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最新の社会情勢レポート!!

日本に暗雲。限界を超えて

冷え込む秋、スズキ会長「限界を超えた」

「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉どおりで、先週末は各地で猛暑日を記録した22日と一転、秋分の日の23日から24日にかけて冷たい雨が降り続いた。初秋どころか一気に初冬を迎えたほど肌寒く感じたが、急激な変化は気候ばかりでなく日本経済にも暗雲が立ち込めているようだ。

きょうの日経によると、「2009年4月から続く景気回復の勢いが鈍ってきた」と1面トップで報じている。その理由としては「世界経済の減速と国内の政策効果の息切れが重なり、輸出や生産の拡大にブレーキがかかる」、「円高・株安が企業や家計の心理を冷やし、設備投資と個人消費を下押しする恐れも出てきた」と分析。

7〜9月期の日本経済は猛暑やエコカーなどの特需で高めの成長率を維持するが、「年末にかけて足踏みの状態に陥る公算が大きい」との見方を示している。10〜12月期の産業天気図予測は「曇り」が主要30業種のうちなど14業種と、7〜9月期の当初予測から3業種増えたという。

自動車、電子部品・半導体、化学、コンビニの4業種が「薄日」から「曇り」に悪化。このうち、自動車はエコカー補助金打ち切りの反動で、トヨタ自動車が10月から国内生産を2割減らすなど、国内販売の落ち込みは避けられないほか、想定レートを大きく上回る円高の定着も追い打ちをかけそうだとみている。

経営者の目として、自動車は鈴木修・スズキ会長兼社長を取り上げているが、「15年前と違うのは、合理化もコストダウンもぎりぎりまで進めたあげくの円高という点」としながら「企業は自分たちで守るものだが、今の水準は限界を超えている」とコメントしている。

これまで歯を食いしばってでも苦境に耐え抜いてきた鈴木会長が「限界を超えた」という弱音を吐くほど、下期は厳しい状況が続くことが予測される。

《福田俊之》

2010.9.27 記事提供:レスポンス

 

受動喫煙で6800人の死亡者?

受動喫煙で6800人死亡 女性に大被害、半数は職場
厚労省研究班

 受動喫煙が原因で肺がんや心臓病で死亡する成人は、国内で毎年約6800人に上るとの推計値を厚生労働省研究班が28日、発表した。女性が約4600人と被害が大きく、全体のうち半数以上の約3600人は職場での受動喫煙とみられる。

 主任研究者の望月友美子(もちづき・ゆみこ)・国立がん研究センタープロジェクトリーダーは「年間の労災認定死が約千例であることを考えると、甚大な被害だ。行政と事業者は、労働者の健康を守る責任があることを認識すべきだ」と話している。

 研究班は、2005年に実施された受動喫煙状況に関する調査を基に、たばこを吸わない成人約7600万人のうち、女性(約4800万人)の約30%と男性(約2800万人)の約6%は家庭で、女性の約20%と男性の約30%は職場でそれぞれ受動喫煙にさらされていると推定(重複あり)。

 受動喫煙により、肺がんや虚血性心疾患などの病気になる危険性が1・2〜1・3倍になることが国際機関や同センターの疫学調査により明らかになっており、受動喫煙によって増えるリスクから死者数を推計した。

 その結果、肺がんで死亡した女性(年間約1万8千人)の約8%と男性(同約4万9千人)の約1%、虚血性心疾患の女性(同約3万4千人)の約9%と男性(同約4万2千人)の約4%の計約6800人は受動喫煙が原因と判断した。女性が約4600人、男性が約2200人で、このうち職場での受動喫煙は男女とも約1800人。

※受動喫煙

 健康増進法では「室内かそれに準ずる環境で、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義。喫煙者がフィルターを通して吸った「主流煙」よりも、たばこの先端から立ち上る「副流煙」に、より多くの有害物質が含まれるとされる。健康被害を防ぐため厚生労働省は2月、飲食店やホテル、百貨店など多くの人が利用する公共的な施設に対し、建物内での全面禁煙実施を求める通知を出した。神奈川県は4月に、全国初となる受動喫煙防止条例を施行した。

2010.9.22 記事提供:m3.com

 

喘息のこどもが禁煙法後に大きく減少、スコットランド

禁煙法の制定、15歳未満の喘息入院率が低下、スコットランド調査

2010年09月22日 ソース:NEJM(論文一覧) カテゴリ: 呼吸器疾患(関連論文) ・アレルギー疾患(関連論文) ・小児科疾患(関連論文

文献:Mackay D et al. Smoke-free Legislation and Hospitalizations for Childhood Asthma. NEJM. 2010;363:1139-1145
 15歳未満の喘息入院データ(2000-2009年)を用いて、2006年3月制定の禁煙法による、小児喘息入院率への影響を調査。禁煙法制定前は入院率が年平均5.2%上昇していたが、制定後は2006年3月26日と比べ年平均18.2%減少した。入院率と年齢、性別、居住地域、社会経済的地位に有意な関連は見られなかった。

2010.9.22 記事提供:m3.com

 

海水浴海岸の禁煙は8割が賛成

海水浴場禁煙化 8割が肯定的
神奈川県が条例アンケート

 県は21日、海水浴場を原則禁煙とする条例(5月施行)について、今夏の海水浴場利用者らに実施したアンケート結果を発表した。条例について「適切」「もっと進めるべきだ」との回答が合わせて8割を超え、多数の理解を得ていることがうかがえる。
対象は、県内27カ所の海水浴場の利用者3575人のほか、海の家事業者28人、ライフセーバー82人。
喫煙場所以外を禁煙とした新ルールについて、「適切で良い取り組み」と答えたのは利用者2037人で、事業者は14人、ライフセーバーは43人。「もっと進めるべきだ」は利用者898人、事業者11人、ライフセーバー28人で、計3031人(82%)が肯定的に受け止めていた。「もっと緩やかな取り組みとすべきだ」は計376人(10%)にとどまった。

  認知状況は、利用者の63・2%が「来る前から知っていた」と回答。事業者の85・7%とライフセーバーの53・7%が「(新ルールが)守られている」と答えた。【杉埜水脈】

2010.9.22 記事提供:毎日新聞社

 

自民、条例案、
オーラルヘルス「歯周病連鎖防止」

歯の健康条例案、自民議員提案へ 栃木県議会

 県議会の自民党議員会政策調査会は、歯の健康について、県の施策や歯科医師の協力などを定めた「県民の歯及び口腔(こうくう)の健康作り推進条例」を12月議会で議員提案すると発表した。成立する見通しで、これまで全国では6月までに新潟県など9道県で条例制定されているという。

 条例案は市町と連携して歯科保健計画などを策定し実施することや、歯についての学習機会を設けること、県が講じた施策などを県議会で報告することなどを定めている。
 県の脳血管疾患や虚血性心疾患での死亡率は全国的に高い。歯科医でもある小林幹夫県議は歯周病菌が脳卒中など血管障害を引き起こす原因の一つであることが学会でも報告されているとして「医療費抑制にもつながる」と狙いを話した。
 条例案は県議会のホームページ上などで閲覧でき、10月13日までパブリックコメントを受け付ける。【泉谷由梨子】

2010.9.22 記事提供:毎日新聞社

 

「リスク高い医療で感染症」で刑事罰を問うのか

「院内感染症死」なら異状死の届け出義務が生じるのか

――帝京大学の「外部委員報告書」は、感染と死亡との関係について、(1)因果関係が否定できない、(2)因果関係が不明、(3)因果関係なし、の三つに分けていますが、「因果関係なし」に該当するのは、どんな場合なのでしょうか。

森澤 この辺りは臨床サイドの方でないと、分かりにくいでしょうが、「明らかな他病死」はあると思います。あるいは一過性に、感染症の症状を呈していても、明らかに治癒し、その後、別の病気で死亡することもあるでしょう。

