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TOOTH WEAR 酸蝕症?知覚過敏で歯が凍みる。(あなたの歯ブラシで象牙質がすり減る!)大丈夫かな?あなたの唾液の緩衝能
 

Ph5.5以下の酸性状態ではカルシウムが
歯から溶け出します!!!

1.酸蝕歯テスト


あなたの歯について
Q1 あなたの歯が時間とともに徐々に黄色くなっていることに気づいていますか? はい いいえ
Q2 あなたの歯は一見健康そうでも、つるつるに磨かれたように見えませんか? はい いいえ
Q3 あなたの歯は少しガラスのように透けて見えたり、歯の先端部が削れたように見えませんか? はい いいえ
Q4 熱いものや冷たいものを飲んだ時、歯がしみませんか? はい いいえ
あなたの生活スタイルについて
Q5 あなたは力強くブラッシングしていると思いますか? はい いいえ
Q6 あなたは食生活にフルーツを多く取り入れていますか? はい いいえ
Q7 あなたは定期的にワインを楽しんでいますか? はい いいえ

上記酸蝕歯テストたは「はい」がいくつありましたか?

「はい」が1~2個のあなたは酸蝕歯リスク小
たとえあなたが酸蝕歯のリスクが低くても、酸蝕歯の原因となる兆候を知っておくとよいでしょう。
原因を知ることによって、将来酸蝕歯を効果的に予防することが出来ます。

「はい」が3~5個のあなたは酸蝕歯リスク中
あなたは酸蝕歯のリスクをやや受けています。

「はい」が6~7個のあなたは酸蝕歯リスク大
あなたは酸蝕歯のリスクを多く受けています。

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2.酸蝕 確かな事実


誰もが「酸蝕歯」になる可能性があります。老若男女を問わず、成人の6人に一人が「酸蝕歯」であると報告されています。
「酸蝕歯」とは、健康にいいとされる「酸」を含む飲食物を摂り続けることによって、酸がエナメル質を弱体化させ、歯を薄く弱くし、透明感のある白さを失って、白濁し、マイクロクラックという、小さなヒビが入ったり、歯ブラシや、歯ぎしりですり減って、露出した象牙質が酸で溶けて、更に歯ブラシで、凹んだ状態になり、神経が梗塞状態になったりします。


▼健康食品のパラドクス

 近年の天然歯寿命の延長
 歯科医療の進歩と口腔衛生の向上
 う蝕、歯周病の減少 毎食後の30分くらいでのゴシゴシ3分以上の歯ブラシケア
 最小の修復;抜歯の減少(MIに基づいた)

 近代の飲食物が歯にもたらすリスク
 “酸”を多く含む飲食物の広まり・味を良くするために使う、トロ味粘性材による歯への粘着
 炭酸飲料 柑橘系フルーツ お酢 ワイン

 飲食物由来の“酸”で、歯牙表層が軟化・溶解した場合
 特に食後の30分くらいしてからのブラッシング等で磨耗しやすいです
 これらはTooth Wearの原因のひとつになります  


酸蝕歯
↑クリックすると拡大します↑


飲料PHテスト

歯を溶かす危険なメニュー

クエン酸・フルーツ酸酢(酪酸)の入ったものでとろみのついたもの

(例)
フルーツグミ  酸味のアメ  酢コンブ

ほし梅(梅干)  酢イカ  フルーツゼリー

レモンガムなどフルーツガム

エビチリソース  黒酢ソース  酢豚

ピクルス  なます  マリネ




などなど

唾液の少ない方が現代は多く危険なのです。


知覚過敏

 

知覚過敏

酸味食品をとったら

phテスト

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▼エナメル質の脆弱化は、知覚過敏併発の可能性も
 ●象牙質知覚過敏は、酸蝕のどの段階でも併発する可能性があります
 ●初期段階において、時折痛みを経験するかもしれません
(患者さんが自覚症状について言及することは殆どありません)



そもそも、なぜむし歯はできるの?

私たちの歯は、毎日脱灰と再石灰化をくり返しています。食事やおやつでお口の中の酸性度が高まると、歯からカルシウムなどのミネラルが溶け出しますが(脱灰)、通常は唾液の作用で溶け出たミネラルが再び歯に沈着する再石灰化が起こります。食事の回数が多かったり、だらだら食べているなど
長時間酸性状態が続くと、再石灰化よりも脱灰が進んで、
初期ムシ歯に穴があいてしまいます。

そもそも、なぜむし歯はできるの?

そもそも、なぜむし歯はできるの?

知覚過敏

咬合力


知覚過敏
知覚過敏
知覚過敏

知覚過敏

知覚過敏



虫歯の新国際分類でC0が3っつに!
 

3MのCRを歯の先端に充填していきます
下の前歯の先端のエナメル質は40歳くらいまでに、歯ぎしりなどで磨り減り、象牙質が露出してきて、pHのひくい食事や飲料の常用、食後の強い歯ブラシによって、さらに溶けて、凹んで、虫歯になります。
WFでは、そういう部分も、3Mの自費用CRを用いて、ドイツ製の特殊なボンディング処理をして綺麗に修復します。耐久性は、10年保障です。

3MのCRを歯の先端に充填していきます
これらを顕微鏡下で拡大して形成することで、肉眼治療や拡大スコープ治療とは違う緻密な形成と充填が行えます。

第三の歯科疾患とは、何か?

この数年、Tooth wear (トゥース・ウェアー)がう蝕、歯周病に次ぐ第三の歯科疾患と言われて、注目されるようになっています。Tooth wearとは、咬耗,摩耗あるいは酸蝕によって歯の表面の正常な構造が失われた状態を言います。このうち、「酸による歯質の欠損」ただし「細菌が関与しない酸」によるものが酸蝕症です。

酸蝕症は、古くて新しい病気です。古くは職業関連の疾患でした。精錬所, メッキ工場など塩酸、硝酸、酢酸など酸を扱う工場の職業病として知られていました。変わったところでは、ソムリエや寿司職人にも酸蝕症があります。ソムリエは、ワインを口に含んでテイスティングをしますが、ワインは酸性飲料ですから酸蝕症のリスクにさらされるのです。水泳選手は、プールの水が消毒用の次亜塩素酸を含みますので、日に何時間もプールで泳ぐような選手にとっては深刻な問題になります。

かつて高齢者の歯が磨り減っていることは当たり前のことでした。酸蝕症も特殊な職業性の疾患でした。しかし高齢化が進み、年をとっても美しく健康でいたいという願望の高まりに対して、私たち専門家は発想の転換を迫られています。

「古くて新しい」の新しいほうは、飲食物由来、とくに清涼飲料やアルコール飲料の酸によってもたらされている問題です。酸蝕症の可能性の高い飲食物は、柑橘類、酸性飲料、サラダドレッシング、酢漬けの食品、りんご酒そしてワインです。ワインは、pH2.8 ~ 3.8で、じつはとても酸性度の強い飲料です。「ワインは糖と酸のバランスにおいしさの秘訣があります。おいしいワインは酸がピリッと感じるのです」。この他、知らずに口にしているものでは、酸性の内服薬(例・アスコルビン酸;ビタミンC)なども注意が必要です。

酸蝕症には、このような酸性飲食物による外因性のものと内因性のものがあります。外因性酸蝕症は、文字通り身体の外部からもたらされる酸によって生じ、内因性酸蝕症は身体の内部の酸によって生じるものです。

TOOTH WEAR(咬耗症) アブフラクションの処置


飲料PHテスト




酸蝕症

■pH (ペーハー)とエナメル質の脱灰
エナメル質は、pH5.5よりpHが低くなると溶け始め、高ければ守られます。エナメル質の脱灰は、酸との中和反応ですが、それは必ずしもpHだけによって決まるものではありません。

口腔内に唾液の中に溶け込んだ乳酸のHイオンがあれば、ハイドロキシアパタイトが中和反応を起こしてエナメル質は脱灰してしまいます。象牙質表面の処理に用いるEDTAはpH8にもなっていますが脱灰に使われます。同様に、口腔内のpHが5.5以上になったとしてもエナメル質は脱灰するというわけです。

■外因性の酸蝕症
図1は、アルコール飲料のpH値を示すものですが、赤ワインはpH3.8、ビールがpH4.3で、アルコールも歯には良くないのです。寝酒は歯には良くないことを是非、患者さんに伝える必要があります。

酸蝕症の疫学調査はあまり多くありません。しかし、子供の酸蝕症が増加していることは明らかです。そして、多くの子供の酸蝕症では、口蓋側に顕著に酸蝕が表れていますので、飲料の影響が無視できません。とくにコーラなど清涼飲料が問題でしょう。日本でも清涼飲料の消費量が増加していますので、子供の酸蝕症の増加が懸念されます。

■内因性の酸蝕症
内因性の酸蝕症の原因には、反復性嘔吐、胃酸の逆流、食物の反芻癖などがあります。反復性嘔吐は、拒食症など摂食障害がポピュラーですが、消化器疾患(消化器潰瘍、食道裂孔ヘルニアなど)、薬の副作用(抗腫瘍剤、鉄製剤、強心剤など)、慢性アルコール中毒や妊娠時のつわりなど、幅広い原因があります。

胃酸の逆流は、胃食道逆流症や十二指腸潰瘍によって起こります。胃酸のpHは1.0~2.0ですから、逆流症によって簡単に酸蝕が起こります。食道裂孔ヘルニアで食道裂孔がゆるんで逆流が増加します。俗に、ピロリ菌を除菌すると逆流症が増えると言われるようですが、これは除菌によって胃酸の分泌が正常になるために、食道裂孔ヘルニアをもっているような人の場合に逆流症が増えるもののようです。胃が元気になって、胃酸の逆流が増えるのですね。

Tooth wearと酸蝕症の診断

Tooth wearに関する問診では、次のことに注意します。

健康状態,患者の認識,進行状況に関する記録,
過去の歯科治療の記録,過去および現在の食生活パターン,
パラファンクショナルな活動,その他の口腔習癖

Tooth wearの診断におけるAbrahamsenの診断アルゴリズムは、とてもシンプルですが有用です。実例をあげて、ご紹介します。
Abrahamsenの診断アルゴリズムでは、歯質の失われている部位と形態に注目します。まず、「臼歯部より前歯部の酸蝕が顕著で、上下顎のすり減り面が一致」していればブラキシズムを疑います(図2a)。同じように[前歯部の歯質欠損が顕著で、上顎前歯部口蓋側に歯肉から移行的な歯質欠損がある」場合は、胃酸の逆流による酸蝕の疑いが濃厚です(図2b)。

酸蝕症

酸蝕症

酸蝕症

酸蝕症



反対に、「前歯部より臼歯部の歯質欠損が顕著で、臼歯部の咬合面にカップ状またはクレーター状の欠損がある」場合は、外因性の酸蝕症を疑います。カップ状またはクレーター状の欠損が、下顎第一大臼歯に顕著であれば炭酸飲料の摂取が濃厚です(図2c)。炭酸飲料は、頻繁な摂取のほか、口の中に炭酸飲料を溜めて長時間飲み込まない摂取習慣(soda/coke swishing)がとくに悪影響を及ぼします。このような歯質欠損が、上下顎の臼歯部咬合面に見つかれば柑橘類を皮ごと臼磨するような習慣(fruits milling)が疑われます(図2d)。

