今回より水シリーズと題して、水と体、水の効用、飲料水などについて数回にわたりお知らせしたいと思います。
1.水と体
水の治癒力は、風呂、温泉、鉱泉、湯治、冷水浴や湿布など、古代から世界中の民族に知られ、実践されていますが、水を飲むこと自体に治癒力があることはあまり知られていません。水を飲むことはあまりにも当たり前になっているため、私たちは毎日どのくらいの量を飲むべきか、また水を飲むことと健康の関係を深く考えることがありません。喉の渇きを癒すことはしますが、普段から積極的に水を飲むことをしていないようです。遊びや勉強そして仕事に気を取られて、十分に水を飲むことを忘れていることもあります。
ところが人間(動物ももちろん)の体に水がどれほど大事であるかは、私たちの体を調べてみればわかります。成人の体重の約60%、新生児では約80%、そして老人の体重の約50%が水分です。骨でさえ約20%は水です。私たちの血液の85%、脳の75%、網膜は90%以上が水分です。
? 乳幼児は一番成長する時期であり、特に水分を必要とします。しかし自分では水分が不足しているかどうか判断できません。汗をたくさんかいたり、下痢、嘔吐などで水分を失った場合、あっという間に脱水症状を起こします。
? 「老化は乾燥のプロセス」といわれます。年をとるとともにしわが増え、身体全体が縮まっていくということは、細胞内の水分が減り、乾燥していく過程を表しています。老人は喉の渇きをあまり感じず、飲む量も少なくなるのですが、水を十分に飲むことは老化を遅らせることにもつながります。
? 私たちは食物を食べなくてもかなり長く生きられますが、水分を取らないと1週間ももちません。
水分は体に必要な酸素や栄養などを全身に運搬し、老廃物を尿や便の形で排泄します。そして新陳代謝を活発にし、体温調節をして体調を整えるために重要な役目を担っています。
成人の体内からの水分の排泄量は1日、約2.3リットルです。
内訳は、尿 1.2リットル 便 0.2リットル
呼気に含まれる水分や、汗および皮膚表面からの水分の蒸発 0.9リットル
毎日これだけの量が排泄されるため、これと同量の水分の摂取が必要となります。
内訳は、飲料水 1.2リットル 食物 0.8リットル
体内代謝物 0.3リットル(老人はこの代謝物が減るためさらに水分不足が起こります)
私たちは食物、特に野菜、果物、肉、スープなどからも水分を摂取しますが、水もたくさん飲む必要があります。普段のどが渇いていなくても規則的に、また積極的に水を飲む習慣をつけることが大切です。水を規則的に飲む人は、元気で活力があり、病気から体を守ります。
? 普通の水が体に一番よい
水分を取るという観点から言うと、他の飲み物より水(水道水やミネラルウォーター)が一番体によいと言われています。水は臓器に負担をかけません。たくさん飲むことによって、腎臓と膀胱が十分な水で洗い流されます。尿の量が1日0.5リットル以下だと、不要な物質が体内にたまり、生命にとって危険な状態になります。私たちが十分水分を取っているかどうかは尿の色で判断できます。薄い黄色を呈しているならば、水不足ということはありません。
? 水は100%体内に吸収されますが、コーヒーやコーラは水分の補給にはなりません
利尿効果のある成分の入っている飲み物、例えばコーヒー、紅茶、コーラ、アルコールなどは、体内に入ってもすぐに排出されてしまいます。水は渇きをいやしますが、ビールやコーヒーは飲めば飲むほど喉が渇きます。それはカフェインやテイン、アルコールなどの成分を排泄するために、同量の水が尿として排泄されるからです。ですからこれらの飲み物を飲むときには、グラス一杯の水も添えて一緒に飲むようにするといいようです。
☆ 水は体内でどのように吸収されるのでしょうか?