――過去には、セラチアの院内感染で患者が死亡した事例で、業務上過失致死罪に問われ、有罪になったケースがあります(『「院内感染で捜査」、医療は再び崩壊の懸念』を参照)。セラチアは、毒性が強いのでしょうか。
森澤 昔から学生には、「医療関連感染症を来す菌は、SPACEと覚えなさい」と教育しているのです。Sはセラチア、Pは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Aはアシネトバクター、Cがサイトロバクター、Eがエンテロバクター。現状では、緑膿菌の感染が目立ちますが、我々からすると、セラチアやアシネトバクターが医療関連感染症を起すのは、当たり前の感覚なのです。

――「この細菌は毒性が強いから、感染と死亡との因果関係が分かりやすい」などはありますか。

森澤 それは難しいですね。
帝京大学では院内感染対策のあり方が問題視されていますが、医療安全でもそうですが、管理部門がいくら言っても、現場のスタッフがそれを守らなければ、全くダメ。だから、よく「まず隔離を」といった議論をされますが、患者さんが複数床の病室にいらしても、医療従事者が手指衛生を徹底し、患者さんも感染管理の意識を持っていれば、感染は広がらないわけです。アシネトバクターは接触感染が基本ですから、隔離しなければいけない理由は実はない。したがって、ヒステリックなことを言えば、感染管理がきちんとできていないことを理由に刑事罰を科すのであれば、その対象は病院職員全員です。

さらに、現場の側から言うと、感染管理が今、問題になっていますが、そうは受け取らない。「リスクの高い医療をやって、感染症を起したら、刑事罰を科される」となる。国民の皆さんの反感を買う言い方になりますが、今回、多剤耐性アシネトバクター感染が認められた中には、「どうやっても亡くなっていた」という症例があるのは確かです。だから、「このままだったら、死亡するかもしれない」という症例は、引き受けない方が賢いということになりかねない。自然にお亡くなりになったら病死になる。それを治そうとして努力したら、逆に業務上過失致死罪に問われるわけですから。
以前、よく冗談で、「MRSAを減らす一番いい方法は何でしょう。それは検査しないことです」と言っていました。もうそれどころでは、なくなってしまう。「一番安全な医療を行うためには、どうすればいいか。それは患者さんを診ないことです」となったら、それは本当に怖いことです。

安福 多剤耐性アシネトバクターに感染する可能性がある、感染したら場合によっては死亡するかもしれない。このような「予見可能性」があっても、「結果回避可能性」、つまり感染を防ぐことは並大抵のことではない。仮に防ぐことができても、もともとの病気で死亡するかもしれない。逆に、多剤耐性アシネトバクターを保菌していても、本来の治療中の病気が軽快するかもしれない。その後、他の感染症になるかもしれない。また、限られた医療資源を必要以上に感染防止対策に割くことは、総合的に見ると現場を一層に人手不足にしてしまい、かえってリスクを高めるかもしれない。
 いろいろなリスクがある中で、「ではどんな感染防止策をやったら、確実に感染症を防ぐことができるのか」、「しかも、患者を重篤な状態にしないで済むのか」。それが言えない限り、業務上過失致死罪は問えないと思うのです。
 さらに言えば、死亡後、アシネトバクターが検出されたとする。だからアシネトバクターで死亡したかもしれない。これは異状死なのかという話にもなる。治療中の病気以外で死亡した場合を異状死とするのが、日本法医学会の定義ですから。
 たまたまアシネトバクターの感染で死亡したとしたら、「感染させたことが罪」であるとか、「それが原因で死亡したのは異状死である」とか、「報告しなかったから、医師法21条に基づく届け出義務違反」などというのは、何か論理がおかしい。そういう気が私はするのです。

――「外部委員報告書」では、「多剤耐性アシネトバクター感染拡大に至った問題点の検討」として、(1)構造的に横の連携・情報共有に欠陥があったと思われる、(2)病院長を主体とした危機管理体制が十分に機能していない。その結果、新規入院制限等が迅速に実施できず、感染拡大を招いた可能性が高い――などと指摘しています。

安福 「高い」とまで言われると、ではどれくらいの高さなのか、と問いたい。「十中八九の蓋然性がある事例が、刑事起訴の基本」とよく言われますが、そこまで高いのか。それは、客観的に言えることなのか。

森澤 医療は、不確実なもの。医療においては、can be done」とは言えても、「should be done」はずっと少なく、「must be done」と言えることはものすごく限られているはず。

安福 しかし、患者さんたちはもちろん、警察も「must be done」だと思っているでしょう。そもそも、その様な区別を知らない。そのカルチャーギャップを埋めないと、恐ろしい誤解が生じてくる。
 理想的な感染対策を講じるために、調査委員会がこうした報告書を書くのは大事です。ただ、人員面をはじめ、診療現場には様々な問題があり、現実には容易ではない。しかも、「専従スタッフが少ない」との指摘もありますが、それを病院の責任と断定できるのか。単に現場に責任を押しつける結果となってしまったら、それは不可能を強いることにつながります。要するに、医療行政そのものと絡んでくる問題なのです。にもかかわらず、物事を単純化して、「病院のシステムエラーと言える」などと言い始めたら、何も知らない法律家から見ると、「業務上過失致死罪」に当たるようにも見えてしまう。

――院内感染対策についての診療報酬上の評価はわずかです。

森澤 今春の改定で多少は上がりましたが、それでも、「医療安全対策加算1」85点(「医療安全対策加算2」の場合は35点)、「感染防止対策加算」100点で、合計185点。つまり、患者さん一人当たり1850円を入院初日に算定できるだけです。
 また、「外部委員報告書」では、最後に「改善策と提言」として、感染制御部について、「高度先進医療を行う大学病院であり、病院の規模を考慮すると、ICD4(感染制御部専従医師)3人、ICN(感染制御部専従看護師)4人」と記載しています。警察が単にこの部分だけ見ると、「なぜ置いていなかったのか」となる。

――セラチアの院内感染では、実際の行為をした職員ではなく、病院長が業務上過失致死罪に問われています。ただ、生理食塩水を毎日作ることを怠り、常温で保管するなどして、セラチア菌に汚染されるなど、一般的な医療機関では実施しているであろうことを実施していなかった事例かと思います。

安福 その事例では、院長がそれを指示していた。また注射器が使用済みかどうかを確認せずに、使った。それが繰り返されているような病院だったら、それは問題ではないかと。ただ、今回の帝京大学の件で、警察による事情聴取などの際に、病院幹部が「なぜ置かなかったのか」と聞かれたら、どう答えればいいのか、それを警察がどう判断するか、気にかかるところです。

2010.9.17 記事提供:m3.com

さあ、禁煙の秋です。
たばこの値上げは過去最大値

外来受診者3割増し/たばこ店「もうたたむ」

 増税の影響で10月1日からたばこ代が大幅に引き上げられる。主な銘柄で1箱100円以上の値上げとなることもあり、販売減を見越して、たばこ店の中には「もう商売を続けられない」と、閉店を決めたところも。
 一方、日本たばこ産業(JT)が値上げ額を発表した今年4月以降は、内科の禁煙外来を訪れる人が増え、ドラッグストアは禁煙グッズの販売コーナーを設け始めた。

 東京都中野区のJR中野駅から歩いて15分の住宅街。大通りに面したたばこ店の女性店主(79)は、「2年前にタスポが導入されて売り上げは4分の1に落ちた。そして今回の値上げ。割に合わないし、近々、店をたたむつもり」。約70年前に義父が始めた店。義父や夫が亡くなった後も、近所の常連に支えられて商売を続けてきた。閉店の決意はまだ、周囲に伝えていない。
 都電荒川線の早稲田駅(新宿区)前でたばこ店を営む黒滝弘さん(77)は、「値上げで売り上げは半分くらいに落ちるだろう。法を守っているのに、まるで毒を売っているような仕打ちだ」と語る。「この年齢でほかの仕事はできない」。約40年前から夫婦で切り盛りしてきたがこの先、商売が成り立つか不安だという。
 政府は昨年12月に1本あたり3・5円のたばこ税増税を決定。販売減を考慮し、JTは今回、値上げ幅を1箱(20本入り)あたり60〜140円と過去最大にした。JTは、禁煙や本数を減らす人が増加する影響で、来月から1年間の販売数量は前年比で25%減ると予測。また、値上げ前の“駆け込み需要”に備え、通常の倍近いたばこを生産している。

