コーヒー 身近にポリフェノール摂取
◇悪玉コレステロールの酸化を抑制
ポリフェノールといえば、赤ワインを連想する人が多いだろう。しかしいくらポリフェノールが体に良いとはいえ、毎日赤ワインを飲むのは難しい。実は身近な飲料からポリフェノールをたくさん取ることができる。コーヒーだ。
■心疾患死亡率と関係
ポリフェノールは植物に含まれる抗酸化成分。紫外線などから身を守るために植物が自らつくり出す防御成分で、ほとんどの植物に含まれる。
同じ西欧でも、フランス人は肉類や脂肪の摂取量が多いのに、心疾患の死亡率が低い。その理由として、赤ワインに含まれるブドウ由来のポリフェノールの摂取量が多いことが挙げられてきた。これがフレンチパラドックスだ。
このほか、高齢者を10年間追跡したオランダの試験研究では、ポリフェノールの摂取量が多い人(1日あたり29・9ミリグラム以上)は、少ない人(1日あたり19ミリグラム以下)に比べ、心疾患の死亡率が低かったという報告もある。この試験では紅茶からのポリフェノール摂取量が多かった。
ポリフェノールの摂取が健康維持につながることは分かったが、では、日本人はどんな飲料からポリフェノールを摂取しているのだろうか。
■日本茶の2倍の量
食品の機能と病気の関係などを研究する近藤和雄・お茶の水女子大教授らは約9000人を対象に、飲料別のポリフェノール摂取量を調べた。
その結果、1日に摂取する飲料の平均摂取量(アルコールを除く)は日本茶やコーヒーなど計約1・1リットル。これらの全飲料をポリフェノール総摂取量に換算したところ、1日あたり計約850ミリグラムのポリフェノールを摂取していた。ポリフェノールの約8割を飲料から取っていることも分かった。
このポリフェノールの摂取量を飲料別に測定したところ、コーヒーが約半分を占め、次いで日本茶、紅茶、中国茶の順だった。飲料自体の摂取量は日本茶が一番多かったが、ポリフェノールの摂取量で見ると、コーヒーが1番。100ミリリットルあたりに含まれるポリフェノール量は、日本茶が約100ミリグラムなのに対し、コーヒーは約200ミリグラムと約2倍も多い。コーヒーポリフェノールの濃度は赤ワインと同程度だ。
ポリフェノールは緑茶、紅茶、ココアなどにも含まれるが、コーヒーだとたった1杯(約150ミリリットル)で約300ミリグラムのポリフェノールが摂取できることになる。
■1日に1000ミリグラム
体内に入ったポリフェノールはどんな働きをするのか。
動脈硬化が起きる主な原因は、酸化された悪玉コレステロール(LDL)が血管の内壁にたまり、血液の通り道が狭くなることだ。この悪玉コレステロールの酸化を抑えるのが抗酸化作用だ。
近藤教授は赤ワインを飲むと悪玉コレステロールが酸化されるのにかかる時間が長くなることを、人の血液中の悪玉コレステロールを使って確かめた。この試験結果から推定し、「コーヒーを飲んだ後も、赤ワインと同じように抗酸化作用が働いているのでは」と話す。
では、1日あたりどれくらいのポリフェノールを摂取すればよいのだろうか。いまのところ、科学的な適正量は分かっていないが、近藤教授は「1000-1500ミリグラムが妥当では」と推定する。
■くつろいで味わう
ただし、欧米諸国に比べ日本人の心疾患死亡率が低いのは、脂肪を取り過ぎず、ごはんを主食とするバランスの良い食生活が背景にある。単にポリフェノールを多く取れば健康になるというものではない。
健康維持の基本はバランスのとれた食事、適度な運動、ストレスの少ないライフスタルなどだ。近藤教授は「香りのよいコーヒーをくつろぎながら味わって飲む。その結果として、ポリフェノールも摂取できるといった気持ちで飲むのがよいのでは」とアドバイスする。
■糖尿病の発症率低く
コーヒーと健康の関係については、国内外でさまざまな研究報告がある。糖尿病の発症率との関連では、世界の複数の研究結果でコーヒーをたくさん飲む人ほど発症率が低いとの結果が出ている。
米国の研究では、看護師を対象にした追跡調査で、コーヒーの摂取量が多いほど自殺率が低かった。肝臓がんのリスクを下げるとの報告もある。
◇コーヒー成分◇
コーヒーの成分といえば、カフェインを思い浮かべるが、苦みの成分であるクロロゲン酸のほか、ビタミンB2、カリウムなどが含まれる。このクロロゲン酸がポリフェノールだ。利尿作用、口臭予防、動脈硬化予防などもあるといわれている。