飲んだ水や、食物中の水分は食道、胃を経て腸に達します。水分は主に消化吸収過程の最後の大腸で吸収されます。大腸で吸収された水分は血管で運ばれます。大腸での水分吸収に支障を起こすと下痢になります。腸からの血液は門脈に入り肝臓を通ってから心臓に至ります。摂取された水分の大部分が腎臓で尿として排出されます。腎臓の機能が低下すると水分の排出困難になるので浮腫になります。
水について 2水シリーズ
今回は十分な水を飲むことが健康にどれほど効果があるかについて述べます。
2.水の効用−水と健康 / 病気
USAに住んだイラン人医者バトマンゲリジ博士(F. Batmanghelidj)は、長年の臨床研究の結果、「多くの病気の原因は人体の慢性的な水不足にある」という理論をかかげ、水の持つ自然の治癒力を説いています。博士は、胃もたれ、喘息、椎間板障害、頭痛、リューマチなどの関節炎、そしてアレルギーなどの症状に対して、十分な水を飲むよう薦めています。また、バトマンゲリジ博士だけでなく、多くの医学者や研究者が水の効用を説いています。
以下に水の効用を具体的にまとめました。
1.脳梗塞、心筋梗塞、そしてエコノミー症候群の予防効果
水分が不足すると血液はどろっとした状態になり、粘り具合が高まると血管が詰まりやすくなります。水は血液をさらさらにし、血小板が簡単に固まらなくなり、凝血が起きにくくなります。
2.水は血圧を正常に保ちます
十分な水を取ることにより、血圧を下げます。めまいなどの症状も少なくなります。
3.痛風の気がある人なら血中の尿酸値が高くなるのを防ぎます。
4.水分を十分に補給して尿量が増えれば、体内の有害物質や老廃物の排出が促進されます。尿道や膀胱に細菌がたまることから起こる膀胱炎や、腎臓結石、尿路結石などの疾病の予防にもつながります。また膀胱ガンから守ります。最近の米国の調査から出た結果ですと、一日にコップ6杯から8杯の水を飲む人は、膀胱ガンにかかる率がきわめて低くなると言われています。
5.石灰質の水を飲めば、体は水中のカルシウムを摂取し、骨が強くなり骨粗しょうしょうの予防につながります。
6.腎盂腎炎が起きにくくなります。
7.腸を刺激し、便秘になりにくくなります。
8.痰が切れ、風邪、喘息の発作を軽減します。
9.肩こり、頭痛にも効用があります。頭痛にはまずコップ一杯の水を飲めとはよく言われることです。
10.水は老化を遅らせます。
老化の原因は、動脈硬化と言われますが、コレステロールや塩分が血管壁にたまるためで、老廃物を血管壁に沈着させないように充分な水分を摂取する必要があります。
11.水を多く飲む人は、集中力があります
スポーツ医学の調査によると、95%の学童・学生は水の摂取量が不足しています。十分に水分を取るならば、もっと精神的、身体的に元気になります。
12.水はカロリーがなく、糖分もありません。
水はカリエスの原因にならず、消化器に負担をかけません。ソフトドリンクと言われるものは、ミルク飲料や様々なお茶に糖分を加えています。
このほかにも「水治療」として、神経症状、肝硬変、糖尿病、腎臓病、腰痛改善の助勢、解熱剤、睡眠剤、鎮静剤、利尿剤、発汗剤、強壮剤、下剤としての効用があるとも発表されています。
水はこのように、体全体の不調を直してくれる万能薬と言えるようです。
注:但し、腎臓病、心臓病の人は、水を多く飲むことによりこれらの器官に負担をかけるため、注意が必要です。
3.まとめ
* 生水(自然水や水道水)のほうが加熱水(湯冷まし、お茶など)より体によい: 生水には酸素、炭素、炭酸カルシウム、塩分、カルシウム、その他ミネラルなどの無機質が含まれています。
水は加熱すると殺菌されますが、体に大切な成分の一部も失われてしまいます。また加熱水は吸収されにくく体内を素通りしてしまいます。