歯の唇側表面(とくに下顎犬歯と小臼歯)にサンドブラストしたような細かい歯質の消失が見られる場合は、歯磨き剤の誤用を疑うべきでしょう。その他、高齢者の口腔内では、咬耗に酸蝕が加わったものや、摩耗と咬耗に酸蝕が加わったものなど原因が混合したものが多く認められます(図2e,f)。

酸蝕症

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3.酸蝕歯の予防

唾液による毒消し



酸蝕歯を予防するためにできることはなんですか?
・酸性飲料は口の中で長く放置しておかない。ストローを口の奥に当てて飲むのも効果的。
・歯ブラシはかたいものは避けて、ブラッシングはゆっくり、優しくじっくりと。
・5分以上の長時間ブラシングはしない。食後はフロスを主体にやさしく歯の隣接面ケアをおこなう。
・食後は脱灰が進むので早め5分後までにフロスケアをおこない、バイオフィルムに菌を増殖させない早めのケアが大事。
・歯磨きクリームは使わず、液体かジェルで、フッ素配合の研磨成分の無いものを使う。お薦めはジェルコートFやバトラーCHX液です。
・定期的な歯科検診を受ける。また、心配であれば歯科医などの専門家に聞く。
・酸蝕歯に着目したハミガキで毎日2回を目安にブラッシングする。



日常生活の"酸"から歯を守る
2013年1月28日

日常生活の"酸"から歯を守る

酸蝕の影響から歯を保護する

酸蝕への関心が高まっています。
現代の食生活習慣では、エナメル質が飲食物による“酸"に触れることが多くなってきております。つまリ、tooth wearの最大要因である酸蝕"を引き起こす可能性が高まっています。1-4

初期段階の酸蝕は、鑑別が難しい場合があります

日常生活の"酸"から歯を守る


酸蝕の初期にみられる兆候:

①エナメル質が薄くなるにつれ透光性増大
②口蓋側のtooth wear
③特徴的なエナメル質の損耗
④咬合面の杯状の凹み


典型的な酸蝕の患者さんには、次のような食習慣や病歴があるかもしれません:

・酸性飲食物の大量摂取
・頻繁に酸を摂取する、あるいは長時間に渡る歯への酸の接触
・酸性薬剤の常用
・胃酸の逆流歴


どのようにして、患者さんを改善できるでしょうか?

最適化されたフッ化物の処方は、
酸蝕の患者さんにどのように役立つでしょうか?


同量のフッ化物を含む他の歯磨剤とは異なり、
フッ素トリートメントは酸蝕に着目し最適化された歯磨剤です。



日常生活の"酸"から歯を守る


エナメル質表層へのフッ化物の取り込みを促進することは、
in situ実験で、臨床的に証明されています:


・酸により軟化したエナメル質を再び硬くします(硬さの回復)6
・より硬い歯質を作り、酸によるダメージ、を防ぎます
6

酸により軟化したエナメル質を再び硬くします

• フッ素トリートメントは、最適化された処方で、酸により軟化したエナメル質の再石灰化を促進7
• フッ素トリートメントは、酸により軟化した歯質を再び硬くします
7


酸蝕からの影響を継続的に妨ぎます

日常生活の"酸"から歯を守る



エナメル質を徐々に硬くします8
・より硬い歯質を作り、酸によるダメージを防ぎます7

日常生活の"酸"から歯を守る



フッ化物は、酸により軟化したエナメル質を再び硬くさせ、酸蝕からの影響を継続的に防ぐことが証明されています5,7

すべてのフッ化物入り歯磨剤が同じではありません

最適化されたフッ素トリートメントの処方

フッ素トリートメントは酸蝕から歯を守るため、歯に取り込まれるフッ化物がより多くなるよう処方設計されています。約6000ppm

一般的には、どの歯磨剤も1000ppm同等量のフッ化物が配合されています

フッ化物は、歯磨剤中の他の成分と結合することにより、有効利用性(取り込まれるフッ化物の量)が低下する場合があります

フッ素トリートメントは 、取り込まれるフッ化物をより多く有効利用するため、エナメル質の強化につながります

歯磨剤に配合されたフッ化物量が同じであっても、同等の効果が得られるとは限りません

フッ素トリートメントの最適化された処方は、
酸により軟化したエナメル質を、
再石灰化し、再び硬化させることが確認されています



WFのフッ素トリートメントへ



日常生活の"酸"から歯を守る


酸蝕症から歯を守る

聖蹟サピアタワークリニック東京再生医療センター副院長
(元東京医科歯科大学歯学部臨床教授) 安田登

健康な歯質が何らかの事情で失われるTooth wear(トゥース・ウェアー)は、高齢化が進んだ現在、う蝕、歯周病に次ぐ第三の歯科疾患と呼ばれるようになった。Tooth wearは、咬耗、摩耗そして酸蝕によるものだが、原因はしばしば複合的である。そして注意すべきことは成長期の子供たちまでもが、いまでは広く「酸蝕症」に侵されているのである。かつては、精錬所やメッキ工場などで塩酸や硫酸などを扱う職人にのみ認められた職業性の稀な疾患だったが、酸性度の高い清涼飲料水などが常用されるようになって、酸蝕症は誰にでも起こる歯の疾患になった。接着歯学はじめミニマルインターベンションの提唱者として知られる安田登氏(元東京医科歯科大学歯学部臨床教授)が、「酸蝕症」の原因と診断について分かりやすく解説する。
(日本アンチエイジング歯科学会第5回記念学術大会の講演を元にまとめた)

酸蝕症の予防と対策

酸蝕症に侵された歯は耐酸性が低くなり、放置すると歯髄炎を生じることがあります。そこで、酸蝕症を認めた場合には、まず患者さんに予防を働きかけるべきですが、予防には①原因の除去と②歯質の強化の二つがあります。

■原因の除去
原因の除去とは、外因性酸蝕症の場合には、摂取する酸のコントロールです。すなわち、酸性食品を制限し、摂取の方法を改めます。内因性の酸蝕症では内科的疾患の治療を勧めます。歯質の強化は、フッ化物を応用してエナメル質の耐酸性を高め、唾液分泌を活発にして再石灰化を促します。

■歯質の強化
歯質の耐酸性を高めるためには、フッ化物の応用に勝る方法はありません。フッ化物によって、再石灰化と同時にエナメル質を構成するハイドロキシアパタイトがフルオロアパタイトに置き換わり、高い耐酸性を獲得します。さらに食物をしっかりと噛める状態に歯列を回復し、十分に噛む習慣をつければ、唾液分泌は活発になります。唾液による中和作用とともに、清掃後に唾液由来のぺリクルが歯の表面に被膜をつくれば、酸による侵食は進みません。

ここで、酸蝕症に対する予防効果の高い歯磨剤についてご紹介しておきます。酸蝕症は、まず知覚過敏によって自覚され、治療対象となることが多いでしょう。そこで知覚過敏を防ぐと同時に歯質の耐酸性を高めて、歯質を強化することができれば、酸蝕症の効果的な予防となり同時に知覚過敏への対処法になります。

シュミテクトPROエナメル(グラクソ・スミスクライン社、医薬部外品)は、薬用成分として硝酸カリウムとフッ素を含んでいます。
硝酸カリウムのイオンバリア効果で知覚過敏を防ぎ、フッ素イオンがエナメル質の再石灰化を促進します。C.S.Newbyの研究(JClin Dent,2006)によると、PROエナメル(F;1100ppm)はエナメル質へのフッ素の取り込みが、他のう蝕予防効果をうたった市販歯磨剤の倍に及んだとのことです。

シュミテクトPROエナメルの特徴
フッ化ナトリウム 酸により軟化した歯質も強化(硬さの回復)※
低研磨 酸により軟化したエナメル質表層のダメージを防ぐ
硝酸カリウム 知覚過敏で、歯がしみるのを防ぐ
pH7.1 (中性)
※Hara AT. et al. Comparative evaluation of fluoridated toothpastes using an in situ erosion
remineralization model.Poster presemnted at ORCA,LO-Skolen,Helingsor,Denmark,july4-7 2007
.

酸蝕症への対応

酸蝕症は、象牙質知覚過敏症を招き、歯質の欠損そして歯髄炎を引き起こします。

象牙質知覚過敏症とは、象牙細管が外部に開口し、細管内の象牙質液が冷気、冷水あるいは摩擦刺激によって移動して歯髄神経を刺激し、痛みになるといわれています。そこで、、象牙質知覚過敏症の永久的な対処法として考えられるのは、開口した細管を塞いでしまうことです。接着性高分子のコート材で開口部を塞ぐ方法が効果的です。コート材で処理した断面を電子顕微鏡で観察すると、象牙細管内にコート材が流れ込んで固まり、ワインの栓のようになっています。

では、酸蝕症が進んで、実質欠損になってしまったらどうすればいいでしょうか。この場合は、接着性レジンを用います。ボンデイング剤を塗布しただけで、知覚過敏には効果がありますが、歯質の実質欠損が大きければ、修復が必要になります。その場合は、コンポジットレジンでもよいでしょう。

つい先日も、歯が凍みると訴えて来院された患者さんが、重度の酸蝕症でした。この方は、健康のために毎日黒酢を飲んで、いらっしゃいました。食酢には酢酸のほかクエン酸、リンゴ酸、コハク酸等が含まれています。クエン酸はエナメル質のエッチング剤ですから、エナメル質が酸蝕するのは当然です。原因が分かれば、対処法は明確になります。酸蝕症の原因と対処法をご理解いただくことは、患者さんの大きな信頼につながるでしょう。

酸蝕症から歯を守る・・・まとめ
見逃してきた歯質の欠損が、第三の歯科疾患
蔓延する非う蝕性の「酸による歯質の欠損」--酸蝕症に注目
清涼飲料を長時間口の中に溜めるsoda swishing、
柑橘類を皮ごと噛みつぶすfruits millingを見抜くポイン卜
口腔内から推測することができますか?咬・摩耗と内因性と外因性の酸蝕症
酸蝕症の予防は、原因の除去と歯質強化の両面から
象牙質知覚過敏の予防と治療は、患者さんの大きな信頼につながる




酸蝕 早期管理の重要性

・酸蝕は、修復処置時などに歯科専門家によって発見されます
・酸蝕を最小にするための予防手段を患者さんが知るためには、
定期健診や適切な食生活指導、または口腔衛生指導が重要となります


酸蝕の臨床所見
質感や光沢 歯の表面性状や光沢が失われ、エナメル質が溶解するにつれて滑らかになる。 プロエナメル
ケア
キュア
エナメル質が薄くなるにつれ、色の濃い象牙質が透けて見えるようになり、歯はより黄みがかって見えることがある。
透過性 歯の切縁は、薄くなり、透けて見えるようになる。
構造 切縁部が脆弱化し、小さな亀裂や微小な破折が出現する。
形態 歯頸部には楔状欠損が、咬合面には陥凹が形成される。

知覚過敏はどの段階でも併発する可能性がある


初期段階
  • 熱い飲み物や冷たい飲み物を飲んだときにしみる。
  • 歯の表面が丸みをおびて見える。
  • 歯が薄くなり、下の象牙質が見えはじめることで、歯がわずかに黄色く見える。
中期以降段階
  • 歯がより濃い黄色に見える。
  • 歯の先端が透けて見える。
  • 知覚過敏がより重症になる。
  • 歯の表面に小さいへこみが現れる。
  • 昔の詰め物がいきなりとれてしまう。

酸蝕歯の影響は元に戻すことはできません。ほうっておくと、歯医者さんで
治療や予防などの処置をしてもらわなければならなくなることもあります。
最悪の場合、ダメージがひどければ歯を抜かなければならなくなることもあります。