   ◎

 「たばこ屋の看板を見ると、ついつい……。でも、禁煙補助剤と同僚の励ましのおかげで、この2日間は何とかゼロで通しています」。専門医の指導や薬の処方が保険で受けられる「禁煙外来」を備えた中央区の「中央内科クリニック」。主治医の村松弘康副院長の問いかけに、会社員の男性(55)が笑顔で答えた。
 男性は約35年前から吸い始め、1日30本、飲酒すると40本を超えた。健康のためにも今回こそは禁煙を成功させようと思っている。
 同クリニックでは、禁煙外来の受診者は毎月100人程度だったが、4月以降は一気に3割増しに。今月は約2週間で150人を超えたという。禁煙治療に詳しい東京農工大の阿部眞弓准教授は「たばこの依存症に悩む多くの人たちにとって、値上げが禁煙に踏み切るきっかけになっているようだ。自由になるお金の少ない大学生らへの影響は特に大きいだろう」と話す。

   ◎

 「たばこ増税迫る さあ今からはじめませんか」。大田区の「ツルハドラッグ梅屋敷店」では先月から、ニコチンガムなど禁煙関連商品を集めたコーナーを設置した。商品を手に取る人が増えているといい、同店では「値上げ直前や実際に値上げされた後は、もっと購入する人が増えるのではないか」と期待している。

2010.9.15 記事提供:読売新聞

ソシオエステが活きる力を与える。ソシオデンタルもあり?

ソシオエステティック 心を癒やす
認定施術者が医療・介護施設訪問

エステのサービスを通して、高齢者や病に苦しむ人々の心を癒やす「ソシオエステティック」という分野がある。エステティシャンが医療、介護、心理学などの知識を身につけ行うもので、認定ソシオエステティシャン約30人が、病院や介護施設で活動を始めている。20日の敬老の日前後には、その精神を生かし、約1000人がエステのボランティアを行う。【田村佳子】

◇顔や手にケア、化粧…自尊心高め、生活にハリ
 ソシオエステティックは約30年前にフランスで始まった。通常のエステが美やリラクセーションを目的とするのに対し、ソシオエステは社会的困難を抱える人に行い、その「生活の質(QOL)の向上」を目指すところが違いだ。
 「美や癒やしの提供だけではソシオエステにはならない。癒やしを通して自尊心を持たせたり、不安を解消するのが目的」と資格認定を行う社団法人「日本エステティック協会」の久米健市副理事長は説明する。
 女性だけでなく男性も対象で、手のケアや顔のマッサージ、化粧やマニキュアを施す。フランスでは拒食症女性の医療チームにソシオエステティシャンが加わったところ、「自分は美しい」という自覚を得て病気を克服できた例もあるという。
 国内のエステティシャン約1万8600人が加盟する協会は、養成講座も開いている。実務経験5年以上の認定エステティシャンが200時間の講義と20日間の実習を受ける。認知症、介護概論、がん、終末医療とケア、精神医学にストレス対応--などのほかにもコミュニケーション技術や、通常は施術を控える乾燥肌の人へのエステ技術なども身につける。

 東京都世田谷区の介護老人保健施設「ホスピア三軒茶屋」では、70〜90代のデイケア利用者がソシオエステを受けている。
 脳梗塞(こうそく)で手がこわばっていた男性は、ハンドケアを受け「手が伸びた」と喜んだ。おしゃれなど考えたことがなかったという70代の男性は、エステティシャンと話して自分に合う色があると気づき、妻任せだったのに自分で洋服選びをするようになったという。つけてもらったマニキュアがはげかけても大事にしている女性もいる。
 介護主任の西尾悦子さんは「すてき、きれいと言われたい気持ちは年を取っても変わらないのだと思う。利用者は良い評価をされなくなる年代。単純に肯定的評価を受けること、きれいになるのを楽しむことが生活のモチベーションや心の免疫力を高めているようだ」と話す。
フランスでは薬物中毒者の治療施設、児童福祉施設、刑務所でも活動し、ソシオエステだけで生計を立てる人もいるという。一方、日本ではまだ活動の範囲も施設も限られており、美容サロンに勤務しながら、定期的に病院などを訪問するのが一般的。エステティシャンへの報酬は施設が支払うため、理解が進まないと導入に結びつかないのが課題だ。
 久米さんは「介護と医療現場以外にも活動を広げるのが理想だ」と話している。

 敬老の日をはさんだ15〜23日は、約1000人のエステティシャンとエステティシャン志望の学生が、北海道から沖縄まで28都道府県の老人ホームなどでエステを行う。化粧による高齢者ケアは近年注目されているが、エステを全国一斉に行うのは初めて。主催する協会は「手の温かさを通した心の触れ合いで、ひとときの癒やしと心のゆとりを提供したい」という。

◇人に触れられる幸せ、味わってほしい
 ソシオエステティシャンの伊藤久美子さんと橋本径子さんに話を聞いた。伊藤さんは病院や介護施設で、橋本さんは精神科病棟で活動している。
 橋本さんは「つめをみがいてあげた男性は、何度となく眺めて人にも見せていた。人に触れてもらう幸せを味わっているのが伝わりうれしい」という。
 伊藤さんは「施設や人によってニーズが違い、健康上の問題もあってできる施術が限られているのが難しい」と話す。
化粧するより、ただ話を聞くことの方が大事な場合もある。「会話をするためだけに施術を受けているのかなと思う人もいる。医療スタッフと違う立場だから話せることもあるようで、打ち明け話は多い」と橋本さん。
 サロンのようなリクライニングシートもないが「化粧水とクリームさえあればエステはできる、と思うようになった。貢献の場を広げたい」と伊藤さん。青少年更生施設や母子寮でも活動したい、と夢を膨らませている。

2010.9.14 記事提供:毎日新聞社

問診不充分で、患者死亡、賠償命令5600万

初診開業医に賠償命令

地裁 患者死亡「問診が不十分」
 髄膜炎の症状を見過ごされ、治療の遅れから転院先で死亡したとして、境港市の男性会社員(当時40歳)の両親が同市内のたけのうち診療所(閉鎖)の50歳代の男性医師に慰謝料など約7500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、地裁米子支部であった。村田龍平裁判長は「十分な問診と、設備の整った医療機関への移送を怠った過失があった」として、医師に約5600万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は2001年12月、高熱や嘔吐(おうと)の症状を訴えて初めて同診療所で受診。解熱剤などを処方されて帰宅したが、症状は悪化し、翌日に救急搬送された病院で細菌性髄膜炎と診断された。その後、意識が回復しないまま、転院先の病院で05年1月に多臓器不全で死亡した。
 診療所では、感染症検査などを外部に委託しており、村田裁判長は「髄膜炎と断定することは困難だった」としたうえで、「髄膜炎を疑って特有の症状を確認するなどし、病院での検査を勧めていれば死亡は避けられた」と判断。一方で「過失がなくても後遺症が残った可能性がある」として損害額の3割を減じた。

 原告側の高橋敬幸弁護士は閉廷後「初診患者に対する問診の不十分さと死亡との因果関係が認められるのは極めて珍しい。初診の重要性を開業医に投げかける判決だ」と話した。
 被告側の川中修一弁護士は「短時間の診療で髄膜炎と見抜くのは難しい。医師と相談し、控訴を検討する」としている。

2010.9.14 記事提供:読売新聞

電子たばこはどう?過渡的なもの?