* 水は室温が一番体に吸収されやすい: ただし長い間放置しておいた水には、細菌が増えていることがあります。ミネラルウォーターも瓶やペットボトルは、なるべく早く飲みきるようにしましょう。
* 朝、起床したらまずコップ1杯の水を飲む: 体に張りが出、消化器を刺激します。便秘にも効果があります。
* 水は少しずつ飲むより、一度に2dlくらい飲む: 少しずつでは一日の必要量の1.2リットルを飲むのは大変です。かといってガブ飲みは避けましょう。また冷たい水を一度に大量に飲むことはよくありません。
* 水は食事中より食前30分前くらいに飲むのがよい: 水は胃酸を薄めるため、食事中に水をたくさん飲むと消化が悪くなります。
* 喉が渇いたときに飲むだけでは十分ではない: 定期的に飲むよう
に心がけましょう。
子供は遊んでいるとき、学校にいるときなど水を飲むことを忘れがちです。
親や大人が水を飲むよう声をかけるべきです。また、老人は喉の渇きの感覚が弱くなっているため、水が不足します。家族が気をつけてあげましょう。
* 水は仕事や試験などのストレス状態に効く: 精神的、身体的に集中力が出るからです。仕事机、勉強机にコップ1杯の水を置きましょう。
* 体内の廃物・毒素の体外への排出に関係しているリンパ腺の機能を高めます。
* 目も水を必要とする: コンタクトレンズをしている人は、目が赤くなったり痛くなったりすることがあります。これは角膜が乾燥していて、レンズがこすれるためです。
目医者はまずもっと水を飲むことを薦めます。
* 夜はお手洗いに起きないようにと飲まない人がいますが、少しでも飲んだほうがよい: 夜になると血液が濃くなりますが、水は血液の流れをスムーズにします。また就眠中でも発汗します。
この場合もお茶よりは生水のほうが、体内に吸収されやすいため、お手洗いに起きずにすみます。
* 喫煙者は特に充分な水を飲む: ニコチンは水に溶けますので、水をたくさん飲めば毒物であるニコチンが水といっしょに体外に排斥されます。
* 二日酔いは肝臓がアルコールを分解しきれず、アセトアルデヒドという状態のまま体内に残っていることが原因です。特に日本人はこのアセトアルデヒドを分解する酵素が体内に少なく、アルコールの処理能力が低いといわれています。二日酔いを防ぐには水分を大目に取って、体内に残ったアセトアルデヒドを排泄してしまうのがよい方法です。
硬水と軟水
硬水か軟水かを決めるのは水の「硬度」です。わかりやすく言えば、カルシウムや
マグネシウムなどのミネラル成分がたくさん入っている水が硬水、少ない水が軟水です。
日本とヨーロッパでは水の硬度の基準が違いますが、おおよそ1リットル中100ミリグラム以下のミネラルを含む水を軟水、200ミリグラム以上が硬水とされています。日本の水はほとんど軟水です。ヨーロッパなどの大陸の水は、石灰岩が多い上に地下の滞留期間が長いため、200から300以上の高いミネラルを含む硬水もあります。
硬水に慣れていない日本人はお腹が痛くなったり下痢をしたりすることもありますので気をつけましょう。
硬水は料理にはあまり向いていないと言われます。例えば軟水の日本では昔から、
水を使って煮物、汁物、ゆで物をします。一方フランスでは水を使うよりも、蒸す、
油でいためる、牛乳やワインを加えて煮たりする料理が多くなります。また同じ理由でヨーロッパ諸国ではワインが作られます。ワイン作りには水は使いません。イギリスの水は日本と似て軟水です。そのためイギリスではワインではなく、ウィスキーづくりが盛んになりました。水の質により料理や飲み物も違ってきます。
塩について 1
1.塩の歴史と重要性
私達は塩を毎日の料理に使っていますが、味付けに欠かせない調味料の1つとしてしか見ていないように思いませんか。
