「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」の江戸時代の山口素堂の句にあるように、かつおは初夏の風物である。かつおはまぐろと同じさば科の回遊魚で、味がよい赤身の魚。4〜6月の旬の初かつおがある。
栄養面からみると良質なたんぱく質食品で、EPA.DHAといった血栓を予防する脂肪酸を含んだ油、そして鉄やビタミンB1も多い。かつおはまぐろに比べて足が早いのが難点。そこで江戸時代からかつおにはからしをつけて食べていた。間に合わない時は、おろし大根で。わさび醤油はかえって味をそこなうといっていた。これらの香辛料はともに殺菌力がある。
温暖の地、高知県の土佐の「かつおのたたき」は有名だ。3枚におろしたかつおを皮つきのまま串に刺し、かややわらなどの強い炎にかざす。皮にさっとこげめがつき、肉の表面が白くなる程度にあぶってまな板に乗せ、冷めたところに塩少々を振り、酢をぬった包丁の腹で軽くたたいたことから、たたきという。塩も酢も肉をしめるための操作だという。
これを厚めの刺身に作って器に盛り、つまにはみじん切りの生にんにく、おろししょうが、おろし大根などを添え、付け醤油には果実酢をいれて食した。
酢、苦、甘、辛、塩からいの五味の調和のとれた味に仕上げているので大変おいしい。また一説によると、生のにんにく、ねぎ、しょうが、だいこんには生臭みをとる以外に殺菌力があることから、食中毒予防の意味を兼ねてこんな調味がされたともいう。
(新宿医院院長 新居 裕久)
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