プロエナメル プロエナメル
一見健康そうな歯も、実は「酸蝕歯」かもしれません。 歯に光をあてると「酸蝕」の影響でエナメル質が薄くなってみえます。健康な歯は、白濁したり、透けてしまうことはありません。

*実際の酸蝕歯判定には、専門家の診断が必要です。



痛みの原因究明と最新対処法

第3回 象牙質知覚過敏症に対するセルフケア

2012年8月10日
第一生命保険相互会社 健康増進室 主任歯科衛生士
深川優子

はじめに
本連載ではこれまで象牙質知覚過敏症のメカニズム、象牙質知覚過敏症の鑑別と話を進めてきましたが、それでは、実際に象牙質知覚過敏症と診断された場合、どのように対処していったらよいのでしょうか。第1回めでお知らせしたように、象牙質知覚過敏症の罹患率は歯科医師の認識よりもはるかに高いと考えられますが、その割には患者さんの大多数が適切な診断や治療を受けていないのが現状です。ゆえに私たち歯科衛生士も歯科医療従事者の1人として、象牙質知覚過敏症の誘発要因を理解し、適切なケア方法を選択し、患者さんに伝える努力をしなければなりません。今回は象牙質知覚過敏症の背景に潜む生活習慣をいかに捉え、適切なセルフケアへと導くことができるか、専用の歯磨剤や薬剤などにスポットを当てて解説していきます。

徹底解明!象牙質知覚過敏症


象牙質知覚過敏症におけるセルフケアの位置づけ
~スメア層の喪失防止~


象牙質知覚過敏症のケアは、象牙質表面に開口した象牙細管の封鎖、あるいは象牙細管内に沈殿物を生成 して、細管を狭窄あるいは閉塞し、「象牙細管内溶液の移動防止」を確実に行うことで効果をあげます。一般的にケア方法は、侵襲性と非侵襲性に分けることがでさます(表1) 1)。非侵襲性の処置は、患者さんに働きかけて、患者さん自身が取り組む方法(セルフケア)であり、侵襲性の処置は、歯科医師や歯科衛生士が行う処置(プロフェッショナルケア:次号に記載)になります。
象牙質知覚過敏症の発症には生活習慣が大きく関与しています。エナメル質を喪失し知覚過敏を生じさせる因子は、不適切なブラッシングや飲食であったり、薬剤であったりすることが多く認められます。また、侵襲性のケアは後戻りができない処置が多くあります。したがって、まずは生活習慣を改善するセルフケアへのアプローチを優先させることが大切です。
周知のことと思いますが、象牙質の露出がすぐに知覚過敏を生じさせるわけではありません。多くの場合は、象牙細管の入り口はスメア層により塞がれています。しかし、このスメア層は非常に剥がれやすいので、ブラッシングなどの機械的な刺激により除去されてしまうと、象牙細管が開口し、外来刺激が歯髄まで伝達されます。象牙質知覚過敏症の発症には、スメア層の喪失が重要なかかわりを持つことから、その予防を含むケアはスメア層の喪失防止が鍵となります。
これに対して、接着性レジンによる修復処置や、コンポジットレジン充填の前処理として行われる燐酸やクエン酸によるエッチング処理は、レジン成分を歯質に浸透させ、コラーゲン線維やハイドロキシアパタイトに絡めさせるために、スメア層を除去してしまいます。
このように非侵襲性のケアと侵襲性のケアとでは、スメア層に対する処置が異なります。
スメア層の喪失防止を念頭に置いたセルフケアは、まず誘発因子のコントロールを目的として、食生活ブラッシング方法の確認など、生活習慣に着目した保健指導を行い、その症状に合ったケアを選択します。

徹底解明!象牙質知覚過敏症


1 .誘発因子別の詳細と対策

誘発因子の概要は、前回(象牙質知覚過敏症の鑑別)でも述べましたが、今回は、想定される誘発因子をさらに詳しく検討し、その対策を解説します。

1 )外因性の酸蝕(Erosion)

① 食餌が原因の場合
スメア層は、pHの低い酸性の食品、果物、飲料によって容易に剥がされてしまいます。 pHの低い飲料としてはコーラやオレンジジュース、グレープフルーツジュース、白ワイン、赤ワインなど多くの種類があります。ヨーグルトやレモンのような柑橘系の果物もpHが低く、オレンジジュースに3分間さらされただけでスメア層は完全に剥がれ、象牙細管が露出し過敏な状態になることが確認されています(表2)2)。また、市販の洗口剤もpHが低いことから、スメア層を喪失させる可能性があります。ちなみにう蝕は、唾液のpHが象牙質pH6.0~6.8、エナメル質pH5.5以下で発症します。

② 職業牲の場合
「歯牙酸蝕症」も酸が刺激となり、露出した象牙質に知覚過敏を生じさせます。酸によって引き起こされる「歯牙酸蝕症」とは、法律的に歯科医師がかかわることが定められている職業性疾病に分類されており、製造業による酸性のガスや蒸気、ミストなどの発生が原因であり、細菌が直接的に関与することなく酸の化学反応によって、エナメル質に実質欠損を生じさせます。わが国では、職業性に発症したものを「歯牙酸蝕症」と称して、非職業性のものと区別していますが、外国の文献などではどちらも「Dental erosion」に一括されています3)。


徹底解明!象牙質知覚過敏症【対策】一般的に、外因性の酸による傷害は頬側に起こる傾向があります。食餌が原因でしみる症状が強い場合は、数日間、これらの食品の摂取を控えてもらうばかりでなく、ブラッシングするタイミングが重要となります。すなわちブラッシングは、酸により軟らかくなったエナメル質や象牙質を機械的に取り除くことになるため、飲食直後のブラッシングは禁忌です。また、pHが低い洗口剤を使用したブラッシングも控えた方がよいでしょう。
一方、歯牙酸蝕症のケアは職種の変更ができないために厄介ですが、対策としては食餌の場合と同じです。酸で攻撃された歯質を機械的に喪失させないために、またう蝕原因菌の感染を防ぐために、歯質の強化が必要です。口腔内のpHを中性に戻す、あるいは保つために、唾液の緩衝能を上げたり、飲料水を摂取したりするなどのくふうも必要です。
また歯磨剤もフッ化物入りで研磨剤非配合のものをお勧めしましょう。昨今の健康志向(黒酢、酢酸、クエン酸などが体によいなどの風潮)も口腔衛生においては、逆効果となるようです。

2 )内因性の酸蝕(Erosion)

一般的に内因性の酸による傷害は、口蓋側に起こります。摂食障害などの嘔吐が原因で胃酸が口腔内に逆流すると、スメア層を喪失します。
象牙質知覚過敏症に関係する摂食障害とは、大食して食べたものを排泄しない「むちゃ食い障害」といわれています。自己誘発性の嘔吐や下剤の不適切な使用などによって、胃の中の食物は胃酸とともに口腔内に排出されます。
胃酸のpHは大変低く(pH2:強酸性)、喫煙やチョコレートなど特定の食べものは胃の括約筋の働きを低下させるため、胃酸の逆流が起きやすくなります。また食後は、胃の内容物の量が多く、酸性度も高いため、やはり逆流が起きやすくなります。
アルコールやコーヒーも胃酸の産生を亢進させます糖尿病やモルヒネに代表される、強い鎮静作用を持つオピオイドの使用などによって胃に内容物が長くとどまっている場合も、逆流が起きやすい傾向があります。摂食障害は男性よりも女性、特に若い女性に圧倒的に多くみられます4)。

【対策】 摂食障害による象牙質知覚過敏症が疑われる際のインタビュー(医療面接)は、少なからずメンタルな部分に抵触することになるので慎重に行います。対策としては、喫煙やチョコレート、アルコールやコーヒーなどの刺激物を控えてもらいましょう。また嘔吐の後は、口腔内を中性に戻すために飲料水による洗口や摂取を勧めます。長期的な観察と医科的なアプローチを検討する必要があるかもしれません。

3 )薬剤の影響による知覚過敏

徹底解明!象牙質知覚過敏症①服薬により口腔乾燥を起こす場合口腔乾燥は酸蝕症の増加につながりますが、その主な原因は、加齢、ストレス、脱水(飲水行動制限)、口呼吸、乾燥した室内環境、そして薬剤などがあげられます。薬剤による唾液分泌低下作用は、利尿作用のある薬剤をはじめとして、体液の減少を促進させる薬剤や降圧剤、抗うつ剤、抗コリン剤(副交感神経遮断剤)など、その種類は大変多いようです5)。また、口腔周囲筋群の機能低下や筋弛緩を促す薬剤も、唾液腺の刺激を減少させるといわれています。副交感神経は唾液の分泌を促進し、交感神経は唾液の分泌を抑制する働きがあることから、前述の薬剤は交換神経に働きかけ、唾液の減少を引き起こします。

②薬剤の糖分による場合
最近、「チュアブル錠」や口腔内崩壊錠」ということばをよく耳にします。水なしで飲めて効果が早いな
ど、その手軽さから市場でも多く出回っています。口の中で浴けるとか、トローチなどのようにゆっくりと唾液で溶かすことにより作用させる薬剤は、苦くては服用できません。これらの薬剤に使用されている甘味料がう蝕や酸蝕の原因にならないか疑問に思うところです。

◆口腔内崩壊錠(Orally Disintegrating Tablet) :
英文表記に由来し、OD錠やD錠ともいわれています。口腔内で速やかに崩壊しますが、口腔粘膜
から吸収されることはないため、「唾液か水で飲み込むように」と適応上の指示があります。これらの製品には、薬用成分の他にアスパルテーム(ショ糖の約200倍の甘さを持つ人口甘味料)やクエン酸、乳糖や香料も配合されています。


◆チュアブル錠(Chewable) :
かみ砕くことができるという意味から、小児用の薬剤に多い形態で飲みやすいように味つけをした錠剤です。飲みやすさを改善するためにアスパルテームという代用糖や香料が配合されています。

◆トローチ効能:
効果として、咽頭炎、扁桃炎、口内炎、抜歯創を含む口腔の創傷の感染予防であることから、唾液により徐々に溶解させながら用いる薬剤で、「かみ砕いたり、呑み込んだりせずに、できるだけ長く口中に含んで有効成分が口腔内に長時間保たれるように」と適応上の指示があります。いずれも精製白糖やハチミツ、香料などが賦形剤として用いられています。
いずれにしても配合されている糖分が歯質に影響を与える可能性があります。使用にあたっては注意が必要です。

【対策】 唾液の減少は、唾液の保護作用、免疫機能、自浄作用を低下させます。保護作用の低下は、酸により障害を受けている歯質をさらに悪化させ、すでに象牙質が露出していた場合は、象牙細管の開口を促進させる要因となります。自浄作用の低下は、プラークを蓄積させるため衛生環境を悪化させます。対策はプラークコントロールと併行して、唾液の分泌促進や口腔を湿潤に保つことが重要です。患者さんには、キシリトールやヒアルロン酸を配合した口腔湿潤剤(スプレーやジェルタイプ)をお勧めしましょう。まめに水分を摂取してもらうことも重要です。また、歯質に影響を与える甘味料が配合されたチュアブル錠やトローチなどの常用も場合によっては、控えた方がよいと思われます。

