現段階で生活の中に取り入れるとがんになる確率が下がりそうな予防法にはどのようなものがあるのだろうか。
禁煙は最も確実で効果が期待できる。喫煙者がたばこをやめるとがんになる確率を3分の2にまで減らすことが可能。循環器や呼吸器疾患、糖尿病など多くの病気の予防にもなり、寿命が延びる。吸わない人も、他人のたばこの煙をできるだけ避ける努力が必要だ。
飲酒はほどほどに。具体的には日本酒換算で1日1合(ビールで大瓶1本)以内が目安になる。それ以上の飲酒は、がんだけでなく脳出血などのリスクを上げる。飲まない人、飲めない人は無理に飲むことはない。
食生活は偏らずバランスよく栄養をとるのが原則だ。いろいろな種類の野菜や果物を、野菜は毎食、果物は毎日とるように心がける。食道や胃のがん、循環器疾患の予防に効果があるだろう。
塩蔵食品・塩分の摂取は抑えよう。日本人で最も多い胃がん予防に有効であるのみならず、高血圧を予防し循環器疾患のリスクの減少にもなる。また、熱い飲食物はなるべく控えることが、食道がん予防につながる。
定期的な運動は、日本人で増えている大腸がんや乳がん予防に役立つ。例えば、ほぼ毎日合計1時間程度の歩行などの適度な運動、週に1回程度は汗をかくような激しい運動をする。
糖尿病や高血圧、高脂血症などの病気予防に対しては、やせればやせるほどリスクが低下する。しかし、すべての原因による死亡やがん全体のリスクとしては、中年期の男性だと体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割るBMIが23−27、女性では19−25あたりが良いようだ。
がんの原因であることが明らかなウイルスの感染予防も重要だ。確かな知識と慎重な行動は確実にがん予防につながる。
今回紹介した項目は、新しい研究の成果が積み重なることで、修正、追加、削除される可能性もある。情報を更新しながら賢く応用してもらいたい。
(国立がんセンター予防研究部長 津金 昌一郎)
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