「塩」は私達人間だけでなく動物にとっても生きていくために必須のミネラル成分です。塩の化学成分はNacl(塩化ナトリウム)で、ナトリウムと塩素の化合物です。このナトリウムこそ生体維持に必須であり、自然界にある他のどれとも置き換えることができないユニークな「成分」です。電解質という性質を持ち、水に溶けるとNa+ とCl- に分解され、イオン化します。ですから、海水中や体内の体液ではナトリウムイオンとなっています。
狩猟民族は塩を肉の塩分で補っていましたが、農耕民族だった日本人は主食とする米と野菜から必要量の塩分を摂ることが出来ませんでした。それで島国である日本では海水から塩を取っていました。その様子は『古事記』からも覗えます。日本最古の書物にはイザナミノミコトが黄泉の国より戻られた時に自らの穢れた体を海水で禊をされたとあります。そして、息子のシオツチノオキナが海水から塩を摂る製塩法を日本の各地に広めたことなども書かれています。この大切な「塩」を製造し管理することは一国を管理することに繋がりました。ですから、塩が政治と経済に深く関わってきたのは当然のことと言えるでしょう。また、世界中に「塩」についての格言や言葉が多くあることからも、塩がいかに重要視されてきたか分かります。
例えば「赤穂浪士」の逸話で有名な赤穂藩は塩作りで知られ、その販売で財を貯えていました。ですから、浅野家が取り潰しの憂き目にあった時、借金がほとんど無かったといわれています。
また、「敵に塩を送る」という言葉もあります。内陸国である甲斐の武田信玄と、日本海に面した越後の上杉謙信が交戦中に、駿河の今川氏も武田氏と反目して塩の供給を絶ってしまいました。窮地の敵、武田氏に塩を送ったのが上杉謙信。この行為が高く評価され、後世に伝わりました。
古代代ローマでは役人達に支払われる給金が「塩・sal」であったことからもその重要性が分かります。そのなごりが現在の「サラリー」という言葉に伺われます。また「サラミ」という言葉も「サラミ・塩」に由来します。サラミは塩の「水を取り込む働き」を利用した保存食品でした。野菜に塩を振って味付けした料理が「サラダ」と呼ばれるようになったのもそれと同じです。
近代ではイギリスの植民地であったインドで、イギリス政府の独占製塩法に反対し、マハトマ・ガンディーが支持者と共にデモ行進をして、自ら法を破って製塩しました。これがインドの独立運動に広がっていきます。塩はインド独立運動におけるガンディーの非暴力服従の象徴として、「独立の塩」として重要な意味を持っています。
「塩」には食品の腐敗を防ぐ作用と殺菌の働きがあることから、宗教においても重要視されてきました。神道では塩が祭壇に供えられたり祭事に使われたりしますが、これは塩が穢れを拭い清める力を持つと見なされているからです。相撲では取組みの前に塩を撒いて土俵を清めます。仏教でも同じように葬儀後に塩を使って身を清める風習があります。
塩が宗教と関わりを持っているのは日本だけではありません。聖書のマタイによる福音書に規範として「地の塩」という言葉が出てきます。これも信者があらゆる「腐敗」から離れているべきであることを示す教訓であり、塩に「腐敗」を防ぐ働きがあるということが知られていたことが分かります。
飲食店やサービス業店舗の入り口に塩を盛り付けておくことを「盛り塩」と言いますが、これは招き猫と同様に客を集める縁起担ぎです。その由来は中国の武帝の故事にあります。それによると司馬炎は美女を多数住まわせて、牛が立ち止まった家の女性と一夜を共にすることにしていました。牛が塩を好むことを知っていた美女の1人が毎夜塩を入り口に置いて武帝を迎えることができたという逸話です。
このように「塩」は単なる味付けとしてだけではなく、その作用や働きにより、貴重かつ尊いものとして扱われてきました。塩の製造方法や岩塩の採掘には技術が必要なだけでなく、採掘できる場所も限られていました。そのために塩を支配することは権力者にとって重要かつ生存に無くてはならないものだったのです。