電子たばこを吸ってみた 雰囲気は近く
増税追い風?/品質、問題の製品も


◇ニコチン含まぬ、液体霧状に…雰囲気は近く/「使い切り」紙巻きとほぼ同額…増税追い風?/
禁煙効果、WHO「疑問」
品質、問題の製品も

 10月1日からのたばこ増税を前に、禁煙・減煙補助グッズが人気を集めている。中でも数年前から登場した「電子たばこ」は、大手コンビニやスーパーなどが取り扱いを拡大するなど、目にした人も多いのでは。「禁煙用品として効果がない」、「一部商品はニコチンを含有し薬事法違反の可能性がある」などの指摘もあるものの、懐具合が気になる喫煙者のひとりとして、電子たばこ事情を調べてみた。【喫煙歴15年・山田泰蔵】

 「意外に安いと思って手が伸びた。気晴らしくらいになればいい」。今月初め、東京都江東区のコンビニで、同区の男性会社員(38)は初めて電子たばこを手に取った。約60本相当を吸える使い捨て式で980円。普段吸っている20本入り300円のたばことほぼ同じコストが購入の決め手になった。試しに一服。「雰囲気は味わえそうだな」と同僚の分も買い求めた。
 電子たばこは、本物のたばことは違い、たばこの形状をした電子機器。たばこで葉が詰まっている部分にはバッテリーが入っていて、吸い込むと先端のLEDランプが赤く光る。吸い口のカートリッジに入った液体が電気の熱で蒸気に変わり、吐き出すとあたかも紫煙をくゆらすようになる。国内では、ニコチンの含まれないものしか販売できない。

  08年ごろから、アイデアグッズ販売会社や飲食店運営会社、出版社などさまざまな業態が輸入して販売を始め、大手のコンビニ、スーパーにも広がった。既に数十万本以上が販売されたとみられる。
 ほとんどは中国製で1000円前後の使い切り式と、カートリッジを交換して繰り返し使える充電式がある。充電式は1500円程度から1万円を超える高級品までさまざま。08年末から試験販売を始めていた大手スーパーのイオンは、「お試しで購入しやすい使い切り式や、低価格の充電式が売れていている」という。今年6月から販売アイテムを20種に拡大し、全国展開を始めた。
 「売り上げは順調に増えている。たばこ値上げで今後も期待できそう」。5月から電子たばこの販売を始めたコンビニ大手、セブン―イレブンの担当者は話す。10月までに品数を増やして販売を強化する方針だ。

  電子たばこは「たばこ味」などの液体を気化させて楽しむものだが、国民生活センターは8月、調査した25銘柄中11銘柄のカートリッジの液体から微量のニコチンを検出したとするテスト結果を公表した。実際に吸い込む蒸気にニコチンが含まれているかは確認できなかったが「薬事法違反の可能性もある」と指摘した。
 電子たばこを販売するある事業者は「製造ラインで混入した可能性が高い」と推測する。世界中の電子たばこの大半を製造している中国では、欧米向けにニコチン入りも作っているため、同じラインで作った場合、混入の可能性があるという。
電子たばこの液体成分はほとんど公表されていないが、イオンは「独自の分析で問題のある成分が含まれていないかは確認している」という。
 業者の中には、国産化を進める動きもある。「“TOKYO”SMOKER」ブランドを展開するジェイ・エス・シー(東京)は「中国では、品質管理が難しい工場もあり国産化を選んだ」と話す。

  世界保健機関(WHO)は08年、電子たばこについて「禁煙効果には疑問がある」と指摘した。しかし、ある事業者は「1本でも2本でもたばこの代わりになれば減煙につながる」と強調する。
私も吸ってみた。たばこの雰囲気は楽しめる。自宅で吸えば、ホタル族を卒業できるかもしれない。



  本物のたばこではない電子たばこだが、公共交通機関では対応が異なる。
 日本航空は、JTが5月から販売を始めた無煙たばこの機内利用を認めているが、「電子たばこは蒸気が出る電子機器。飛行に影響を与える可能性は否定できない」と禁止の扱いだ。無煙たばこを禁止する全日空も「他のお客様の快適性を損ねる恐れがある」と使用禁止だ。
 一方、JR東日本は、「禁止まではしていないが、混雑した車内や他のお客様との兼ね合いで、自粛をお願いすることはありうる」。JR東海も「現場でお声かけさせていただくことがあるかもしれないが禁止はしていない」と、状況を見守る方針だ。ただ、JR北海道は「煙に見えるため、他の乗客に誤解を与える」と車内での利用は禁止。ただ、ホームでは禁止まではしていない。

◇来月値上げ…JT、売り上げ大幅減か

 日本の喫煙人口は近年減少の一途で、今年は2495万人。この10年で、約4分の1がたばこをやめた。今回のたばこ値上げは過去の値上げに比べて、増税幅が大きい。代表的な銘柄であるマイルドセブンは1箱300円から410円に、セブンスターは300円が440円になる。
 JTの試算では、販売本数は前年比25%減となる見通しで、「これまで経験したことのない大幅減」(同社IR広報部)になりそうだという。同社に電子たばこを売らないのかをたずねたら「われわれは、たばこを売る会社。禁煙につながるような商品は販売しない」とのことだった。

2010.9.10 記事提供:毎日新聞社

医療関係者は、心して業務に当たらなければ
権力の介入を許すことにる

「院内感染で捜査」、医療は再び崩壊の懸念
帝京大学病院のアシネトバクター感染事案、捜査開始を受けて

2010年9月9日 大磯 義一郎(医師・弁護士)

1.業務上過失致死傷罪で捜査
 9月3日、帝京大学医学部附属病院は、多剤耐性アシネトバクター・バウマニに同病院の入院患者46人が感染し、感染との因果関係が否定できない死亡患者が9人いると発表した。そして、そのわずか3日後の報道によると、「警視庁捜査1課が業務上過失致死の疑いもあるとみて、医師ら病院関係者らに対し任意の事情聴取を始めたことが6日、捜査関係者への取材で分かった」(産経ニュース2010年9月6日)とのことである。
 福島県立大野病院事件においては(当時の社会的情勢ですら)、2005年3月の県立大野病院医療事故調査委員会の報告書の公表から約1カ月後に捜査が開始された。本件の記者会見後わずか3日後に捜査が始まるという異例なスピードには驚きを隠し得ない。
 本件は、本質的には、感染症という我が国における4番目の死亡原因により患者が死亡したということであり、およそ刑事司法の介入が必要な事案とは思えない。ここ10年の過剰な司法介入により、医療崩壊が生じたことを忘れてはならない。世界一とされている我が国の医療提供体制を破壊することは、国民にとって最大の損失である。今一度、冷静に考える必要があるものと思料する。

2.過去の院内感染における業務上過失致死傷罪事例
 我が国において、過去、院内感染につき、業務上過失致死傷罪で有罪判決が出た事案として以下の3件が挙げられる(いずれも略式命令)。


(1)

2000年に起きた事案。看護師が、未滅菌のガラス製注射器を滅菌済みと誤認し、その注射器を用いて点滴混注を行ったところ、70歳女性患者がセラチア菌により死亡した。看護師二人が業務上過失致死にて有罪。

 

 

(2)

2002年に起きた事案。看護師が、へパロック用のへパリン加生理食塩水を作り置き、病棟に常温で保存したため、セラチア菌に感染し、6人の患者が死亡した。その責任を問われた病院長が業務上過失致死にて有罪となった初の事例。看護部長は起訴猶予になった。

 

(3)

2008年に起きた事案。(2)と同様、作り置きの点滴を経由してセラチア菌に感染し19人が死傷。院長が業務上過失致死傷罪で有罪。

 

 

