◇各国で進む多様な研究
シジミに多く含まれるアミノ酸の一種、オルニチン。美容やスポーツの分野でも注目されつつあることを報告する。
■美容で注目
オルニチンのサプリメント(健康補助食品)が日本の市場で目立ち始めたのは、6〜7年前。継続して使用する消費者の間から「何となく肌や体の調子がいい」といった声が出始めた。そこで、微生物による発酵でオルニチンを商品化している協和発酵バイオ(東京)は、肌への影響について調べた。
ボランティアの成人14人を2群に分け、一方にオルニチン(1日あたり800ミリグラム)、もう一方にオルニチンの含まれていない偽のサプリメント(プラセボ)を3週間摂取してもらい、肌の体感効果を比較した。
その結果、オルニチンの摂取グループはプラセボ群に比べ、「顔のしわや肌荒れが改善した」「顔にはりが出てきた」などの効果を感じる度合いが高いことが分かった。
どんなメカニズムなのか。海外の研究報告(米国の外科学研究誌など)によると、マウスにオルニチンを与えて肌のコラーゲンを測定したところ、コラーゲンの合成を促していることが分かった。オルニチンは体内でコラーゲンの原料の一つであるアミノ酸(プロリン)に変わることが知られている。また、最近はコラーゲン遺伝子の発現がオルニチンで増大することも発表された。
こうした研究報告から、協和発酵バイオ・ヘルスケア商品開発センターの酒井康・学術研究企画室マネジャーは「オルニチンの摂取がコラーゲンの原料を供給することに加え、細胞レベルで合成能を高めることでコラーゲン合成を促すのではないか」と推測する。
コラーゲンは肌の弾力性を保つたんぱく質の一種。コラーゲンの合成にオルニチンがどこまで関与しているのか、今後の研究が楽しみだ。
■スポーツでも活躍
一方、米国ではオルニチンのサプリメントは筋肉を増強したり、脂肪の燃焼を促す目的でも使われている。
こんな試験がある。平均年齢41歳の男女17人を2群に分け、一方にオルニチン、もう一方に偽のサプリメント(プラセボ)を8日間摂取してもらい、自転車をこぐ運動負荷試験を実施後、血液中のアンモニア濃度を比較した。
その結果、オルニチンを摂取した群の方が運動後のアンモニア上昇を低く抑えられた。自転車を一定時間全力でこぐ運動能力の比較でも、摂取群の方が運動能力の低下が抑えられ、オルニチンが持久力を高めていることを示唆する結果となった。
アンモニアは筋肉やエネルギーを使うと発生し、疲労物質のひとつといわれる。激しい運動の後は血液中のアンモニア濃度が高くなるが、オルニチンの摂取でアンモニアが尿素に解毒され、疲労物質の生成が少なくなるのではと考えられる。
また、運動をしながらオルニチンを摂取すると、体脂肪率が減り、筋肉が増えるという海外の研究報告(米国のニュートリション・リサーチなど)もある。
最近、日本国内ではオルニチンを加えた即席みそ汁や飲料、コラーゲンとオルニチンを含む美容ドリンクなど、さまざまな商品が登場している。