4 )摩耗(Abrasion)による知覚過敏:不適切なブラッシング

機械的な刺激によるエナメル質の喪失は、通常のブラッシングや歯磨剤の使用では起こりにくいものです。もともとの歯質が酸蝕や咬耗ですり減っている場合に相乗効果として働きます。
もっとも知覚過敏を起こしやすい部位は犬歯と小臼歯の頬側歯頸部であり、利き腕とは反対の部位に力が入りやすく、また、歯間ブラシやデンタルフロスの誤った使用方法によってもエナメル質は喪失します。

【対策】 不適切なプラッシングが疑われるときは、日常使用している歯ブラシを持参してもらい、毛先の広がり具合や購入、交換の時期などを確認します。ブラッシング圧が強い場合は、歯ブラシは1ヵ月間も適正な形を維持できず毛先がすぐ広がってしまいます。さらに歯磨剤の量も確認します。興味深いことに、“もっとも知覚過敏を生じている歯はもっともプラークの少ない歯である"との報告もあることから2)、対処としてブラッシングテクニックやツールに主眼をおいたケアを勧めます。
歯ブラシの形状は、毛先がラウンド型、あるいは極細毛のもので、刷掃面はストレート、硬さも「ふつう」で構いませんが、硬くても軟らかくても象牙質知覚過敏症は生じるので、あくまでも力と動きのコントロールを優先しましょう。歯ブラシの把持もペングリップを意識し、磨くというよりも毛先で歯面をやさしく拭う感覚を伝えます。歯間清掃用具の使用にあたっては、サイズの選択が重要です。特に歯間ブラシにおいては、狭い空隙に無理に通そうとすると、隣接面のエナメル質を削ってしまいます(前ページ図1)。出し入れする際に、きついと感じるよりも少し余裕があるサイズを勧めましょう。

5 )咬合の不調和(Abfraction)による知覚過敏


楔状欠損の主な原因は、咬合によるエナメル質の損傷と考えられています。また、アブフラクションは、ブラキシズムやクレンチングが関連していることなど、ストレスから発症することを念頭におきます。

【対策】 楔状欠損部位のプラークコントロールが重要です。タフトブラシなどヘッドの小さい歯ブラシを部分的に使用します(前ページ図2)。しみる症状が強かったり、プラークコントロールが困難な部位や形態であったりする場合は、充填処置が必要になります。また、アブフラクションの根本的な治癒はセルフケアでは限界があることから、咬合の調整はプロフェッショナルケアの段階になります。安易に健全な歯質を切削することはお勧めできないので、スプリントの装着を検討してもよいかもしれません。最近では、ブラキシズムやクレンチングのセルフケアとして、就寝前にベッドの中で「リラックスして眠る」と自己暗示するのも効果があるといわれています。ストレス発散がもっとも有効なセルフケアといえるかもしれません。

徹底解明!象牙質知覚過敏症
2. 知覚過敏専用の歯磨剤

象牙質知覚過敏症のセルフケアにおける基本事項として、象牙質知覚過敏症専用の歯磨剤の推奨があります。では、専用の歯磨剤の特色はどのようなものでしょうか? 科学的に根拠のある成分は、硝酸カリウムとフッ化物です。他にも乳酸アルミニウムや塩化ストロンチウムなども有効であるといわれています。10%塩化ストロンチウム添加の歯磨剤が知覚過敏に有効であると証明されたのは1961年と、歴史がありますが、フッ化物と配合が禁忌であるため、う蝕予防の効果は期待できないとの報告があります7)。では、専用歯磨剤が知覚過敏を防止するメカニズムを以下に説明します。


1 )硝酸カリウムの場合

硝酸カリウムがカリウムイオンとなり、歯髄神経周辺にイオンパリアを形成するといわれています。この働きにより、歯髄で神経伝達をブロックし、知覚過敏によるしみや痛みを緩和します。カリウムイオンは、歯髄内の知覚神経末端に直接影響を及ぼすと考えられています。通常、5%の硝酸カリウムが歯磨剤に配合されています。

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2) 乳酸アルミニウムの場合

乳酸アルミニウムは、開口した象牙細管を封鎖することにより、象牙細管内溶液の移動を阻止し、神経を刺激するのを抑制します。

3) フッ化物

象牙質知覚過敏鈍麻剤として使用するフッ化物パーニッシュは、高濃度(22,600ppmF)で劇薬、指定医薬品であるため、専門管理下での使用となります(プロフェッショナルケア:次号に記載)。この他にフッ化物ジェルとしてセルフケアに使用できるものは、濃度1000ppmF未満のものが各社から販売されています(図3 - 5)。
歯磨剤に含まれているフッ化物は、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズの3種類ですが、中でもフッ化第ースズは歯根面(象牙質、セメント質に対してもっとも浸透率が高く、歯髄にまで容易に達する可能性があるため、知覚過敏症を悪化させてしまうこともあります。象牙質知覚過敏症に対して有効なフッ化ナトリウム配合の歯磨剤をお勧めしましょう。


徹底解明!象牙質知覚過敏症4 )海外の製品

海外における象牙質知覚過敏症のセルフケアは、専用歯磨剤の使用が最優先されます。海外は日本と違ってフッ化物の濃度が高いことや、日本では薬事の許可が下りていない成分を配合していることからも納得できます(前ベージ表3)。アメリカで販売されている専用歯磨剤も多数あります(前ページ図6)。また、日本でもフッ化物濃度こそ違いますが各社から専用の歯磨剤が販売されています(前ページ図7、8)。海外では、フッ化物の他にう蝕予防に効果がある成分として、Baking Soda (重曹)もよくあげられています。
しみる症状が強い場合は、ノンぺーストを勧めるのも一考です。ノンぺーストを推奨する理由は、歯磨剤に含まれる歯磨剤の粒子が象牙細管の内径よりも大きいため、これにより摩耗が生じ、スメア層が除去されて象牙細管が開口するからといわれています。専用の歯磨剤か、あるいはフッ化物入りで研磨剤非配合のものを勧めましょう(図9, 10)。

徹底解明!象牙質知覚過敏症

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おわりに

最近急増中の象牙質知覚過敏症。 歯科衛生士として、セルフケアに関して多くの選択肢や情報を持つことが重要ではないでしょうか。専用の歯磨剤に関しても効果のメカニズムを理解し、新製品の情報も入手しなければなりません。患者の口腔術生向上のために、歯科衛生士のコンピューター(頭脳)は、つねにデータのアップデイトが必要となりますね。
次回は、象牙質知覚過敏症に対するプロフェッショナルケアに関して解説します。


参考文献
1.Haywood VB. Dentine hypersensitivity:bleaching and restorative、considerations for successful management. Ferney-Voltain: FDI/world Dental Press. 2002:379.
2. Martin Addy . Dentine hypersensitivity: new perspective on an old problem. Ferney-Voltain:FDI/world Dental Press, 2002: 367-375.
3 探川優子.Q&Aあなたの質問に答えます!NO.37. 歯科衛生士2005: 29 ( 1 ):84-86.
4. 万有製薬ホームページ「メルクマニュアル医学百科」:摂食障害の章http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec07/ch103/ch103a.html
5. 東京予防歯科研究会ホームページ「口腔乾燥を起こし易い薬について:病気を治す薬でう蝕がおきる?」http://keepsmile.info/
6 深川優子、安田 登、象牙質知覚過敏症への対応~正しく知って予防しよう~.デンタルハイジーン2001;21 (10):886-899.
7. 世界の歯科事情:平成16年度東灘・灘・中央区学術フォーラムの資料



第4回 象牙質知覚過敏症に対するプロフェッショナルケア

2012年8月10日



第一生命保険相互会社健康増進室主任歯科衛生士
深川優子

はじめに

徹底解明!象牙質知覚過敏症前回は、「象牙質知覚過敏症に対するセルフケア」に関して述べました。さて、象牙質知覚過敏症のメカニズムや鑑別方法も頭にインプットし、インタビューを試みて保健指導もし、専用の歯磨剤も使用しているというのに、「まだしみる」と目の前の患者さんが訴えたとき、あなたなら次の一手は何を打ちますか? 患者さんの苦痛を速やかに取り去ることが歯科医療従事者の使命であるならば、こんなときタイムリーな診断や処置の修正が必要です。今回はセルフケアにも限界があることを理解し、次の一手である象牙質知覚過敏症に対するプロフェッショナルケアに関して解説していきます。

セルフケアの限界(QOLの低下)を長日る

前号では、象牙質知覚過敏症に対する処置の第1選択肢として、セルフケアの重要性を述べました。これはセルフケアが非侵襲性の(後戻りができる)ケアであるためです。セルフケアで対処した場合は、通常、しばらく期間をあけてようすをみます。しかし初診時のしみる症状が強いほど、その症状は長引くことが多いようです。歯科医療従事者として、患者さんの苦痛を速やかに取り去ることを念頭に置きながらも、無用な処置(う蝕と疑い、切削や抜髄すること)を避けたいばかりに患者さんに我慢を強いることも多々あります。結果的に症状が緩和すれば問題ないのですが、知覚過敏が著しく亢進してしまい、かえってQOLが低下して最悪の結果を招くことにもなりかねません。象牙質知覚過敏症の最悪の結果とは、抜髄や抜歯処置となることでしょう。これは、象牙質覚過敏症と診断された歯の一部に、組織学的には不可逆性歯髄炎が含まれてしまっていることからもいえます(第1回めより)。 「最後の手段は抜歯である」と書かれている海外の文献をよく目にしますが、抜歯は侵襲性(後戻りができない)の処置の最たるものですね。そうならないために、セルフケアにも限界があることを知り、セルフケアからプロフェッショナルケアに切り替えるタイミングを図り、ケアの変更を検討しましょう。
さて、今までの復習となりますが、象牙質知覚過敏症がセルフケアで治癒するメカニズムは、生活習慣の改善を図りながら、開口した象牙細管を専用の歯磨剤やフッ化物などにより被覆して細管開口部を塞ぐ、あるいは象牙細管内容液の移動を阻止することにより、二次象牙質、管周象牙質の形成も加わって、通常では正常な免疫反応により2、3週間くらいで症状は治まるというものです。しかし、知覚過敏症状を訴える部位の開口した象牙細管の直径は、正常な象牙細管よりも大きくなっているため、専用の歯磨剤などで封鎖しきれなかった場合や、効果が期待できなかった場合、またすでに象牙細管から侵入した細菌や毒素、刺激物の侵入や知覚神経線維の興奮により、
歯髄にも炎症が生じてしまった場合は感受性の亢進が持続します。しばらくようすをみても症状が治まらないときがセルフケアの限界といえるのではないでしょうか。もちろん患者さんの痛みの閾値とQOLを考慮することが重要です(図1)。

徹底解明!象牙質知覚過敏症


徹底解明!象牙質知覚過敏症ケアの必要性を再考する

"象牙質と歯髄は同じものである" という「象牙質・歯髄複合体(Dentine/Pulp Complex)」 という考え方があります。そこでは、"象牙質の露出は、まさに歯髄組織が露出している状態(細管レベルの露髄)である"と説明されています1)(図2)。この考えによれば露出象牙質は、いかなるときも象牙細管を通じて細菌感染や刺激が歯髄にまで達する可能性があると考えられるので、セルフケアやプロフェッショナルケアにより象牙質表面を被覆する必要性が理解できます。

プロフェッショナルケアによる
対応・QOLの向上を図るために


象牙質知覚過敏症の治療方法の基本は、「露出象牙質に対するケアとキュア」と「歯髄保護」にあります。「象牙細管内溶液の移動阻止」を確実に行い、歯髄への刺激物の侵入を阻止し、歯髄神経を興奮させないことにより、「過敏化Lた歯髄神経の鎮静化」を図るのがもっとも効果的な治療法であるとされています( 第1回めより)。以下にプロフェッショナルケアの特徴や、処置に使われる材料の特性について解説していきます。

