リンゴに高脂血症薬と同じ作用 食品ポリフェノールがコレステロール吸収を抑制
東京大学大学院農学生命科学研究科の研究グループは、食品由来のポリフェノールがヒトの腸管でコレステロール吸収を抑制する仕組みを解明した。ケルセチンやルテオリンがたん白質「NPC1L1」の輸送機能を直接阻害することを見いだした。この仕組みは新しい高脂血症治療薬エゼチミブによる改善作用と同じものと考えられ、得られた知見をもとに動物による摂取実験を実施。高コレステロール状態が改善することがわかった。これらのポリフェノールはリンゴなどに含まれ、日常から心がけて摂取することで、心疾患などの原因となる高コレステロール血症の予防に役立つ可能性が示唆された。
NPC1L1は、腸管からコレステロールを吸収するための輸送体として知られているたん白質。高脂血症治療薬エゼチミブは、同たん白質と結合してその機能を阻害することで、コレステロール吸収を抑えることができる。研究グループは高脂血症治療薬の標的となるNPC1L1の輸送の仕組みに関与するのではないかとみて、ヒトの腸管モデルの上皮細胞を用いて腸管でのコレステロールの吸収の仕組みを解析。ポリフェノールの濃度による輸送活性などを調べ、NPC1L1の仕組みの詳細な部分までを解明した。
ポリフェノールの仲間には、血中コレステロールの濃度上昇を抑えることが数多く報告されているが、腸管でのコレステロール吸収の仕組みとの関係については、これまで未解明な部分も多く詳細がわからなかった。
一方、ケルセチンやルテオリンは、リンゴをはじめタマネギ、シソなどの農産物に含まれる成分。ラットを対象に実施した摂取試験によれば、エサに0・5%のコレステロールを混ぜる条件を設定し、ルテオリンやケルセチンを1日当たり2回、経口摂取させた際の血中コレステロール濃度を測定した。これらのポリフェノールを摂取させなかったラット群では、エサによる血中コレステロール濃度が日ごとに上昇したのに対し、ポリフェノール摂取群は同濃度が有意に抑制されることを確認した。
エゼチミブとポリフェノールとの比較を行うために、ヒトの腸管モデルの上皮細胞にルテオリンやケルセチンを入れ1時間培養しコレステロールの吸収活性を測定すると、長時間にわたりコレステロールの吸収抑制効果がみられた。この測定結果はエゼチミブとほぼ同様な作用で効果が現れると考えられ、類似の仕組みによるコレステロールの吸収が抑制されていることが示唆されたという。
ケルセチンやルテオリンは、生体内吸収するうえで吸収力が高くない。このため、機能性食材などに加工した成分の活用もメタボ対策として有用とみられる。
引用:化学工業日報 2014年6月9日