「野菜や果物からカロテン、ビタミンCを多くとる」「食塩を減らす」などは、生活習慣病予防に欠かせない基本的な食習慣だ。ただ、このような漠然としたアドバイスのままだと、具体的にどうすれば良いのかよく分からない。
われわれは、1998年から2000年にかけて、胃がんや脳卒中による死亡率が高い地域で、食習慣を効率的に改善するためのプログラムを作り、その効果を検証する研究を実施した。
まず、1日当たりの摂取目標として、食塩だと、男性10グラム未満、女性8グラム未満に設定。カロテンを5ミリグラム以上、ビタミンCを200ミリグラム以上とした。減塩と野菜・果物をたくさんとるというのが原則だ。
まず自記式の食事調査で普段の摂取量を調べる。その結果に基づき栄養士が個別に食事指導を行う。「あなたの場合は、この食品をこれくらい減らせば、目標を達成できます」という内容だ。サプリメントは使わない。
40−69歳の男女550人のボランティアを募り、食事調査と血液・尿の検査を実施した。無作為に2つのグループに分けて、片方のグループにだけ食事改善プログラムを実施した。そして1年後にも同じ調査を繰り返した。
食事指導をしたグループで、食塩の摂取量が減り、カロテンとビタミンCが増えるという、より好ましい変化が観察された。この結果は、血液や尿の検査でも確認できた。普段の食事で食塩摂取量が多かった人ほど、また、カロテンやビタミンCの摂取量が少なかった人ほど、改善幅が大きかった。
一見当たり前のようだが、実際に健康な人たちの食習慣を変えるのは簡単ではない。個別に対応した食習慣改善プログラムだからこそ、目標が達成できた。
食習慣が変わったことで、血圧に変化が見られた。指導を受けなかったグループは変化がなかったが、指導を受けたグループでは収縮期血圧(上の血圧)の平均値が約3低くなった。特に、高血圧症の人は、6も下がった。
(国立がんセンター予防研究部長 津金 昌一郎)
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