1. セルフケアとプロフェッショナルケアの違い

セルフケアとプロフェッショナルケアの違いは、前者が生活習慣を改善したり、ブラッシングテクニックを変更したり、専用歯磨剤を使用するといった、どちらかというと口腔全般を対象としたケアであるのに対して、後者は象牙質知覚過敏症を,訴える歯とその要因が大方特定できていて、かつ、セルフケアでは改善されない場合に用いられる処置方法となります。つまりしみる要因に直接的に働きかけることであり、これによりQOLの低下を防止、あるいは向上させるものです。プロフェッショナルケアの方法もさまざまですが、プロフェッショナルケアを施すうえで重要な点は、当然ながら生体への侵襲が少ないものから始めてみるということです(表1)。

徹底解明!象牙質知覚過敏症

徹底解明!象牙質知覚過敏症


徹底解明!象牙質知覚過敏症2. 生体侵襲の少ないプロフェッショナルケアとは

生体侵襲の少ない処置方法とは、歯質の切削と使用する材料の刺激を最小限に留め、象牙細管内溶液の移動阻止と過敏化した歯髄を保護することを目的としています。具体的には、有効性が証明されている材料(後述)を用いて、露出した象牙細管を狭窄、または機械的、あるいは化学的に被覆します(表1:① 、② 、④の項目が該当)。露出象牙質表面に材科を塗布する際は、患部の清拭、水洗、乾燥が必要となりますが、中にはこれらの処置がかえって強い刺激となり、象牙質知覚過敏症を悪化させる場合もあります。しかし、最新の材料によっては、その過程を省くことができるものもあります(表2)。以下に象牙質知覚過敏症に有効であるといわれている材料とその特徴を記載します。

1) MSコートの塗布

MSコートは健康保険適用の知覚過敏抑制材です(図3)。MSコート
の2つの成分(A液:MSポリマー、B液:シュウ酸)が象牙細管や象牙壁に存在するカルシウムと反応し、象牙細管内に沈殿、もしくは結晶を生成します。これにより象牙細管を狭窄、 あるいは閉鎖することができます(図4-a、b)。象牙質知覚過敏症予防にはスメア層の喪失防止が鍵となることから(第3回めより)、MSコートにより生成されたポリマータグが人工的にスメア層やスメア栓の役割を果たし、症状を解消します(図4-c)。
この材料の特徴は、通常の接着性 レジンと違って前処置(酸によるエッチング処理) を必要としない点です。他材料では塗布しにくい歯肉縁付近や歯肉縁下、また多数歯の塗布に適しています(図5)。 1 回の塗布で症状が消失しない場合は、塗布を繰り返してようすを見ます。MSコートは、操作性が良く、かつ歯髄組織への刺激が少ない材料であることから、訪問介護の場でも活用できる製品です。

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2 )接着性レジンのボンディング材塗布

接着性レジンのボンディング材の塗布が象牙質知覚過敏症に効果があるのは、単に象牙細管の表面を被覆 するからではありません。接着性レジンのモノマー成分が象牙質に浸透、拡散し、象牙質構成成分(コラーゲン、ハイドロキシアパタイト、水)と絡み合い、新たな層(樹脂含浸

象牙質)を生成します。いったん樹脂含侵象牙質が生成されると、酸にも脱灰されず、有機質分解試薬にも分解されないので、再発性う蝕を予防するといわれています3、4)。通常、接着性レジンは、コンポジットレジン充填の際にボンディング材として用いられますが、実質欠損のわずかな歯頸部の露出象牙質などには、薄膜のボンディング材を塗布するのが有効です(図6)。
通常の接着性レジンは前処測 (エッチング、プライマー処理)を必要とします。接着性レジンのエッチング操作とは、接着性レジンのモノマーを十分に象牙質に浸透させるために、象牙細管を覆っているスメア層を酸で除去しなければならず、水
洗、乾燥が必要となります。術後の象牙細管封鎖性と効果の持続性においては、前述のMSコートよりも優れているのですが、前処理(酸処理、水洗、乾燥)を必要とする点で、知覚過敏を悪化させる恐れがあります。
しかし最近では、セルフエッチングプライマータイプの接着性レジンが開発されました。この材料は、エッチングとプライマー処理を同時に行えることから、水洗を必要としません。また、さらにボンディングされた面を強化するためにSBコート(多官能性メタクリレート:コンポジットレジンのフィラーがないもの)を用いて、人工エナメル質( 象牙質コーティング)を生成することも有効な手段です5、6) (図7)。

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3 ) 高濃度フッ化物の塗布

セルフケアで使用できるフッ化物の濃度は1.000ppmF未満とされていますが、プロフェッショナルケアでは、象牙質知覚過敏鈍麻剤として高濃度(22.600ppmF:フッ化ナトリウム)のものが使用できます(図8、9 )。しかし、これは、劇薬、指定医薬品であるため、使用にあたっては注意が必要です。他にも濃度9.000ppmFの製品もありますが、こちらは象牙質知覚過敏鈍麻剤ではなく、フッ化物歯面塗布剤として使用します。私たち専門家によるフッ化物局所応用法であり、年間にl、2回の塗布に使用します。

4)グラスアイオノマーセメント充填


グラスアイオノマーセメント(図10)は、フッ素徐放性であり、操作性の良さから汎用されているセメントです。最近では接着性レジンの成分が配合されたレジン強化型グラスアイオノマーセメントが主流となっているようですが、接着性レジンと違って樹脂含侵層の生成は期待できません。グラスアイオノマーセメントが象牙質知覚過敏症の症状を鎮静させる機序は、露出した象牙質表面を機械的に被覆するものであり、いわば傷口に載っているガーゼの役目を果たすに留まります。歯肉縁周囲や縁下の充填は困難であることから、プラークコントロールの妨げになるような充填は避けたいものです。あくまでも暫間的な被覆処置とし、症状が落ちついたらコンポジットレジン充填などに切り替えるのも一考ですが、場合によってはコンポジットレジン充填が困難な部位の代替処置ともいえます。またグラスアイオノマーの液成分はポリアクリル酸といった酸の水溶液であるため、象牙質を脱灰させる可能性があります。留意しましょう。

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5 )コンポジットレジン充填

以下の場合にコンポジットレジン(図11)の充填を施すのが有効です。
1)~4)までの処置をしたが、
・症状が解消しない
・効果が持続せず再発した
・欠損部が大きい
・審美面の回復
・プラークコントロールが困難
という場合です。つまり1)~4)のプロフェッショナルケアを施しても患者さんのQOLが向上できなかった場合にコンポジットレジンを充填します。


3. プラークコントロールのためのプロフェッショナルケア


象牙質知覚過敏症を有する部位のプラークコントロールが困難な場合や、欠損部位にう蝕が生じて再石灰化が期待できない部位には、プラークコントロールをしやすいように露出象牙質面を充填する必要性があると考えます。これにより患者さんのQOLの向上を図ります(図12)。

おわりに

セルフケアでは象牙質知覚過敏症を治癒させることができなかったとき、ためらうことなくプロフェッショナルケアへの転換を考えましょう。これは、歯科医療従事者として、患者さんの苦痛を速やかに除去することが使命であり、患者さんのQOLの低下を防止するためです。
今回ご紹介したプロフェッショナルケアは、非侵襲性に近い、セルフケアとプロフェッショナルケアの中間のようなものもありますが、即時に症状を緩和できることが特徴です。このことから、即効性と持続性のあるプロフェッショナルケアをセルフケアと同時に試みてもよいのではないかと考えます。それは、きっと私たちが思っている以上に患者さんは、ブラッシングや、飲食をしたりするたびに不快を感じていると思われるためです。しみるという主訴を軽んじることなく、長い時間我慢させないようにと切に思います。
今回の重要なポイントは、セルフケアからプロフェッショナルケアに切り替えるタイミングと処置に使われる材料の特性を知ることにあります。タイミングを図る勘どころ、これは一朝一夕で養えるものではありませんが、歯科衛生士が身につけなければならない能力といえるでしょう。


参考文献
1.深川優子、安田 登.予防歯科時代におけるう蝕治療~相互理解と信頼(Mutual Understanding and Trust)を得るために歯科衛生2003; 27 ( 8) : 29-44.
2 深川優子、安田 登.象牙質知覚過敏症への対応~正しく知って予防しよう~.デンタルハイジーン2001; 21 (10) : 886-899.
3. 中林宣男.接着界面の象牙質側に生成した樹脂含浸象牙質について歯材器1982 ; 1 ( 1) : 78-81.
4 中林宣男.樹脂含浸象牙質の機能について.接着歯学1995;13(1): 8-13.
5.Nakabayashi N. Nakamura M, Yasuda N. Hybrid layer as a dentin-bonding mechanism. J. Esth. Dent 1991 ; 3 ( 4 ): 132-138.
6. 中林宣男、 安田 登.超接着-人工エナメル質をめざして-.the Quintessence1995 ;14( 1 ) : 42-46.


酸味食品をとったら

phテスト



象牙質知覚過敏抑制法

Hys専用の歯磨剤にはどのようなものがあるか
日本の製品 グラクソスミスクライン_シュミテクト
(硝酸カリウム5%wt,フッ化ナトリウム930ppmF)
サンスターGUM_デンタルジェルセンシティブ
(硝酸カリウム、フッ化ナトリウム、クロルへキシジン配合)
サンスターバトラー_デンタルリキッドジェル
(フッ化ナトリウム配合、研磨材非配合)
日本歯科薬品_Brosal
(フッ化ナトリウム配合、研磨材非配合
 
アメリカの代表的な
Hys専用の歯磨剤
 
グラクソスミスクライン_Sensodyne
(硝酸カリウム5%wt,フッ化ナトリウム1500ppmF)
アメリカの場合は1000ppmF以上のフッ化物の配合がされていますが、どの程度までのppmFがOKなのかはわかりません。
<プロフェッショナルケア編>
  セルフケアでHysの症状を改善させることができなかった時は、速やかにプロフェッショナルケアへ転換する。セルフケアには限界がある(QOLの低下)
1. う蝕のない露出象牙質 → 各種材料による(ボンディング剤など)被覆
2. う蝕が原因ではない歯質の歯折 → 修復処置(CR充填、補綴など
3. アブフラクション → 咬合調整、スプリント装着、修復処置など

4.

歯周処置による歯肉退縮 → 各種材料による露出歯根面の被覆、歯肉グラフトなど
5.