 これらの案件を業務上過失致死傷罪とすべきか否かは論点となるものの、以上を見れば明らかな通り、少なくとも何らかの直接かつ具体的な行為により患者に菌を感染させたという行為がなければ、業務上過失致死傷罪の実行行為とはされていない。
 今回の帝京大の件については、現段階では詳細は明らかでないが、報道によると、保健所に報告した時期が遅かったことが問題点として指摘されている。しかるに、仮に報告義務があったとしても、それは単なる行政への「報告遅れ」であり、疫学上有用な報告ではあるかもしれないが、本件患者の感染、死亡に影響を与えるとは思われない。

3.院内感染はなくなり得ない
 そもそも、昨今の報道を見るに、「院内感染」、すなわち「病院の過失」のような誤解が生じていることは非常に問題である。
今回問題となったアシネトバクター・バウマニもそうであるが、病原菌は院内、院外を問わず、至る所に存在する。そして、病院は、食品工場などとは異なり、不特定多数の人が常に出入りする場所であるから、それらが人から人、人から物、物から人と転々としていくことを完全に防ぐことは不可能である。
 だからといって、院内感染対策が無意味だということは決してなく、院内感染の可能性を減らすことは、重篤な患者の生命を救う上で非常に重要であることは当然のことである。しかし、ここで注意しなければならないのは、医療関係者の不断の努力により、院内感染を「減らすこと」は可能であったとしても、院内感染を「なくす」「ゼロにする」ことは不可能であることを理解しなければならない。
 本件を含め、院内感染事例を報道する際、「院内感染により」という言葉を、「過失により」と同義として用いているのではないかというきらいがある。「院内感染がなくなったら」という希望を持つことは当然であるが、その期待に反したら処罰するというのは、もはや文明国の所業とは思えない。出産の安全神話が産科医療を破壊したのと同様、院内感染撲滅神話が医療安全を破壊しかねないことを危惧する。

4.おわりに
 年間76万人の患者が、病院内において、医療関係者の真摯な努力にもかかわらず死亡している。医療関係職の特殊性とはまさにこの点にあり、医療関係者は、業として、人に対し侵襲を加え、業として人の死に関与しているのである。
 すなわち、業務上過失致死傷罪における、人の死傷という結果、その因果の流れに介入する行為は、まさに医療関係者の業そのものであり、その介入行為が、何らかの注意義務違反と評価されさえすれば、犯罪が形式上成立してしまうのである。この医療関係職の特殊性から、他の職種と区分けすべきという議論が出てくるのである。
 国民にとって、通常の業務をしているだけで、いつでも逮捕・勾留され得るという威嚇力は、絶大である。そのことは、裁判の結果、無罪になろうと国民にとっては何らの関係もない。
 院内感染の防止に向けていくら努力しようが、結果が悪ければ、捜査一課に取り調べを受けるというのでは、医療安全が崩壊するのは火を見るより明らかである。大野病院事件、杏林大学の“割りばし”事件、東京女子医大事件と、業務上過失致死罪に問われたものの、繰り返される無罪事件の裏で、日本の医療供給体制が崩壊の一途をたどったことを学習しなければならないと考える。

体内にワイヤ忘れ患者死亡 業過致死容疑で書類送検へ
2010年9月9日   提供:共同通信社
 心臓付近へのカテーテル手術で使った金属製ワイヤを体内に置き忘れるなどし、患者の男性(56)=当時=を死亡させたとして、岐阜県警は8日、業務上過失致死の疑いで、手術を担当した木沢記念病院(同県美濃加茂市)の男性医師を9日にも書類送検する方針を固めた。捜査関係者が明らかにした。
捜査関係者によると、患者の男性は直腸がんの摘出手術を受け、昨年9月、抗がん剤などを注入するためのカテーテルを、心臓付近の静脈につなぐ手術を受けた。
 手術では金属製ワイヤが使われたが、男性医師は誤ってワイヤの一部を回収しなかった。手術後に何度かエックス線写真を撮影した際も、置き忘れに気付かなかったという。
患者の男性は今年3月、容体が急変し死亡。病院から連絡を受けた県警が調べたところ、体内からワイヤの一部が見つかった ほか、ワイヤが心臓に突き刺さっていたことなどが分かった。
 同病院は「担当者が不在のためコメントできない」としている。

リケッチア症 ツツガムシ、マダニから感染
高熱、発疹特徴

◆リケッチア症 ツツガムシ、マダニから感染。高熱、発疹特徴。

 ◇はしかと間違い、注意 治療遅れると危険 発症前の行動、医師に説明を
 細胞の中でのみ増殖する特殊な細菌の仲間「リケッチア」。これを持つツツガムシやマダニにかまれることで感染するリケッチア症は、高熱が出て発疹(はっしん)が現れるなどが主な症状で、はしかや風邪と間違われやすい。適切な抗菌薬で治療ができるが、治療の遅れなどから毎年のように死者が出ており、注意が必要だ。

ツツガムシ写真:Wikipedia→

 日本で感染する主なリケッチア症は、ツツガムシが媒介するつつが虫病と、マダニが媒介する日本紅斑熱の二つ。
国立感染症研究所(感染研)の安藤秀二・ウイルス第1部第5室長によると、両疾患とも発熱、発疹、刺し口(かさぶた)があることが主な症状だ。潜伏期間はつつが虫病が5〜14日、日本紅斑熱が2〜8日で、39度前後の高熱が出る。発疹は、つつが虫病が胴体から腕や脚に広がり、日本紅斑熱は手足に現れることが多いという。刺し口はツツガムシの場合1センチほどで、マダニの約5ミリより大きいとされる。

 リケッチアの保有率は両方とも1%を超えることはないと推測されている。ツツガムシは幼虫時(体長0・1〜0・2ミリ)に一度だけ、マダニは幼虫(1ミリ)、若虫(2〜3ミリ)、成虫(3〜4ミリ)と成長していく過程で1回ずつ動物の組織液や血液を吸い、その時に人がかまれると感染する。各地の山林や草原、地表面に異なる種類が生息し、発生時期は異なる。

 大原総合病院付属大原研究所(福島市)の藤田博己・主任研究員によると両疾患とも重症化することがある。リケッチアは血管壁の細胞に入り込んで増殖し細胞を破壊する。それを修復するために血小板などが集まって体のあちこちで血管内凝固がおこり、最悪の場合は多臓器不全で死亡することもある。

 国の調べでは、つつが虫病の報告は毎年300〜800件で1〜3人の死者が出ている。今年も岩手県と新潟県で1人ずつ死亡が確認されている。日本紅斑熱は毎年40〜140件ほど報告があり、死亡も01、04、05、06、08、09年に1人ずつ、今年も1人報告されている。

 リケッチア症は適切に診断されないことが問題と指摘されている。一部を除いて刺された時に痛みもかゆみも感じないため患者の説明からは熱の原因が想定しにくいことや、経験がない医師はリケッチア症を疑うことが少ないためだ。
 秋田県では08年8月、発熱が続いた当時17歳の女性がつつが虫病と診断されて適切な治療を受けるまでに5カ所の医療機関を回った。女性は4カ所の医療機関で抗菌薬や解熱剤を処方されたが症状が改善されず、秋田厚生連平鹿総合病院(秋田県横手市)を受診。そこで診察した国生泰範・第2内科循環器科医長がつつが虫病を疑い、同病に有効な抗菌薬を投与。一時40・1度にまで上がった熱は36度台まで下がり、女性は3日後に退院した。
 秋田県健康環境センターの検査で女性は、つつが虫病と確認された。発熱の9日前に河川敷に釣りに行っており、そこに生息していたアカツツガムシに刺されたとみられる。同センターの佐藤寛子研究員によると、同県内では夏場に発生するアカツツガムシが原因のつつが虫病の発生は15年ぶりだった。佐藤研究員は診断が遅れた理由について「医師たちが、この時期につつが虫病はないと思い込んでしまったのだろう」と指摘する。

     *

 リケッチア症にかからないためには、どうすればいいのか。大原研究所の藤田主任研究員は「外から帰ったら早めに風呂に入ることが効果的」と話す。ツツガムシもマダニも通常は体にくっついたらすぐに体液を吸うのではなく、吸いやすい場所を探して体中を動き回るためだ。感染研の安藤室長は「患者は症状が出る前の行動を医師に伝え、医師はリケッチア症が特定地域の話ではないということを意識してほしい」と呼びかけている。【藤野基文】