それでは、「塩の働き」にはどんなものがあり、私達はその働きをどのように日常に取り入れて生活を豊かに、また便利にしているのでしょうか。
2.塩の働き
今回は毎日の料理に使われている塩の様々な働きについてお知らせします。
塩には、「脱水作用」、「浸透作用」、「防腐作用」、「蛋白質を安定させる作用」、「酵素・色素の働きを調整する作用」などの働きがあります。毎日の食生活を彩り良く豊かなものにすることが出来るのも、塩のこのような働きのお陰といって良いでしょう。
(1)脱水作用 、浸透作用
塩の水分や湿気を取り込む「脱水作用」を利用して漬物や肉、魚介類の干物などが作られます。漬物の場合は漬ける野菜の重さの3% から、場合によっては5%ほどの塩が使われます。そして、「浸透作用」が働いて塩分が組織・細胞に染込んで適度の塩味がつき、美味しく感じられます。塩は素材の味を生かす隠れた立役者といえます。
また、鯖などの青魚やブリのように脂肪の多い魚を料理する時に塩をふり冷暗所に置いておくと、生臭さ、ぬめり、脂肪分などが吸収されて味が上品になるという利点もあります。
(2)防腐作用
食材が傷むのは、含まれている水分のために微生物が繁殖しやすく、様々な酵素が働き始めてタンパンク質の分解が始まり、同時に空気に触れて酸化が起こるからです。塩をふれば脱水され、微生物の繁殖を制限し酸化や酵素の働きが抑えられるので食材を腐敗から守ります。
魚は塩をふったり、食塩水に暫くつけてから生乾きにしておき、それを冷蔵庫に入れておけば、数日は日持ちがします。最初から多量の塩を使って天日で乾燥させれば腐敗の心配もなく長期間保存できます。また食材も縮み軽くなるので保存・運搬も簡単になります。例えば「干しタラ」があげられます。新鮮なものよりも味がよいのです。ポルトガルでは新鮮なタラよりも、干しタラの方が人気があるようです。
こうして塩の脱水・防腐作用を利用して、昔から保存食品が作られてきました。日本の漬物、味噌、醤油など、またヨーロッパではチーズやビュンドナーフライシュ(牛肉の干し肉)や生ハムといった乾燥肉も塩を利用して作られています。
(4)蛋白質を安定させる作用
魚は食塩や醤油で塩味をつけてから煮ると煮崩れを防ぎます。それは塩の「蛋白質を安定させる作用」が働くからです。ステーキを例にとっても、焼く直前に塩をふると表面が安定してジューシーな焼き上がりになります。ただ、塩をふって時間が経つと、肉汁が出て出来上がりが固くなってしまうので注意が必要です。蛋白質を安定させる働きを利用して、メレンゲなどにも塩が使われます。卵白の泡が安定することにより長時間に渡り形崩れを防ぐからです。
(5) 酵素・色素を安定させる作用
お料理には味だけではなく見た目も大切です。彩り良く盛られたお惣菜にはそれだけでも食欲がそそられます。ほうれん草などの緑色野菜には、塩を一つまみ入れたお湯にくぐらすとナトリウムイオンが青菜の細胞内に浸透して色素(葉緑素)を安定させるので色が鮮やかになります。その直後に冷水にさらすと温度が下がり酵素の働きがその段階で止まるので鮮やかな色が保たれます。
私達の食生活に欠かすことの出来ない「味噌」や「醤油」なども、塩の「酵素を安定させる作用」を利用して造られます。というのも、塩の分量によって「麹菌の働き」をコントロールすることができるだけでなく、それぞれに独特の味をブレンド出来るからです。
生体維持に欠かすことの出来ない塩。次回は「塩の体内での働き」についてお知らせしたいと思います。
市販されている塩:
スイスで市販されている食用塩には3種類あります。スーパーなどで見てみると、青色の箱に緑の帯がついているのは、カリエス予防のためのフッ素と、ヨードが添加されています。青色で赤い帯のついている箱の塩にはヨードだけが添加されています。またフッ素とヨード両方とも添加されていない塩もあります。
