心筋梗塞(こうそく)のような心臓病の大きな原因は肉や脂肪の取り過ぎだとよくいわれるが、牛や豚などと違って、魚の場合は、動物性でも脂肪の成分が異なるので、心臓病になるどころか、逆に予防や治療にもなる。

牛や豚などの脂肪には血中コレステロール値を上げるパルミチン酸、ミリスチン酸のような飽和脂肪酸が多く含まれているが、これに対し、魚の脂肪にはエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といったn−3系の多価不飽和脂肪酸が多く含まれている。これは血中総コレステロール値や中性脂肪値、また血圧を下げ、さらに血小板の凝集を抑え、血液をサラサラにして、血栓のできるのを予防し、動脈硬化、心筋梗塞や脳梗塞を予防する。

ところで魚が良いといっても、脂肪の少ないものでは効果は期待できない。脂肪の多い魚としては、一般に青背の魚があげられる。サンマ、サバ、ハマチ(ブリ)、マグロ、マイワシ、ニシン。河川や湖などでとれるウナギ、アユ、コイなどがあげられる。しかし、赤背の魚、タイ、キチジ(キンキン)などでも脂肪が多ければ同じ働きが期待できる。

最近は養殖ものとしてタイ、アユなどが出回っているが、この方が天然のものよりも脂肪が多い。1日の魚の適量は、70−80グラム(1切れか小ぶりのもの1匹)である。魚の抗血栓作用はおよそ24時間位だから、1日1回は魚を食べるようにしよう。手軽にイワシ、サバなどの缶詰を利用しても良い。

(新宿医院院長  新居 裕久)
2005.10.1 日経新聞