2010.9.8 記事提供:毎日新聞社

新たに2病院で多剤耐性菌 11人感染、3人死亡か
警視庁、任意聴取へ

 東京都世田谷区の有隣病院で今年2月以降、患者8人から多剤耐性アシネトバクターが検出され、4人が死亡していたことが8日、東京都への取材で分かった。うち2人は死亡と感染との因果関係が否定できないという。

  板橋区の東京都健康長寿医療センターでも今年2月以降、患者3人から多剤耐性アシネトバクターを検出。このうち2月に帝京大病院から転院していた男性患者(76)が6月に肺炎で死亡した。感染との因果関係は不明。これとは別に多剤耐性緑膿(りょくのう)菌の院内感染の疑いもあるという。
  帝京大病院の説明によると、都健康長寿医療センターで亡くなった男性は、帝京大病院に救急搬送され約1カ月入院。転院約2週間前の肺炎の検査では、耐性菌は陰性だったが、転院時は検査をしていなかった。
 都は医療法に基づき、7日に有隣病院に立ち入り検査。8日午後にも東京都健康長寿医療センターに立ち入り検査する。警視庁は両病院の医師から任意で事情を聴く。

  都によると、有隣病院からは6日、世田谷保健所に連絡があった。8人は59〜100歳の男女で、2月に1人、5月に5人、6、7月に1人ずつから菌を検出。5月から8月にかけて4人が死亡、うち2人の死因は原疾患の可能性が高い。
  5月の4人と6月の1人は同じ病棟の入院患者。都は院内感染の疑いがあるとみているが、遺伝子検査が実施されていないため断定できないという。
  有隣病院によると、菌を検出した患者2人は転院してきた直後だった。橋本康男(はしもと・やすお)院長は8日に記者会見し「院内感染ではないと判断し報告しなかった。高齢者が多い病院で、あらゆる抗生物質を使っており、菌が出てくるのは当然」と話した。
 東京都健康長寿医療センターからは7日に都に報告があった。2月から8月までに男女3人から菌が検出され、2人は8日間、同じ病室で入院していたことから、都は院内感染とみている。

※有隣病院
社会福祉法人「東京有隣会」が経営する民間病院。現在は高齢者医療・看護、リハビリテーション治療に力を入れ、近隣の特別養護老人ホームとも提携している。診療科目は14科。病床数は一般50床、療養201床の計251床。

2010.9.8 記事提供:共同通信社

グローバル化で国内侵入
スーパー耐性菌、続々出現

 多くの抗菌薬が効かない多剤耐性菌。帝京大病院で9人の死亡が発覚したアシネトバクター菌の集団感染に続き、独協医大病院で国内初のNDM1遺伝子を持つ大腸菌が検出された。ほとんどの抗菌薬が効かない「スーパー耐性菌」はなぜ生まれるのか。

 「やはり日本まで来たか」と話すのは、耐性菌に詳しい国立国際医療研究センターの切替照雄(きりかえ・てるお)部長。「耐性菌が広がるのは医療施設だが、そうした菌でさえ、グローバル化で国境を越えて世界中にあっという間に広がる。特に医療関係者は院内で注意が必要だ」と、医療施設での監視の重要性を訴える。

 切替部長は「基本的には抗菌薬の使用が原因で耐性菌は生まれてしまう」と指摘する。大腸菌もアシネトバクターも、もともとはありふれた菌。通常は抗菌薬を使えば死ぬ。だが薬の効果から逃れるように変異したり、薬の効かない細菌だけが生き残って耐性菌が出現すると考えられる。新たな抗菌薬が登場しても、それに対する耐性を獲得してしまうため、スーパー耐性菌出現は避けがたいことだった。

 NDM1は、抗菌薬の成分を分解する酵素を作る遺伝情報が「プラスミド」と呼ばれる環状の遺伝子にある。プラスミドは菌の間で比較的簡単に受け渡され、赤痢菌など大腸菌に近い病原菌が薬剤耐性を獲得する可能性も指摘されている。

 スーパー耐性菌対策について、切替部長は「病院内で菌が広がっていないか、とにかく調べることが大事」と強調する。見つかれば、院内で拡大予防策を徹底し、抗生物質は適切に使い、地域の病院間で多剤耐性菌の情報を共有することが必要で、そうしたことを繰り返すことが何よりも重要だという。

 切替部長は「NDM1に関しては、一般の人もインドなどの現地で不必要な医療を受けないようにすることが大事だ」と話している。

2010.9.7 記事提供:共同通信社

J&J使い捨てコンタクトで被害、使用停止を

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は6日、使い捨てコンタクトレンズ「ワンデー アキュビュー トゥルーアイ」の利用者から健康被害の報告が1日までに1617件あったと発表した。

 報告には視力低下を招く恐れのある角膜潰瘍も5件含まれていたという。J&Jは、報告のあった商品の自主回収を進めており、回収対象の商品の使用をやめるように呼びかけている。

 J&Jによると、対象となるのは、アイルランドの工場で製造され、4月27日-8月19日に販売された商品の一部で、国内には約10万箱が流通した。製造工程の不具合で、レンズ用の洗浄剤が目に有害な濃度で残存していたという。健康被害の報告は、角膜潰瘍のほか、角膜のキズ、目の痛み、充血など多岐にわたる。

2010.9.6 記事提供:読売新聞

NDM1、週内に全国調査 多剤耐性菌の状況把握へ
厚労相、対策強化の方針

NDM1、週内に全国調査 多剤耐性菌の状況把握へ
厚労相、対策強化の方針

 長妻昭厚生労働相は7日の閣議後記者会見で、「全国の多剤耐性菌の把握強化に努めたい」と強調、「NDM1」という酵素をつくる遺伝子を持つ新たな耐性菌の全国調査を週内にも始める考えを示した。また多剤耐性アシネトバクター菌を国への報告対象にするよう、早期に制度を見直す方針を明らかにした。

 独協医大病院で初めてNDM1をつくる菌が確認されたことや、帝京大病院でアシネトバクター菌が原因の院内感染が発生したことを受けた。

 帝京大病院には、今週中に国立感染症研究所の専門家チームと東京都が入り、院内感染対策を調査する見通しも示した。その結果を受けて、全国の院内感染に関する新しい対応策を検討したいとしている。

 NDM1の調査方法は今後決めるが、関係者によると、疑いのある患者の検体を同研究所で高精度に解析。第2、第3の確認例が出た場合、独協医大での検出例との関連なども明らかにしていくとみられる。

 医療機関では、感染症の患者から採取したたんなどの検体で抗生物質が効くかどうか試験をしている。この試験で複数の抗生物質に耐性を示す大腸菌や肺炎桿菌(かんきん)などが見つかった場合、同研究所に送ってもらい、NDM1をつくる遺伝子を持つかどうかを調べる方法が有力という。解析には1週間程度かかる見通し。

 現在は感染症予防法に基づく耐性菌の報告は5種類に限られ、アシネトバクター菌は入っていないが、長妻厚労相は「報告の範囲、種類の見直しの必要があるという問題意識を持っている」と強調。感染症の専門家による部会を早期に開催し、報告対象の菌や、報告を求める病院をどうするかなどを検討してもらう方針。

 政府は7日、官邸で仙谷由人官房長官ら関係閣僚の会議を開催し、長妻厚労相が全国調査の方針などを報告。情報共有を深め、連携して対処することを確認した。

2010.9.7 記事提供:共同通信社

NDM1、週内に全国調査 多剤耐性菌の状況把握へ
厚労相、対策強化の方針

 帝京大病院(東京都板橋区)で発生した多剤耐性菌アシネトバクター・バウマニによる院内感染で、09年8月にこの菌が検出され感染1例目とされた患者には、入院直前の渡航歴などがないことが分かった。国内で過去に公表された同菌の感染事例4例のうち3例は、海外の病院から転院してきた患者が持ち込んだとみられるが、今回は国内で感染した可能性が高い。専門家は「国内で広まっていることを前提に、感染拡大防止を図るべきだ」と訴えている。