破折歯(垂直性破折) → 接着性レジンによる接着、抜髄、歯根分割、抜歯など

<生体侵襲の少ないプロフェッショナルケア>
1. MSコート・・・健康保険適用のHys抑制材
          A液(MSポリマー)+B液(シュウ酸)が象牙質壁や象牙細管に存在するカルシウムと反応し、象牙細管内に沈殿、もしくは結晶を生成する。これにより象牙細管を狭窄、あるいは閉鎖する。MSコートにより生成されたポリマータグが人工的にスメア層やスメア栓の役割をはたす。
2. 接着性レジンのボンディング材
      ・・・単に象牙細管の表面を被覆するだけでなく、モノマー成分が象牙質に浸透、拡散し、象牙質構成成分(コラーゲン、ハイドロキシアパタイト)と絡み合い、新たな層(樹脂含浸象牙質)を生成する。いったん樹脂含浸象牙質が生成されると、酸にも脱灰されず、有機質分解試薬にも分解されないので、再発性う蝕を予防するといわれている。
※ シングルボンドはエッチング処理が必要なため、当院においてはGボンドが適している

G-ボンド
G-ボンド今までになかったシンプル&スピーディで、
確実に接着する1液性ボンディング材。
シンプル:1液を1回塗布するだけの簡単ステップ
薄いわずか10ミクロン以下のボンディング層
確実2種類の接着性モノマーによる安定した高い接着力
快適CRのノリがよく、ストレスのない充填操作性


グルーマ(R)ディセンシタイザー
グルーマ(R)ディセンシタイザー知覚過敏のメカニズムに直接作用します。
だから、塗布直後から効果があります。

速効性:塗布すれば、直ちに効果が発現します。
持続性:6ヶ月・1年以上の臨床報告があります。
1液性:練和不要で、簡単に塗布適用できます。
無着色:無色透明で、歯牙を着色しません。
被膜なし:残渣がなく、接着・合着を阻害しません。
保険適用:知覚過敏処置として請求できます。

3. 高濃度フッ化物・・・プロフェッショナルケアにおいては、9000ppmF~22600ppmFが使用される。
            _Fバニッシュ(22600ppmF)
_フルオールゼリー(9000ppmF)

4.

グラスアイオノマーセメント
・・・接着性レジンと違って、樹脂含浸象牙質の生成は期待できず、単に機械的に露出象牙質を被覆するもので、傷口にあてるガーゼの役目のみ。あくまでも暫間的な被覆処置。またグラスアイオノマーはエッチングがないから安心と思っている人が多いようだが、グラスアイオノマーのモノマー成分はポリアクリル酸という酸の水溶液であることから、流動性のあるうちに象牙質に触れればやはり同じように脱灰させる可能性はある。
5.

コンポジットレジン(CR)
      ・・・・~・までの処置をしたが
         ・症状が解消しない
・効果が持続せず再発
         ・欠損部が大きい
         ・審美面の回復をしたい  
         ・PCが困難
                  このような場合にCR充填をおこなう。

6. スプリント装着
7. 抜髄、抜歯



知覚過敏抑制材

MSコート (健保適用) サンメディカル

2012年5月21日

カルシウムと反応する新メカニズム!
即効性・持続性 知覚過敏抑制剤

MSコート

歯ブラシ摩耗による象牙質露出、歯肉後退による象牙質露出、スケーリング後の象牙質露出、歯周炎による根面露出など知覚過敏症の抑制に使用します。

●2液を混和し、こすり塗り・乾燥するだけの簡単操作です。
●耐酸性に優れたポリマータグを形成します。
●着色しないので、前歯にも安心して使えます。

MSコート

便利なフェルトホルダーとフェルトチップ付き
歯頸部やポケット内部に適用する場合に大変便利なフェルトホルダーとフェルトチップ付き。綿球では適用しにくい部位でも簡単に適用できます。

■注意1
スケーリング後、歯肉縁下の根面に歯根膜の再生を期待している期間は、MSコートを使用しないでください。
■注意2
MSコート適用面にボンディング材、もしくは接着剤を使用する場合、必ずホワイトポイント等でMSコート適用面を一層削去してください。(接着剤にスーパーボンドを使用する場合は、MSコート層を削去せずに表面処理材グリーンで10秒間処理してください。)

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‘06 歯科衛生士シンポジウム 2006.10.15
4.「患者の訴え
”知覚過敏“にどう対応するのか」
 


治療内容とタバコの影響:マスキング(不顕性作用)



象牙質知覚過敏症=Dentine Hypersensitivity (Hys)とは?

・ ・・温度、乾燥、擦過、浸透圧、科学物質などの刺激によって生じる短く鋭い痛みを特徴とするもので、歯質の実質欠損などで他の病変では説明できないもので、自発痛や持続的な誘発痛を有する歯髄炎とは明確に区別されるもの。
  近年、国内外を問わずHysは増加しているといわれている。ホワイトニング、嗜好、摂食障害、口腔乾燥、ストレスによるブラキシズムやクレンチングなどのさまざまな原因により発症する。近年における高齢社会、美意識の高まり、ストレスなどの現代社会生活、などが背景にある。
  年代別で見てみると、20~50代に多く、その中でも30~40代がピークとされている。男性より女性が多く、特に若い女性に顕著である。

 
<発症のメカニズム> 現在最も広く受け入れられている学説は象牙細管内溶液の移動に注目した「動水力学説」であると考えられている。
1. さまざまな要因でエナメル質やセメント質が喪失することにより象牙質が露出し、その表面に象牙細管が開口する。
2. そこに何らかの刺激が加わる。
  ・・・機械的な刺激:ブラッシングなど
     温度刺激:飲食など
     咬合圧:ブラキシズムやクレンチング
     化学物質:ホワイトニング、嗜好品(酸性食品摂取)、胃酸、薬剤など
     口腔乾燥:口呼吸、薬剤の服用、加齢などによるもの
3. 象牙質に加わったさまざまな刺激により、象牙細管内溶液が外向きあるいは内向きに移動する。

4.

象牙細管内溶液の移動が歯髄・象牙境付近に分付する自由神経終末を刺激、興奮させ、インパルスが発生するために痛みが生じる。

最もHysを誘発するのは冷刺激である。温刺激においては冷刺激と比べ、象牙細管内溶液の移動が緩慢であり、歯髄側の神経線維を刺激させるまでにいたらない。

冷刺激を感じやすい部位:上顎は左右ともに4、次に3で、下顎右側は3、次に4、下顎左側は反対に4、次に3という報告がされている。これは利き腕とP.C.の関係によるものと考えられる。

 
< 歯質について >
エナメル質: 人体の中で最も硬い組織で、高度に石灰化した上皮性の組織で最大で2~3mm。ほとんどが無機結晶で細胞成分をまったく含まない。エナメル質においてHysは絶対にない。咬耗、磨耗、Cなどによりいったん実質欠損が生じると、二度と回復しない。セルコンや、ラバなら人工物だけど修復再生となるかな?
象牙質: 歯の主体を成す硬組織。20%有機質、70%無機質、10%水分。
有機質の90%はコラーゲン線維で無機質は水酸化アパタイト。象牙質には伝導性があり、象牙細管は象牙質表面に直交するように象牙質の全層を貫いている。この象牙細管は歯髄と連絡していて、さまざまな外来刺激の受容、知覚の受容、象牙質への栄養補給に不可欠な構造となっている。
象牙質の表面から生じた刺激が象牙細管を通じて歯髄神経に伝達されHysが発症する。
セメント質: 歯の構成組織であると同時に歯周組織にも属する。
結晶化したハイドロキシアパタイトが無機質として存在し45~60%、残りは有機質と水分。無機質には他の硬組織よりも多量のフッ化物が検出され、フッ化物濃度は表層で特に高く0,5~0,6%。

モース硬度・・・

ダイアモンド  10
カーボランダム  9,5
エナメル質  6~7
象牙質  5~6
セメント質  4~5
パラジウム  4,5~5
石膏  2
 
<Hysの発症要因>
1. エナメル質とセメント質の喪失が無くても、歯の髄、の弱い炎症や、神経端末の弱い損傷、に拠っても起こりうる、また神経の中心、脳の部分の反応でも、症状は悪化し、
2.

体液循環が悪くなる、ストレス下、疲れによっても、増悪する。
・・・一般的にはエナメル質とセメント質の喪失により象牙質が露出して、その表面の象牙細管が開口している場合に発症する。

(1) エナメル質の喪失を引き起こす因子
磨耗:不適切なプラークコントロール(ブラッシングや歯間清掃)+歯磨剤
酸蝕:プラークの付着、職業性、飲食、摂食障害による胃酸の逆流、薬剤、洗口剤など。
咬合の不調和:ブラキシズムやクレンチングによるアブフラクション(楔状欠損の主要因)、矯正治療時の咬合干渉など。
(2) セメント質の喪失を引き起こす因子
歯周病による歯肉退縮:歯周処置(外科的処置を含む)、解剖学的形態、不適切なプラークコントロール。
プラークの付着:プラークの酸産生によるセメント質の脱灰。
3.

歯科修復処置・医原性のHys
・・・一般的に歯髄神経はすでに虫歯状態で、さらに修復形成PZ時に傷害をうけているので、修復処置後にしみるのは当然といえるし、金属や、接着剤の刺激や、修復後に咬合が変化したことによりHysを発症することもある。さらに乾燥、水洗などの操作や使用する歯科材料が象牙質に刺激を与えることもある。

(1) 歯周処置が招くHys
Hysが最も多く発症する要因は、歯肉退縮による象牙細管の露出であると報告されている。特に歯周処置に伴う歯肉の退縮が多い。
(2) ホワイトニング処置後によるHys
ホワイトニングに使用される過酸化水素水はそれ自体は活性は持たない物質なのだけれど、いったん空気に触れると酸化反応をおこし強い反応性を示す。
ホームホワイトニングに関してはほぼ100%の症例に強弱の差はあるもののHysが発症する。
<「しみる・痛い」の症状を放置しておくことのリスク>
「しみる・痛い」症状を避けるあまり、プラークコントロールがおろそかになり、その結果CやPになってしまうことがある。しかしセルフケアができていたとしても症状が改善されない場合も多々ある。いずれにしても感受性の亢進は不可逆性の歯髄炎に通じ、最悪抜髄という選択をしなければならなくなってしまう。セルフケアでの限界を見極め、プロフェッショナルケアに切り替えるタイミングが重要である。
ホワイトファミリーでは、オーラルケアトリーメントによって患者様にサポートしてます。
象牙細管が開口し長期間口腔内に放置されると、象牙細管内溶液、血液、唾液由来の物質などの沈着や、口腔内細菌や吸収された歯髄細胞成分、ブラッシングによって形成されるスメア層などにより象牙細管は狭窄あるいは閉塞される。さらに第二象牙質、管周象牙質の形成も加わり、象牙質の感受性は低下する。この正常な生体反応により通常では2~3Wくらいで症状は治まるものだが、何らかの原因によりこの第二象牙形成機構が有効に働かないと、象牙質の刺激感受性の亢進は持続する。一方、象牙細管から侵入した細菌や毒素、刺激物の浸入や知覚神経線維の興奮により、歯髄神経にも炎症が生じることもある。
ちなみに、正常な象牙細管の開口している割合(直径)を1とすると、Hysをおこしている象牙細管の開口の割合は8である。

象牙細管の透過性を見る実験・・・うかのある歯牙にうかとは別のエナメル歯面に人為的に健全歯質にまで達するかどう形成をおこない、その歯牙を24時間染色剤にひたしておく。
  結果、C直下の象牙質には石灰化が亢進した層があるため染色剤は歯髄にまでは達していないが、形成をおこなった象牙質の染色剤は神経にまで達していた。このことからも、形成した歯牙(生活歯)は神経が過敏に反応し、しみるといった症状を引き起こす可能性は充分にあるということがわかる。

ホワイトファミリーでは、必ず、C処置において、消毒、固定法を必ず実施して、サホライド、FCなどの象牙質固定処置で、Hys、歯髄炎を防止しています。

 
<根面カリエスとHysの関係>
根面カリエスとは? ・・・露出したセメント質がう蝕原因菌が産出する酸により脱灰される病的な状態で必ずしも知覚の亢進をともなうものではない。
Hysとは? ・・・セメント質が過度に削除され象牙質が露出し、表層に開口した象牙細管を通じて刺激が歯髄に伝わる状態で、うかは存在しない。
両者ともに歯肉退縮により、セメント質が露出するまでは同じ。

 

露出していると、脱灰開始の酸性度クリティカルレベルはアルカリ側に上がっているので、お口の中が酸性pH5,5よりも、酸性でなくても、Caの溶出があり、それ自体は、虫歯と言える。つまり、楔状や、根面の露出状態で、すでに虫歯開始(脱灰状態)といえる。
1.