ヨードは海藻類などにたくさん含まれていますが、スイスのような内陸国は、昔から魚介類や海藻類をあまり摂取できない国であるため、ヨードの欠乏症を防ぐために、人工的に食塩に添加しているのです。フッ素は虫歯の予防に有効なため添加されています。
3.塩の体内での働き
今回は、塩の体内での働きについてお知らせします。
私たちは塩を調味料として使い、毎日の食事で体内に取り入れています。塩(塩化ナトリウム)は、体に入るとナトリウムイオン(Na+)と塩素イオン(Cl-)という形に分解され、約50%が細胞外液(血液、リンパ液、組織液など)に、40%が骨に、そして10%が細胞内液に溶けています。人間の体は60兆個もの細胞で成り立っていますが、細胞は塩を主成分とする細胞外液に取り囲まれています。細胞壁を隔てて内液と外液のナトリウムはそれぞれ一定の濃度を保っています。
塩は体温や体内の水分を調整します
激しい運動をしたり、発熱して体温が上がり過ぎると、体は発熱体であるナトリウムを体外に出し熱を下げようとします。これが汗です。発汗した後の下着にはうっすらと塩がついています。ですから汗をかきすぎて脱水症状になった場合は水分だけでなく、塩分の補給も必要なのです。反対に体が冷えると体液中の水分だけを排泄して、体内の塩分濃度を高く保とうとします。冷えた時にトイレが近くなるのはそのためです。この場合の尿には塩分が殆ど含まれていません。腎臓は血液を濾過して尿を作り、老廃物を尿と共に体外へ出します。ナトリウムが不足すると、腎臓は尿の中に出したナトリウムを再吸収します。そうすると腎臓に大きな負担を与えるだけでなく、尿の量も減り、体内の老廃物を十分に排泄出来なくなります。
塩は体の新陳代謝を助けます
体内でナトリウムが不足すると新陳代謝が衰えます。細胞が必要とする栄養素は細胞膜を通して細胞外液から取り込こまれます。また代謝時にできた細胞内の老廃物は細胞外液に出されます。この機能は細胞内液と外液の圧力(浸透圧)の差を利用して行なわれますが、その浸透圧を調整しているのがナトリウムです。ナトリウムの量が少なくなると、内膜・外膜間の物質・成分の移動が活発に行われず、新陳代謝がスムーズにいかなくなります。塩を十分にとらないと、循環不全、血圧低下、ショック症状、立ち眩み、むくみなどの症状が現れます。
塩は筋力や体力の元です
ナトリウムは神経や筋肉の働きをコントロールします。私達が運動すると、脳や脊髄が神経を介して筋肉収縮の信号を送ります。その信号を受けて外液中のナトリウムが細胞内液に入り込みます。代わりに内液中のカルシウムやマグネシウムが外液へと出て行きます。そうすると筋肉細胞は硬く緊張し、収縮します。足がつったりするのはこのためです。逆の信号が送られると、その反対のメカニズムが働き筋肉が弛緩します。これは筋肉の細胞外液にナトリウムが多くなり、カルシウム、マグネシウムが少なくなった状態です。この時、細胞内液には逆にカルシウム、マグネシウムが多くナトリウムが少なくなっています。ですから足がつる場合、マグネシウムを摂取すると良いといわれるのです。
塩は血液が酸性になるのを防ぎます
人の体は弱アルカリ性です。しかし、激しい運動をした後や、酸素が不足してくると細胞の代謝活動により、乳酸が発生して血液を酸性にします。血液が酸性になると意識を失ったり、時には死亡に至る場合もあります。血液のpH値(液の酸性、アルカリ性の程度を示す指数)は通常約7.4 に保たれていますが、身体を酸性から守るのに役立っているのが血液中のナトリウムイオンです。ナトリウムイオンはアルカリ性なので、強い酸と結合して体液を中和させ、身体を弱アルカリ性に保ちます。
塩は消化と栄養分の吸収を助けます
体液中の塩素イオンは、胃酸の主成分となりたんぱく質、でんぷんの分解(消化)を助け、殺菌する作用があります。ナトリウムイオンは小腸での糖やアミノ酸の吸収を助けます。