 帝京大病院によると、1例目とされるのは悪性リンパ腫で入院していた男性(72)。09年11月に死亡し、感染と死亡の因果関係はないと判断された。感染経路は調査中だが、「海外との関連を裏付ける情報は得られていない」という。

 同菌を巡っては福岡大病院で09年1月、韓国の病院から転院した患者を発端とする院内感染が発覚。同年7月には千葉県船橋市の市立医療センターで、20代の患者から抗生物質が全く効かない超多剤耐性菌のアシネトバクターが検出された。今年も愛知医科大病院で59歳男性から検出。それぞれ米国やアラブ首長国連邦から転院してきた患者で、海外で感染した可能性が高い。

 一方、10年2月以降に24人が感染した藤田保健衛生大は、感染経路を調査中という。

 賀来満夫・東北大教授(感染制御学)は「アシネトバクターは既に国内で広がっていることが否定できない。それを踏まえて監視体制を強化し、感染拡大の防止策を徹底すべきだ」と指摘している。【佐々木洋、福永方人】

2010.9.7 記事提供:毎日新聞社


NDM1、週内に全国調査 多剤耐性菌の状況把握へ
厚労相、対策強化の方針


 帝京大学病院などで多くの抗生物質が効かないアシネトバクターの感染が相次いだ問題で、長妻厚生労働相は7日、医療機関に多剤耐性アシネトバクターの感染例の報告を義務づける考えを明らかにした。
  また、国内で初めて感染が確認された新型の多剤耐性大腸菌についても、今週中に都道府県に通知を出して、感染実態を調査する。

  感染症法では、抗生物質が効かない細菌のうち、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)など2種類について、医師に報告を義務づけている。また、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)など3種類についても、大学病院などの指定医療機関に報告を求めている。しかし、多剤耐性アシネトバクターなどは報告義務がなく、実態把握が難しかった。
  長妻厚労相は、同日の閣議後記者会見で「感染症部会を招集し、専門家に報告範囲をどこまで拡大するか検討してもらい、全国の多剤耐性菌の把握強化に努めたい」と述べた。

  ただ、多剤耐性アシネトバクターの検出には特殊な培地を使った時間のかかる培養検査が必要で、すべての医療機関で実施するのは難しい。新型の多剤耐性大腸菌の場合は高度な遺伝子解析が必要になる。

2010.9.7 記事提供:読売新聞

実用車でなくてもいいの?
テスラスポーツカーEVにも324万も補助金

テスラ ロードスター がEV補助金対象に…324万円交付

米テスラモーターズは8月31日、『テスラロードスター』が日本政府が実施するクリーンエネルギー自動車等導入促進事業の補助金対象車種になったと発表した。テスラロードスターの車輛価格は1340万6400円で、補助金は324万円が交付される。

次世代自動車振興センターがおこなうクリーンエネルギー自動車等導入促進事業では、電気自動車の購入者を対象に補助金を交付している。補助対象車両は、新規登録車または新規届出車の電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車。

受付期間は、2010年度のスケジュールでは、4月1日から2011年2月8日まで、公募締め切りは5回に区分されているが、申請受付は連続して行われている。補助金は申請後、半年〜1年で支払われる予定だ。

《椿山和雄》

2010.9.1 記事提供:レスポンス

「オバマ改革から得られる日本の教訓とは」
米ハーバード大教授

日医・国際保健に関するセミナー、医療改革のカギはリーダーシップ

 日本医師会は8月30日、国際保健に関するセミナー「オバマ大統領の医療改革-日本への教訓」を開催した。講演したのは、米ハーバード大学公衆衛生大学院国際保健・人口学教授のマイケル・ライシュ氏(講演資料はこちらPDF:759KB)。ライシュ氏は、1983年に武見太郎・元日本医師会長が設立した「武見国際保健プログラム」のディレクターを長年担っている。

 ライシュ氏は、「オバマ改革から日本が得られる教訓は、具体的な政策内容よりも、政策決定プロセスにある」と指摘。オバマ大統領が医療改革法案成立に成功した秘訣として、(1)利害関係者との交渉(米国医師会や製薬業界などと早い段階で交渉)、(2)立法作業を議員に委任、(3)大統領の強力なリーダーシップ、(4)政策の成功事例(マサチューセッツ州では既に皆保険を実現)の活用、(5)戦略的妥協(すべてを解決しようとしない、皆保険ではなく2019年に94%に加入率を目指す)――の5つを挙げ、これらが日本への教訓になるとした。

 「日本の菅政権には、政治的生き残りと政策の空白というムードがある」とし、ライシュ氏は、菅直人首相のリーダーシップなどを疑問視しながらも、「Change is possible - 変化は可能」だとした。「それは、今日ここに集まっている方が、米国での教訓を生かして、日本で起こっている問題に取り組むと期待するからだ」(ライシュ氏)。

 「オバマ大統領の医療改革は歴史的偉業」

 ライシュ氏は、1996年にも日医で講演。その際のタイトルが、「挫折したクリントン政権の医療改革と日本への教訓」だった。クリントン大統領も含め、過去100年間に7人の歴代大統領が国民皆保険制度への移行を試みたものの、失敗に終わったと説明。実際には2019年までに94%の国民をカバーすることを目指すため、「皆保険」ではないが、オバマ大統領の医療改革を「歴史的偉業」と称えた。

 医療改革の中身は、「非常に複雑」(ライシュ氏)。2010年3月に成立した法律「Patient Protection and Affordable Care Act」は、連邦議会が作成した公文書だけでも955ページに及ぶからだ。要点は、(1)個人の医療保険への加入を義務化(同時に、低所得者向けのメディケイド受給資格の緩和なども実施)、(2)保険会社への規制強化、(3)医療制度の効率化(サービスの向上と質の削減)――など。

 (3)は、「メディケアを従来の出来高払いから、モデル事業として成果主義に基づく一括支払いに変える」(ライシュ氏)ほか、医療機関の連携の推進、中年層を対象とした地域ベースの健康増進事業の実施などを通じて進める。

 もっとも、全米の半数近くの州が、「医療保険への加入義務化」を憲法違反、もしくは連邦政府の権力乱用などとして提訴しているなど、法律が成立しても、その実行には様々な課題に直面しているという。「2010年11月の中間選挙の際は、共和党は、オバマ大統領と民主党への攻撃材料に使うだろう」(ライシュ氏)。

 「明確なストーリー、価値観はエビデンスになり得る」

 講演後の質疑応答では様々な質問が出たが、ライシュ氏が言う、「日本への教訓は、具体的な政策内容よりも、政策決定プロセス」という観点からの質問の一つが、「前回のクリントンの時は保険会社が強烈に反対したが、今回の改革をどう理解したのか」。

 ライシュ氏は、「オバマ大統領は、医療改革(Health Care Reform)ではなく、ヘルス・インシュアランス・リフォーム(Health Insurance Reform)という言葉を使った。政治的・戦略的に考え、米国医師会や製薬業界とは協力して、民間保険会社だけを敵にした。今回は、彼ら(民間保険会社)だけが反対した。敵がたくさんいれば負ける。それがクリントンの改革だったが、今回は違う。民間保険会社が反対しても、米国の将来のためには改革が必要だということをオバマ大統領は訴え、ギリギリで法案が成立した」と説明。左派の医療改革支持者からは営利保険をすべて廃止し、非営利の単一支払者制度(Single payer)を提案する声が上がったものの、オバマ大統領はその難しさを鑑み、民間保険会社の存在を前提に皆保険制度をどう構築するかという視点から改革を行ったとした。

