によると、米国では 最近、アーモンドの抗酸化効果が注目されているという。「酸化ストレスを遮断するビタミンB、Eやフラボノイドなどの栄養素と酵素が含まれ、相互作用で効果を発揮する」と話す。
1日5-20本のたばこを吸う中国人男性30人に、1日84グラム(約70粒)のアーモンドを4週間摂取させたところ、DNA鎖の切断による損傷が23%減少したという。「木の実、野菜、果物の中にはたくさんの抗酸化物質が含まれている。サプリメントよりは食べ物として取る方がよく、1+1=2以上の相乗効果がある」と話している。