やむなく歯頸部欠損の充填を行う場合における知覚過敏を考慮した注意事項

(1) 処置に入る前に、開いた、象牙質表面に蛋白凝固固定処置(FC,サホライド)消毒を行って、一度、3MIXセメントなどで、仮充填して、数ヶ月経過観察する。
(2) その後に酸処理しない、自立接着性の充填材料を用いる。
(3) 充填時に硬化前に形態付与をしっかり行い、硬化後の研磨や、調整は行わない。
(4) かみ合わせの調整は数回、毎月、充分に行う、早期接触・過重負担などが、歯髄炎や、根面露出の原因になる。
(5) かどう範囲内に適切に充填し、形態修正においてはマージンを適切にあわせる。
(6) 歯肉に被さっている充填(オーバーマージン)よりも、アンダーマージンのほうがプラークコントロールが容易であり、臨床経過がよい。しかも審美性に優れている。オーバーマージンはプラークコントロールを困難にするため辺縁歯肉の炎症や再発性う蝕を誘発する。
(7) 歯肉縁下に及ぶ歯頸部マージンは、歯肉を切除するか圧排糸で歯肉を後退させてから充填を行う。
(8) CR充填に際に歯肉溝に流れたボンディング材を除去する。ボンディング材が人工的な歯石の役割をはたしてしまう可能性あり。
(9) 歯冠部を修復する際には、歯冠修復物の辺縁を歯肉縁上に設定する。
(10) 可能な限り、歯冠修復物の辺縁をエナメル質に設定する。
(11) 歯肉退縮のある歯に対する歯冠修復は元の形態を復元し、決してオーバーカントゥアーにならないようにする。(生物学的幅を考慮する。)
2. 根面カリエス、Hysの予防法
  ・ ・・歯面強化のために歯冠修復時(充填含む)の注意点のほかに両者ともにフッ素を塗布することが効果的である。セメント質は貧弱で脱灰の臨海(クリティカル)phも高いので、歯肉が退縮しセメント質が露出してしまったら、速やかにフッ化物を塗布する。フッ化物配合の歯磨剤を使用するのもさることながら、濃度の高いフッ化物の歯面塗布、フッ化物洗口(サンスター バトラー _F洗口液0,1%)はさらに効果的である。特に表層だけが脱灰した歯根面のフッ化物塗布は、再石灰化に極めて高い効果を期待できる。
毎日毎回の、ケアタイミングを見直す。
歯ブラシだけのケアに頼らず、しっかり、毎回、フロスをおこない、歯の間ケアを優先する、歯ブラシ圧のコントロールは重要なので、柔らかい安全な、道具を選ぶ。
歯ブラシの動かし方も、研磨、摩滅を防ぐ、スパイラル法を行う。
脱灰開始後、最盛期の食後30分以降でなくて、食後3分以内の3AMで、ジャストケアを心がける。寝る前の仕上げケアーでは、さらに、軽く抗菌リンスや、フッ素ペーストを歯の間にも使う。
  歯周処置後の根面や歯肉溝に先の細いシリンジを使用してフッ化物を塗布するのも有効で、露出した根面の脱灰とHysの予防に役立つ。ここで使用するフッ化物にはセメント質に対し刺激の少ないフッ化ナトリウムがよい。Hysの予防に関してはフッ化物と硝酸カリウム配合の専用の歯磨剤をシリンジに充填して(サンスター GUM  _デンタルジェルセンシティブ、_シュミテクトなど)塗布するのもよい。またCPP-ACP(リカルデント)成分を配合した「歯質再石灰化ペースト」(GC _MIペースト)をフッ化物塗布後に使用するのも今面カリエスの予防にさらに有効。
 

MIペースト:10%w/w CPP-ACP
       CPP=牛乳たんぱく質であるカゼイン由来のホスホペプチド
       ACP=非結晶性で可溶性の性状を有するリン酸カルシウム
       ※CPP-ACPは牛乳タンパク由来であるため、
        牛乳アレルギ のある方には勧めることができない。

酸性状態に傾いた口腔内を中性に戻し酸性状態になりにくい状態を維持する緩衝能を持つ。
プラーク中にも取り込まれ、エナメル質表層化の再石灰化に働く。
象牙細管を封鎖することにより、Hys治療に有効。
フッ化物同様、根面カリエスの予防にも効果的。
酸蝕症を緩和する。
フッ化物の代用とすることで、歯牙フッ素症を改善する。
フッ化物(1000ppmF未満のもの)塗布後に使用することで、いずれかの単独使用よりも、う蝕活動性が有意に低下する。フッ化物入り歯磨剤使用後の塗布が一番効果が増強、発現される。
プロフェッショナルケアで使用する高濃度のフッ化物(1000ppmF以上のもの)との併用は拮抗作用があり禁忌である。
GCからでているホワイトニング剤(_GCTion)には、ホワイトニング後のHysの発生を低減させるためのリカバリー用ジェルとして、MIペーストが同梱されている。
<Hysの診断と対応>
1. 医療面接(問診)から導き出すHysの原因(患者様への質問)
(1) 痛みの種類に関しての質問
  ・・・鋭い、鈍い、脈打つ感じがあるか?
(2) 生活習慣に関しての質問(嗜好、健康志向の確認)
  ・・・ph値の低い炭酸飲料や酸味の強い食事を好む傾向にあるか?(クエン酸やお酢が体によいという健康志向を念頭におく。外因性の酸による傷害は酸性食品が関連している。)
(3) 薬剤や病歴に関しての質問(サプリメントを含む常備薬の確認)
  ・・・薬剤の長期服用は唾液の分泌を減少させる。(坑ヒスタミン剤、血圧降下剤などは特に)最近流行のチュアブル錠やサプリメントは糖衣錠であることが多い。内因性の酸による傷害は全身的疾患と関連してくる。
(4) 清掃状態に関しての質問(セルフケアに使用しているツールの確認)
  ・・・歯ブラシの形状や硬さ、歯磨剤の種類と使用量、歯間清掃道具の使用、洗口剤の使用、いつブラッシングをするか、最近はブラシを変更したかなどの質問。
(5) 職業に関しての質問(職業性の歯牙酸蝕症の疑い)
(6) ストレスに関しての質問
  ・・・就寝時のブラキシズムやクレンチングの確認、摂食障害であるかどうか。(この摂食障害に関する設問はデリケートであるため慎重に対応する。)
(7) 歯科治療にかんしての質問
  ・・・最近歯周処置、ホワイトニング処置、う蝕治療などの処置をうけたかどう
か。
2. Hys鑑別診断において考慮すべき要因
(1) 膿瘍のある歯、あるいは失活歯:主に歯根膜の痛みが原因
  ・・・咬合時に感受性を伴う壊死をおこしている。(SP、OP、PPがすべて+)
(2) 破折している歯:垂直性破折が歯髄神経にまで達していれば歯髄神経あるいは歯根膜の痛みを伴う。また咬頭が部分破折していて、象牙質が露出していれば当然Hysが生じる。
  ・・・咬合後の開口時や咬頭を打診したときに痛みあり。
(3) う蝕のある歯
  ・・・セメント質がエナメル象牙境に及んだときに感受性が最も高くなる。その部分を越えてしまうと、歯髄神経に到達するまでの間は一時的に鈍くなる。う蝕の場合うかを伴うものがほとんどなので、X-ray
、探針などで鑑別できる。
(4) 歯肉退縮のある歯
  ・・・外科的な歯周処置後、加齢、機械的刺激(ブラッシング)、小帯付着が強いなどの場合に歯肉が退縮する。あらゆる原因によりセメント質が喪失し根面の象牙質が露出して象牙細管が開口することにより感受性が亢進→Hys。
歯肉クレフトなども考慮しなければならない。
(5) ブラッシングによる摩耗のある歯
・・・歯磨剤を用いたオーバーブラッシングによる摩耗は一般的に利き腕の反対側に見られる。
(6) 咬合性外傷による傷害(アブフラクション)
  ・・・解剖学的にたわみやすい部分(歯頸部)が咬合性外傷を受けやすい。感受性が強く歯髄神経にまで進行する場合がある。
はじめにエナメル質が剥離し、その後に摩耗や酸蝕などの影響を受けるため、結果として生じるHys。
(7) 酸による傷害
  ・・・胃酸の逆流など、内因性の酸による傷害は(摂食障害)口蓋側に起こり、酸性食品摂取による外因性の酸による傷害は頬側に起こる傾向にある。ph値が大変に低い炭酸飲料のコーラやフルーツジュースなどの大量消費や、長時間消費(だらだら飲む)は酸による攻撃と同じ。 
(8) 飲食によるHys
  ・・・ph値の低い食品(フレッシュなトマト、オレンジジュース、コーラなど)が関連している。これらの酸性食品で露出象牙質部分がエッチング(象牙細管を覆っていたスメア層が除去され細管が開口する)され、突然しみるようになる。また酸蝕によって生じたHysをさらに悪化させる可能性あり。
(9) 発生学上の問題によりおこるHys
  ・・・先天的にEDJが部分的にセメント質で覆われていないなど。
(10) 修復物によるHys
  ・・・一般的に歯髄神経はかどう形成時にすでにダメージを受けている。
操作中の汚染や不適切なエッチング処理や乾燥も感受性を向上させる。
(11) 薬剤によるHys
  ・・・薬剤の長期服用による口腔乾燥症。唾液の減少は酸蝕症の増加につながる。
(12) ホワイトニングによるHys
  ・・・ホワイトニング薬剤は象牙質に浸透し歯髄神経に到達する可能性もある。   
(可逆性歯髄炎へ)
 
HYS鑑別診断チャート
HYSの要因
実質欠損
<「しみる・痛い」時はどう対応する?  セルフケア編>
Hysのケア・・・ 象牙質表面に開口した象牙細管の封鎖、また象牙細管に沈着物を生成し、細管を狭窄あるいは閉塞し、「象牙細管内溶液の移動の阻止」を目的とする。
非侵襲性(後戻りができる処置)= セルフケアが主となる = スメア層の喪失防止
侵襲性(後戻りができない処置)= プロフェッショナルケア
[外因性の酸蝕]
(1) 飲食が原因の場合
・・・スメア層はphの低い酸性の食品、果物、飲料によって容易に剥がされる。ちなみに歯質の脱灰は唾液phがエナメル質でph5,5以下、象牙質でph6,0、セメント質でph6,2以下で起こる。
       (色ワイン 2,3 赤ワイン 2,63 コーラ 2,94 オレンジジュース 3,0 ヨーグルト 3,26 グレープフルーツジュース 3,6 アップルジュース 4,1 紅茶 5,0 コーヒー 5,5)
       オレンジジュースに3分さらされただけでスメア層は完全に剥がされ、象牙細管が露出し過敏な状態になる。これらphの低い食品、飲料を摂取した場合には、その後にお水を飲むといったことことを心がけるとよい。
(2) 職業性の場合:「歯牙酸蝕症」
    ・・・製造業による酸性ガスや蒸気、ミストの発生。
       ※すし職人は職業性歯牙酸蝕症とは認定されていないが比較的多いという報告がされている。昨今の健康志向で黒酢、酢酸、クエン酸などが体によいとして摂取される傾向にあるが、口腔衛生においては逆効果になることも考えられる。
[内因性の酸蝕] ・・・傷害は口蓋側におこる。摂食障害による嘔吐で胃酸が口腔内に逆流するとスメア層を喪失する。胃酸のphは2.0で強酸性である。もし嘔吐という状況になってしまったら、その後速やかに水でたくさんうがいをするようにする。
喫煙習慣やチョコなど特定の食品の摂取で胃の括約筋の働きを低下させるために胃酸の逆流の原因となる。
アルコールやコーヒーも胃酸の産生を亢進させる。
摂食障害は男性よりも女性に多く、特に若い女性に圧倒的に多く見られる。誤ったダイエットによるものと考えられる。
(3)