塩と高血圧の関係
「塩は高血圧の原因」と言われています。ただし近年では、塩の摂取と血圧の上昇は必ずしも結びつかないということが明らかになってきています。減塩して血圧に影響がある人とない人がいます。統計上では高血圧対策として減塩が効果的なのは、約40%の人となっています。
4. 生活の知恵として使われる塩
「塩シリーズ」最後は、毎日の生活の中で知っていると役に立つ「塩」の使い方についてまとめました。
* 魚を料理した後のまな板は、「塩」をこすり付けるようにして洗うと生臭さが取れるだけでなく殺菌効果もあります。
* 魚や肉を充分の塩で覆っていわゆる「鎌倉焼」にすると、ジューシーで美味しく出来あがります。
* カットの複雑なグラスや花瓶は、洗剤の代わりに「塩」を使いましょう。
歯ブラシで磨けば汚れがとれてピカピカになります。
* 頑固な茶渋は「塩」をつけてこすって洗うと簡単にとれます。
* 鍋やフライパンなどを洗う時も磨き粉(クレンザー)の代わりに「塩」を1つまみ使いましょう。鍋を焦がしてしまった時は底に「塩」をひき、2 ~ 3時間おいてこすると簡単にとれます。
* 赤ワインをカーペットにこぼしてしまった時は、応急処置としてまず「塩」を染みにかけておき、翌日掃除機で取ります。(赤ワインの染みは白ワインや炭酸入りのミネラルウォーターでもとれますが、その時も「塩」をお忘れなく。)
* 染みがついたシャツやブラウスはたっぷりの水につけてから、「塩」で染みの部分を洗ってみましょう。塩の成分である「塩素」が働くので漂白効果が期待できます。(色物には注意しましょう)
* 犬や猫がカーペットにおしっこした時も「塩」が活躍します。雑巾で拭き取らないで「塩」をさっと振り掛けて吸い込ませてから掃除機をかけます。
* 金魚の元気が無くなった時に、「海水浴」をさせると回復します。その場合の「塩」の濃度は0.5 % から0.7 % ぐらいです。
* タバコの灰がカーペットや畳の上に落ちてしまった時も、慌てないで「塩」をかけてトントンと叩きます。灰が塩に混ざって取れます。
* モービルホームなどキャンプ場での冬越しに、2 ~ 3 キロの「塩」を大きなプラスチック容器に蓋をしないで入れておきます。塩が室内の湿気を取るのでカビを予防出来るだけでなく匂い消しにもなります。また、翌年その塩を「塩水」にして庭石の間の雑草にかけて再利用すると、雑草が根から枯れるので取り易くなります。
* 雪が降った時玄関前に「塩」を撒いておくと凍結予防になり、滑るのを防げます。「塩」が道路に撒かれるのもその為です。
* お風呂の中に50 ~ 100 gの「天然の塩」を入れて、塩湯で全身を軽くマッサージしましょう。血行が良くなり腰痛や肩凝りなどに効果があり、リラックス出来るので熟睡出来ます。柑橘類の皮などを入れて香りを付けても良いでしょう。
* 塩でお腹をマッサージすれば、(肌に傷などがないときに限ります)血行が良くなり、腸の蠕動運動を助けます。また、肌も引き締まります。
* ニキビや傷が出来ていない時に、塩で顔のピーリングするのも良いでしょう。その時、しすぎたり塩が目に入らないように注意しましょう。
* 1リットルの水に対して1gの塩を入れた「塩水」を飲むセラピーがあります。この場合は医者の指示を仰ぐ必要がありますが、元気回復、整腸等いろいろな目的に使用されています。
ケーキで死亡!
数年前に子供がケーキを食べて死亡するという事件がありました。調査の結果、塩と砂糖を間違えて焼いたケーキを食べた事がわかりました。実験で人間はあまりにも塩辛い物を食べると生理的な拒絶反応がでるので、多量の塩を1度に食する事は不可能だということが明らかになりました。その結果、死亡した子供は継母に無理やりケーキを食べさせられた事が判明しました。因みに塩の致死量は個人差はありますが、大人1人30gからそれ以上を1度に食べた場合です。