 また元参議院議員の武見敬三・東海大学政治経済学部教授は、(1)政治的なリーダーシップは政治家ではなく、国民が作り上げるものではないか、(2)日本で12年間参議院議員を務めたが、利害関係者が多く、容易には政策決定ができず、最後は「勘と度胸」で決めていた。不必要に政治問題化させないことが重要であり、できる限り、科学的根拠に基づく政策決定をすることが必要ではないか――という点を質問。

 これに対し、ライシュ氏は、(1)については、「やや意見が違う。政治家がリーダーシップを発揮せず、誰が発揮するのか。また、日本医師会は、政治家がリーダーシップを発揮するのにどんな役割を果たすべきかを考える必要があるのではないか。これも簡単に結論が出るわけではないが、重要な問題。リーダーシップは、その時のその国の状況を反映していると言える」と回答。

 その上で、(2)に関し、次のように答えた。「武見氏とは少し意見が違う。政策決定は必ずしもエビデンスから出てくるわけではない。科学的なエビデンスは必要だが、利害関係から適当なエビデンスを作る場合もある。日本における医療改革を考えると、第三者の立場から政策立案する立場は、確かにもっとあっていい。オバマ改革でも科学的なエビデンスが重要だったのは事実だが、彼の熱心さ、コミットメントのほか、オバマ大統領の個人的な話があった。オバマ大統領の母が癌で、十分な保険が下りない可能性があるという話を何回も繰り返した。『私自身もこういう経験をした。それは今のアメリカでは許せない』と。非常にはっきりしているストーリー、価値観はエビデンスになり得る」(ライシュ氏)。


2010.8.31 記事提供:m3.com

「歯科治療難民」の根絶目指す、国立がん研究センター

日本歯科医師会との「がん患者歯科医療連携合意書」に調印


 国立がん研究センターは8月31日、記者会見を開き、日本歯科医師会と口腔ケアを中心とした地域医療連携に取り組むことを明らかにした。同日、日本歯科医師会と「がん患者歯科医療連携合意書」を調印した。

 第一段階として、がん研究センターが1都4県(千葉、埼玉、神奈川、山梨)の歯科医療機関と連携して、同センターで手術する患者に対し、口腔ケアを実施する体制構築を目指す。それに先立ち、今年9月から12月にかけて、がん研究センターと日本歯科医師会が協同で、計5会場で1都4県の歯科医療機関を対象に、「がん患者歯科医療連携講習会」を開催する。

 1都4県での第1回講習会終了後、2011年初めから連携を開始する。対象とするのは全身麻酔で手術を受ける予定の患者(年間全身麻酔患者数は約4000人で、うち9割が関東圏の患者)。(1)入院予約の段階で手続きし、手術前に、1都4県の連携歯科医療機関で口腔ケアを受けてもらう、(2)がん研究センターでの入院中の口腔ケアに関する情報提供を連携歯科医療機関が行う、(3)退院後も口腔ケアが必要な場合は、連携歯科医療機関が担当する――といった流れを想定している。

 これらの連携の成果を評価・確認し、その後、対象患者をがん化学療法・放射線治療前後の患者、がんの終末期の患者にも広げることを検討するともに、徐々に各地域のがん診療連携拠点病院と都道府県歯科医師会の連携に発展させ、2013年度をめどに全国に普及させることを目指す。

 同センター理事長の嘉山孝正氏は、「従来のがん医療では命を救うことに精一杯だったが、最近では療養生活の質を重視した治療が求められるようになった。口腔ケアにより、生活の質が向上するだけでなく、がんの予後も向上するなどのエビデンスがある」と説明した上で、次のように語った。「今回の調印は、がん研究センターが日本歯科医師会と公的に組織同士で連携し、事業に取り組んでいくことを示したものであり、この点に大きな意義がある。個人のつながりで連携したのでは、システムとして継続しない。がん研究センターは、全国のがん診療連携拠点病院のモデル病院になる義務も負っている。今回の歯科医療との連携事業がモデルケースとなり、全国的に連携を普及させることを目指している」(嘉山氏)。

 日本歯科医師会会長の大久保満男氏も、「『歯科医療は人々に生きる力を与える医療』であり、がん患者が生きる力の支えになれたらと考えている。従来は口腔合併症は仕方がないとする医師が多かったが、最近、きちんと口腔ケアを行うことにより、合併症が生じにいくことが分かってきた。また早期から患者が経口摂取できるようになれば、早期治療にもつながる」と、がん患者に対する口腔ケアの重要性を強調した。大久保氏は前静岡県歯科医師会長であり、静岡県立静岡がんセンターとの連携に取り組んできた。「大都会でこうした連携が可能なのか、今回のケースが極めて大きな試金石になる。大都市でできれば、全国で可能になる」(大久保氏)。

 連携に当たって、「がん患者歯科医療連携講習会」を実施するのは、「我々はがんという疾病について、正面から向き合い、口腔ケアを行う知識を全員が持っているわけではない」(日本歯科医師会常務理事の池主憲夫氏)ため。口腔ケアという技術自体は一般の患者を対象にした場合でも相違はないが、その背景にあるがんという疾患を理解し、「がん患者に対する共通認識を持つ場」(大久保氏)、それが講習会の位置づけだ。

がんの治療開始「前」からの口腔ケアが重要

 がん研究センターの資料によると、「がん治療には様々な口腔合併症が発症するとされ、一般的な抗がん剤治療を行う患者の40%、大量に強い抗がん剤投与を行う骨髄移植治療の80%、頭頸部がんの放射線治療では100%と報告されている(米国がんセンターの報告による)。また、頭頸部がん・食道がんのような侵襲性の大きい手術では、局所合併症や肺炎などが高率で起こるが、口腔ケアを適切に行うと、発症リスクを減らすことなどが可能という。

 国立がん研究センター中央病院の歯科受診患者数は、2008年6月1日から2010年5月末までの実績で、延べ5270人。その9割が口腔合併症への対応依頼だったという。しかし、歯科医師は1人、歯科衛生士は非常勤で0.8人にすぎない。「看護部も毎日のように口腔ケアを実施しているが、既に入院した時点から非常に口腔内に問題のある方もおり、限界はある」(国立がん研究センター中央病院頭頸部腫瘍科・形成外科科長の浅井昌太氏)。

 同院看護部長の丸口ミサエ氏も、「いったん悪くなってしまうと、改善は難しい。入院する前から専門の医師が指導することにより、『きちんと口腔ケアをしなけばならない』との意識で、患者さんが入院してくることが期待され、私たちが引き継いで口腔ケアを実施していくことが可能になる」とし、退院後も歯科医療機関がフォローすれば患者のメリットは大きいとした。

「歯科のマンパワー的にも十分に対応可能」

 歯科医療の連携体制を構築するのは、「口内不衛生に起因する口腔内合併症を回避するためには、がんの治療を開始する『前』から、口腔ケアを行うことが重要だが、マンパワー的にがん研究センターだけでは難しいため」(中央病院歯科口腔科の上野尚雄氏)。

 「がん研究センターで歯科医師を増員する予定は」との質問に、嘉山氏は「改革にはプライオリティーがあり、改革しなければならないことは山ほどある」としつつ、「明日から増やすとは約束はできないが、歯科医師を増やす優先度は高い」と回答した。

 とはいえ、上野氏が指摘するように、国立がん研究センターで「治療前から」口腔ケアを実施するのは容易ではない。その解決策が今回の連携体制の構築だ。日本歯科医師会の池主氏が示したデータによると、2008年10月の歯科診療所数は6万7779カ所、1施設当たりの歯科患者数は1日19.3人。がんで医療機関を利用する患者数は外来・入院合わせて1日29万7800人。池生氏は、「毎日30万人の方が、がん治療を受けており、その数は1歯科診療所当たり約4人。歯科医師はマンパワー的にも十分に対応できる」と、今回の歯科連携を全国展開することは可能だとした。

2010.8.31 記事提供:m3.com

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