薬剤の影響 : 口腔内乾燥症(ドライマウス)
・・・服薬、加齢、ストレスのよる唾液分泌量の低下、脱水(飲水行動制限)、口呼吸、乾燥した室内環境。
薬 → 利尿作用のあるもの、体液の減少を促進させるもの、降圧剤、抗うつ剤、抗コリン剤(副交感神経遮断剤)、その他唾液の分泌を低下させる薬剤の種類はとても多い。
ドライマウスの対策: マッサージを毎日行い自然に唾液の分泌量が増加してくれることが一番よいのだが、それでも効果のない場合は、常にお水やお茶を携帯し、こまめに補給し口腔内を潤すように心がける。あとキシリトールガムなどをよくかんで唾液分泌を促進させる。それでもだめな場合はキシリトールやヒアルロン酸配合の口腔潤滑剤を薦める。最近ではミルクプロテイン(初乳から抽出された乳タンパクエキス)と浸潤剤(唾液や涙などの持つ抗菌作用と類似した成分)を配合したドライマウスケア用の製品もでてきている。(ウェルテック_bioXtra)
最近、私のTBIな患者様にもドライマウスの方が多く見られ、このような浸潤ジェルなどをほしがる方が複数いらっしゃいます。これは他の先生の患者様にもおられるようですので、できればこのようなドライマウス用の浸潤ジェルを常時置いていただきたいと思います。
       
薬剤に含まれる糖分・・・「チュアブル錠」、「口腔内崩壊錠」、「トローチ」には糖分が配合されていることが多い。
お菓子に含まれるクエン酸などの酸味もとくにグミや、粘性液状になるものは、要注意である。

(4) 摩耗:不適切なブラッシング
・・・機械的な刺激によるエナメル質の喪失は通常のブラッシングや歯磨剤の使用だけでは起こりにくい。もともとあったエナメル質の酸蝕やアブフラクションにより磨り減っていたり、損傷していたりする場合に相乗効果としてはたらく。
犬歯、小臼歯が多い。
やわらかめの歯ブラシを使用し、正しいブラッシングテクニックを身につける。できるだけ研磨剤の不配合の歯磨剤を使用するか、ステイン付着が気になる場合は1日のうち1回といったように研磨剤配合の歯磨剤の使用頻度をへらすようにする。
Hys専用の歯磨剤を使用する。
(5) アブフラクション(咬合の不調和)
・・・アブフラクションによりエナメル質の損傷がおこり、その後に不適切なブラッシングによって増長する。
対策としては、楔状欠損部位のプラークコントロールが重要となってくる。セルフケアとしては「リラックスして眠る」という自己暗示。
プロフェッショナルケアとしては、PCが困難な状況の場合には楔状欠損部位に充填処置などをほどこす。アブフラクション自体の対策としては、安易に健全歯を切削して咬合を調整するよりも、咬合力を緩和するスプリントの装着がよいかもしれない。
Hys専用の歯磨剤のメカニズム
   

4.

象牙細管内溶液の移動が歯髄・象牙境付近に分付する自由神経終末を刺激、興奮させ、インパルスが発生するために痛みが生じる。

最もHysを誘発するのは冷刺激である。温刺激においては冷刺激と比べ、象牙細管内溶液の移動が緩慢であり、歯髄側の神経線維を刺激させるまでにいたらない。

冷刺激を感じやすい部位:上顎は左右ともに4、次に3で、下顎右側は3、次に4、下顎左側は反対に4、次に3という報告がされている。これは利き腕とP.C.の関係によるものと考えられる。

  1)硝酸カリウム:カリウムイオンとなり、歯髄神経周辺にイオンバリアを形成するといわれている。この働きにより歯髄神経で神経伝達をブロックし、Hysによっておこるしみる、痛いといた症状を緩和する。

2)乳酸アルミニウム:開口した象牙細管を封鎖することにより、象牙細管内溶液の移動を阻止し神経を刺激するのを抑制する。

3)フッ化物:Hys鈍麻剤(フッ化物バーニッシュは高濃度22600ppmFで、劇薬指定医薬品です。)こちらは院内にてプロフェッショナルケアにて使用するものです。
セルフケアに使用するフッ化物の濃度は1000ppmF以下と定められています。
_ホームジェル(フッ化第一スズ)、_Check up(フッ化ナトリウム)などがあります。
          
※ フッ化第一スズは歯根面(象牙質、セメント質)に対して浸透性が高く、歯髄神経にまで容易に達する可能性があるため、Hysを悪化させてしまうこともあるため、Hysに対してはフッ化ナトリウム配合の歯磨剤または、フッ化物ジェルを薦めるようにする。
  しみる症状が強い場合はノンペーストをすすめるもの一考。歯磨剤に含まれる研磨ペーストの粒子が象牙細管の内径よりも大きいため、これにより摩擦が生じ、スメア層が除去され象牙細管が開口するからといわれています。
Hys専用歯磨剤か、あるいはフッ化物入りで研磨材非配合のものを薦める。
   
 
<医原性のHysの予防>
1. Hysを考慮した歯周処置の留意点
 
(1) PCの習得状況を確認しながらSRPを行う。
・ 急性のPの場合は早期に歯肉退縮を起こすので、初期はPMTCやデブライドメント(細菌性のプラークの除去を行い炎症を抑える)の施術をする。
・歯頸部のPCの確認が必要。
・歯肉縁上に露出する根面のセメント質は除去しないこと。
(2) ホワイトニング処置期間のSRPは避ける。
(3) 縁下へのアクセスは慎重に行う。
・アクセスしやすい部位は逆にセメント質を削除しやすいことを念頭に置く。
・上皮の再付着が困難な根面は表層の汚染セメント質のみを除去する。
(4) セルフケアの確認。
・露出象牙質の歯ブラシの当て方、動かし方、ツールのサイズの確認。
・Hys専用の歯磨剤を薦める。
・飲食や、常用薬剤などの生活習慣の確認。
(5) メインテナンスの時期を早める。
・P重症者や急性症状が強かった場合。
・セルフケアがうまくできない場合。
(6) ステイン除去の手法を検討する。
・パワースケーリングよりも、エアーポリッシャーの方がセメント質に対しソフトである。
・露出歯根面の徹底的なステイン除去は避ける。
・研磨ペースト(なるべくRDAの数値が100前後の低いものにする)やツール(ポリッシングブラシやラバーカップはそれ自身が早く消耗するタイプのほうが、歯面を傷つけにくい)の工夫をする。
・処置後は歯根面にフッ化物の塗布、あるいはCPP-ACP成分配合の歯質石灰化ペーストの塗布。(フッ化第一スズは避ける)
・歯根面にHys専門の歯磨剤の塗布を行う。(硝酸カリウム成分の塗布)
プロフィージェット(エアーポリシャー)について
・従来のパウダーは重炭酸ナトリウムで塩味が強くパウダー粒子がシャープなエッジをもっている。
新しいものは炭酸カルシウムで、パウダー粒子は丸みを帯びた滑らかなもので、歯質と歯周組織に対してソフトである。歯周ポケット内においてph値が上昇する(炭酸カルシウムの緩衝作用)ことにより、炎症起こした組織の治癒を期待できるとの報告がある。
プロフィー後は短期的に歯質表面を粗造にさせるので、細かい粒子のペースト(メルサージュファイン)を用いてシリコーンラバーカップで表面を研磨すること。
当院で現在使用中のプロフィーの本体では新しいパウダーは使えないようです。(KOさんに確認したみたいです。)
2. Hysを考慮したホワイトニングの留意点
(1) Hysの既往歴のある人はなるべくホワイトニング処置は控えたほうがよい。
(2) エナメル質にクラックが認められる場合はなるべくホワイトニング処置を控えたほうがよい。
(3) ホワイトニング処置の開始時期を検討し、施術開始2~3W前から硝酸カリウム配合のHys専用の歯磨剤を使用する。
(4) Hysの症状にあわせてカスタムトレーの装着時間を軽減する。
(5) ホームホワイトニングで使用するカスタムトレーを活用して、硝酸カリウム配合のHys専用歯磨剤、あるいはフッ化物(フッ化ナトリウム)を塗布し、10~30分間装着するのが効果的である。この行為はホワイトニングと交互に行ったり、週1で行ったりと、Hysの症状にあわせて調整するのが望ましい。
(6) ホワイトニング処置期間中の歯周処置は禁忌である。

ホワイトニングのメカニズム

・ホワイトニングに使用される過酸化水素はそれ自体は活性をもたない物質だが、いったん空気に触れると酸化反応を起こし、強い反応性を示す。これは活性酸素、あるいはフリーラジカルの作用によるもの。
発生したフリーラジカルはエナメル質の有機着色物を透明に分解し、エナメル小柱の形状を角状から球状に変化させる漂白効果がある。さらにエナメル質表面が曇りガラスの様になり、光の乱反射をおこして歯を白くみせるマスキング効果があり、これらの2つの相乗効果で歯を白く見せるといわれている。

・オフィスホワイトニングのように、用いる過酸化水素の濃度が高い程フリーラジカルが大量に発生し、漂白効果が上がるが、歯の表面が白濁したり、Hysを発症したりする。またホワイトニングの即効性は認められるものの、アパタイト結晶の結合水が除かれることによるホワイトニング効果は後戻り(色調の後退)の可能性もあるよう。

・ホームホワイトニングの薬剤の10%カルバミド過酸化水素水に含まれている2つの成分(3%の過酸化水素、7%の尿素)はとても浸透性がよいために、速やかにエナメル質からエナメル葉を通して象牙質に浸透、通過し、短時間で歯髄神経にまで到達する。歯質は半透過性で過酸化物や尿素は5~15分でエナメル質から歯髄神経に到達するといわれている。一説には肉眼で認識できないエナメル質のマイクロクラックに沈着した汚染物質や石灰化物などが、ホワイトニング処置により除去され、さらに空隙が伸長されて象牙質に至り、象牙細管を通じて外来刺激が歯髄神経に達する結果として生じるものといわれている。

[ オフィスホワイトニング ]
   メリット・・・・1回の処置で済む
           効果が迅速にでるので、患者様の満足度は高い。
           歯や部位を限定した施術ができる
   デメリット・・・ホームホワイトニングよりも費用がかかる
           色調の後戻りが比較的早い
           重度のテトラサイクリン変色歯は適応外である
           Hysが発症する場合がある
[ ホームホワイトニング ]
   メリット・・・・自宅で行える
           術式が簡単で、処置自体も安全
           歯の艶が消えないので、審美的に優れる
           重度のテトラサイクリン変色歯にも適応できる
           ホワイトニング効果の持続が長い
   デメリット・・・効果が現れるまでに時間がかかる
           ほぼ100%の症例にHysの発症




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